ツクチホ短編まとめ

はるば草花

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「そんな顔、しないでくれ。俺が不注意すぎたんだ」

「だとしても、俺がそばにいながらこんなことになるなんて自分が許せない」

「そう、だよな…」


逆の立場だったらなら、やはり苦しんだだろう。


「俺が馬鹿だった。例えあの転校生でなくても、守るべき存在がいるなら警戒する必要があったんだ」

「いやいや、そんな警戒して生活なんてできないし」

「後悔したくないと決めたんだ」

「分かるけど、俺も悪かったし。とにかく俺は大丈夫だったから、いつまでも苦しまないでくれ。ナカキには笑ってほしい」

「……わかった。俺も、お前には笑ってほしいからな」

「ナカキ…」


仲樹の顔は苦しいものから、いつもの顔に戻った。倉見の気持ちも理解したからだ。
そのことに倉見は通じあってるようで頬が緩む。


「なんだその緩んだ顔。笑ってはほしいけど、ちゃんと警戒をしてほしいが」

「ふ、わかってる。だけど、ふっ。嬉しい。理解しあってるって、やばいな」


両思いとはまた別でいい。ゆるみが止まらない倉見に仲樹は呆れたように、だけど同じく口元をゆるませ、倉見の頭を軽く小突く。
それでも倉見のゆるみは変わらない。


「転校生のことなんだが、それと取り巻き連中」

「ん。なんだ?」


仲樹の真剣な目に、倉見も顔をひきしめ話を聞く。


「俺に任せてくれ。強制的に根性を作ってやる」

「なんか怖いな。だけど、俺がしなきゃいけないことじゃないか?」

「こういうことは風紀の領分だ。家のこととか忙しいとか、そういうことでやってこなかっただけだ」

「忙しいなりによく努力していたと、秋城から聞いている。それに家の問題もからむなら無理することない」

「努力して結果がなければ意味はない。俺はもう、前までのように簡単に自分は十分やっている、なんて考えたくはない。取り巻きの家も力のあるところが多いがそれほどじゃないしな。それほど畏縮することはあるまい。悪いことするわけじゃないし」

「なんか格好いいな。…それでも俺にも…」

「いいから。そうだ、お前は俺に命令すればいい。将はそれでいいんだからな」

「ふはっ。なんだそれ。…わかった。頼むな」


意地をはって大変なめにあったし迷惑もかけた。だから今後は無理せず素直になる。


「ああ、そうだ」

「ん?」

「戦いの前にまずは癒しだ」


元気な倉見が見れて話も終わって安心した仲樹は倉見に身体を寄せて倉見を堪能する。


「あー、もう今日は離れたくないな。メシ作る時も風呂も一緒な?」

「なんだ。さっきの決意はどうした」


仲樹とくっつくのは嬉しいが、さっきの言い方だと目的の為なら寝る間も惜しむかのようだったのに。


「それはそれ。今はクラミとイチャつく優先」

「ナカキは真面目になったのか堕落したのかどっちなんだ?」

「どっちもだ。偉い人も、休息も大事だと理解して悟りを得たんだぞ」

「そうなのか。なら存分に休息もとろう」


安心して仲樹の身体に体重をのせて頬を寄せる。前から好きだったが、心を通わせてさらに愛しさが溢れる。

予定通りに2人はその日は転校生を忘れ、たっぷりイチャついた。

そんな幸せにほわほわしながら仕事している倉見を親衛隊長に任せ、仲樹はしっかり行動に出た。

昨日は仲良くしつつも計画はしっかり練っていた。風紀なだけに、学園の隅から隅まで知っているのをいかし、罠を張る。

倉見のことなんて忘れたように変わらず騒がしい転校生一行。変わらないのは警戒心がなくて楽でいい。


「転校生」


一行の前に姿を見せた仲樹。倉見のことで後悔した分を今日行動する。


「あっ! イルヤ。俺に会いに来たんだな。もうイチカゼなんかと一緒にいるなよ」

「黙れ」


転校生は計算で行動している可能性も疑ったが、ただの馬鹿だった。これでよく今まで何事もなかったものだ。


「なんだよ! あいつなんて…」

「黙れと言ってる。一応、初めに最後の忠告だ。生徒会役員は生徒会に戻り、他生徒はきちんと授業を受けるというのなら、今後のことは考慮しよう」


少々甘い考えではあるが、倉見なら言いそうである。そう思っての発言であり、そして。


「それは脅しですか? 私達はなにも悪いことをしていないのですから、変えることはありません」


副会長が代表のように答えた。堂々とした姿は立派にも見えるが、結局は転校生に踊らされているだけだ。他の取り巻きも同じようで、仲樹を睨んでいる。

それに仲樹は笑みが浮かびそうなのを抑える。予想していたからこそ、甘い提案をしてみせた。

この後のことを考えると一応の理由が欲しかった。


「そうか。それでいいんだな? ……では、拘束!」


すでにしっかりと周囲を囲んでいる風紀委員に合図した。

仲樹の言葉と周囲の状況に驚く転校生一行を風紀委員が待ってたとばかりに嬉々として包囲していく。
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