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その後に13
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転校生達が監禁のように修行中、転校生の取り巻きの親衛隊は冷静に考えられるようになり、倉見の親衛隊が話し合いを設けたことにより、しばらくは見守ることを決めた。
それによって学園はだいぶ落ち着きを取り戻した。
とはいえ、生徒会の仕事はまだたっぷり残っており、急ぎのものを先にするということが続いていた。
「…会長様。倉見会長様!」
「ん。ああ、なんだ?」
仕事をしはじめると入り込むクセがある倉見は、秋城の声に反応が遅れた。なんだろうかと顔を上げれば、愛しい姿。
「また無理してたな。駄目だろ?」
甘い顔と声で近づいた仲樹風紀委員長は倉見と額を合わせる。
甘すぎる空間が出来上がっているが、秋城はさっと視線をそらして雑務に戻る。心を無にして気にしないのが対処法だ。
「そうだ。今日の倉見会長のノルマは終わってますので、無理した罰として連れ出してください」
「は? まだ別に無理なんて…」
「そうしよう」
「平気だって!」
「駄目だ。な?」
また額をあわせて説得を始めた仲樹。ずるいやり方だ。
「…わかった」
少し不満に思っていても、部屋を出れば仲樹と一緒であることに浮かれてしまう。
「実は、今日あいつらをちょっと外に出してみる日なんで、遠くから見る予定なんだ」
「遠くから?」
「まだ俺達が姿を見せるのは刺激になりそうだろ? だから向こうからは見えないようにな」
「それはそうだな。俺は見る責任もあるだろうし。行こう」
浮かれていたので少し落胆した倉見だったが、大事な事だと気を引き締め見ることを決めた。
学園の生徒達には、転校生一行は全員謹慎中と説明をしているが、まだ見るのも嫌だという人もいるだろうと考慮して、人の少ないところで転校生達は解放される。
今後は特別授業という修行を受けさせるも生活は監視しつつも自由にすることにした。
修行という監禁をしていた場所は、イベントの時に利用している旧校舎だ。
そこから転校生一行が出てくる。
「…痩せたか?」
やつれて大人しいように見える転校生一行。それを建物の2階から見ている。
「体重は確かに減ったようだが、健康的に食事をさせたからだろう。健康診断での数値は健康になってたからな」
「あの転校生まで儚い雰囲気が出ている。ああして大人しくしていれば見れた顔なのにな。人は中身も姿に現れるよな」
「こら。恋人の前で他の男を褒めちゃ駄目だろ」
「褒めてないって。ただまともに見えるようになったって」
「聞こえが悪い。くらっ」
「わっ。我が儘だぞ」
狭いといえるほどの嫉妬から無意味に倉見の腰を引き寄せた仲樹。他に誰かいたなら思わずつっこみを入れたに違いない。
「ほら、風紀委員長はちゃんと見てないと駄目だろ」
「ああ…。まあ、問題なくうまくいってるようだ。副委員長の手腕は予想以上だった」
修行と矯正プログラムは任せてくださいと眼鏡を光らせた副委員長に一任してみた。その代わりに書類が大量に回ってきたが、転校生一行が大人しくなったぶん風紀の仕事全体は減っていた。
「そうだな。さすが寺の修行だ」
受けたくはないが興味が湧く。
「あ、でもあいつらの家のほうは結局どうなんだ? 無理したんだろ?」
心配になって仲樹の顔を見上げる。
「それな。うちの力を使っての強引になるかと思ったが、あいつらの心を変える為に、まずは身近な人間に感謝をしめすことをさせたんだが…。…つまり両親に電話で日頃の感謝を言わせたんだ。簡単な言葉なんだがな。それでも親は感激したらしく、それが風紀の精神強化プログラムのおかげだと知って、理事長づてで感謝された。転校生の親も協力すると言ってきたくらいだ。ということで、ひとまず家は問題ない」
「…あんまり親に感謝したことなかったんだな。今時の若者はそうかもしれないが」
年寄りっぽい発言に仲樹も頷く。
「それで、黒いモヤはどうだ?」
「あ」
転校生一行を強制的に精神改革したのは、倉見の苦痛の分の罰であるが、黒いモヤ問題の為でもある。
だいぶ忘れかけていた倉見は思いだして転校生一行をじっと見る。
「………うすくなってる。完全に消えてはいないけど。取り巻き達はほとんど消えてるようだ」
「効果があったか。クラミの推測はあっていたってことだ。さすがだ」
「偶然だ」
順調なことを確認しおえると、2人はもう転校生一行を見ることなく他人からすると甘すぎるじゃれあいをはじめた。
それによって学園はだいぶ落ち着きを取り戻した。
とはいえ、生徒会の仕事はまだたっぷり残っており、急ぎのものを先にするということが続いていた。
「…会長様。倉見会長様!」
「ん。ああ、なんだ?」
仕事をしはじめると入り込むクセがある倉見は、秋城の声に反応が遅れた。なんだろうかと顔を上げれば、愛しい姿。
「また無理してたな。駄目だろ?」
甘い顔と声で近づいた仲樹風紀委員長は倉見と額を合わせる。
甘すぎる空間が出来上がっているが、秋城はさっと視線をそらして雑務に戻る。心を無にして気にしないのが対処法だ。
「そうだ。今日の倉見会長のノルマは終わってますので、無理した罰として連れ出してください」
「は? まだ別に無理なんて…」
「そうしよう」
「平気だって!」
「駄目だ。な?」
また額をあわせて説得を始めた仲樹。ずるいやり方だ。
「…わかった」
少し不満に思っていても、部屋を出れば仲樹と一緒であることに浮かれてしまう。
「実は、今日あいつらをちょっと外に出してみる日なんで、遠くから見る予定なんだ」
「遠くから?」
「まだ俺達が姿を見せるのは刺激になりそうだろ? だから向こうからは見えないようにな」
「それはそうだな。俺は見る責任もあるだろうし。行こう」
浮かれていたので少し落胆した倉見だったが、大事な事だと気を引き締め見ることを決めた。
学園の生徒達には、転校生一行は全員謹慎中と説明をしているが、まだ見るのも嫌だという人もいるだろうと考慮して、人の少ないところで転校生達は解放される。
今後は特別授業という修行を受けさせるも生活は監視しつつも自由にすることにした。
修行という監禁をしていた場所は、イベントの時に利用している旧校舎だ。
そこから転校生一行が出てくる。
「…痩せたか?」
やつれて大人しいように見える転校生一行。それを建物の2階から見ている。
「体重は確かに減ったようだが、健康的に食事をさせたからだろう。健康診断での数値は健康になってたからな」
「あの転校生まで儚い雰囲気が出ている。ああして大人しくしていれば見れた顔なのにな。人は中身も姿に現れるよな」
「こら。恋人の前で他の男を褒めちゃ駄目だろ」
「褒めてないって。ただまともに見えるようになったって」
「聞こえが悪い。くらっ」
「わっ。我が儘だぞ」
狭いといえるほどの嫉妬から無意味に倉見の腰を引き寄せた仲樹。他に誰かいたなら思わずつっこみを入れたに違いない。
「ほら、風紀委員長はちゃんと見てないと駄目だろ」
「ああ…。まあ、問題なくうまくいってるようだ。副委員長の手腕は予想以上だった」
修行と矯正プログラムは任せてくださいと眼鏡を光らせた副委員長に一任してみた。その代わりに書類が大量に回ってきたが、転校生一行が大人しくなったぶん風紀の仕事全体は減っていた。
「そうだな。さすが寺の修行だ」
受けたくはないが興味が湧く。
「あ、でもあいつらの家のほうは結局どうなんだ? 無理したんだろ?」
心配になって仲樹の顔を見上げる。
「それな。うちの力を使っての強引になるかと思ったが、あいつらの心を変える為に、まずは身近な人間に感謝をしめすことをさせたんだが…。…つまり両親に電話で日頃の感謝を言わせたんだ。簡単な言葉なんだがな。それでも親は感激したらしく、それが風紀の精神強化プログラムのおかげだと知って、理事長づてで感謝された。転校生の親も協力すると言ってきたくらいだ。ということで、ひとまず家は問題ない」
「…あんまり親に感謝したことなかったんだな。今時の若者はそうかもしれないが」
年寄りっぽい発言に仲樹も頷く。
「それで、黒いモヤはどうだ?」
「あ」
転校生一行を強制的に精神改革したのは、倉見の苦痛の分の罰であるが、黒いモヤ問題の為でもある。
だいぶ忘れかけていた倉見は思いだして転校生一行をじっと見る。
「………うすくなってる。完全に消えてはいないけど。取り巻き達はほとんど消えてるようだ」
「効果があったか。クラミの推測はあっていたってことだ。さすがだ」
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