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その後に9
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それから、いくつもの手段を利用し転校生のことを調べに調べまくったが。
「なんにもない…。見落としとかないのか?」
生徒会室でこれまで集めた情報を眺めるもとくに変わったことがない。
「あるかもしれないが、これ以上は調べようもない」
転校生の生い立ちなどは学園で見たままだった。金持ちの両親に溺愛されて我が儘に育ったというもので、可哀想な過去の一つもない。
「転校生が実は美少年で、あれはカツラだなんて意味のない情報だよな?」
「ないな」
あっさり分かった情報だ。
「うーー…、やっぱり探偵役いないと無理だな。詰んだ」
あれから、さらなる情報を聞きだそうと死神とコンタクトをとれないものかと思ったものの、一度として夢で会うことはなかった。
幸い、紅茶のおかげか倉見の体調はあれ以来悪くない。黒いモヤに近づかないようにしてるからかもしれないが。
「報酬、欲しかったんだがな」
「安心しろ。俺はお前にまとわりつくから」
うなだれる倉見の頭を仲樹が撫でる。仲樹の言葉に倉見の心が温かくなった。
手詰まりになって数日後、倉見は急な家からの連絡に頭を痛める。
「こんな時にパーティーとか。空気読め。誰の主催だ」
元大物政治家の誕生日パーティーに出席するように言われたのだ。それは断っていたのに何故だと言いたいが、おそらく倉見一風とお近づきになりたい人間が強くお願いしたのだ。一風と身内が結婚できないかと思ってる親か、その子供だ。
「…しかたないさ」
仲樹に優しく撫でられる倉見だが、納得いかない。
「それだと、お前と離れないといけないじゃないか」
その理由で拗ねている。
「ついていってもいいが、さすがにまだ早いよな」
「だよな」
仲樹としては、いつでも息子さんを下さいと言う気があるが、まだ早すぎると思う。
「そうだ。問題ない範囲でなら一緒でもいいよな?」
「というと?」
「パーティーに出さえすればいいなら、それ以外は俺といてもいいだろ? パーティーの間はどこかで時間を潰して待ってるから」
「いい、のか?」
「だから、これは俺の我が儘だから。…いいか?」
「ああ、嬉しい」
倉見は仲樹の首に腕を回して喜んだ。もう、この温もりのない所で生きていける気がしない。
そうしてパーティーのある日曜日。
ホテルで開催されるということで、仲樹はラウンジで待つとにした。
「じゃあ、行ってくる」
「ああ。嫌になったらすぐに戻ってこい」
「ん」
人前なので軽い触れあいで2人は離れた。
仲樹と離れただけで不安になる倉見だったが、しっかりとした足取りで会場へと入った。
するとすぐに倉見の存在に気づいた男や女に囲まれる。
眉間に皺を寄せそうになったが、なんとか堪えて笑顔を作る。
そして次々と挨拶をしていくが少し疲れてきて休憩することにし、人の少ない場所へと移動しながら飲み物を飲む。
少し息をついて、落ち着いてこれからどうしようかと会場を見回すと、あの、黒いモヤが見えた。
どういうことだと目を凝らすとあちこちにある。
よくよく見ると何人かは纏わせていた。
その人間の様子や、それ以外の人間を見て、倉見は黒いモヤがどういうものか、なんとなく分かってきた。
そんな場に長くはいたくないので、倉見は体調がすぐれないと言って会場を出る。
「どうした? なにかあったか?」
ラウンジのソファーに座る仲樹にまっすぐ向かった倉見。
「ん…。黒いモヤが見えた」
「そうか。早くここを離れよう」
仲樹は倉見の体調を優先してホテルを出た。
車の中では気分が落ち着かないだろうと、仲樹のよく行くレストランへと連れていく。
個室に入ると倉見も落ち着けた。
「平気か?」
「ああ。最初から体調は問題ない。ただあんなの見て気分が悪くなったんだ。もう離れたし、それも平気だ」
「…悪くなったらすぐに言えよ?」
「ナカキ。黒いモヤの正体がわかった気がする」
「思念じゃないのか?」
「そうなんだが、どうして出来るのか、だ」
「わかったのか!」
「これで学園もどうにかなるといいが…」
分かったが、まだそれを退治する方法は分からない。
その後、2人は料理を堪能し、学園へと帰った。
「なんにもない…。見落としとかないのか?」
生徒会室でこれまで集めた情報を眺めるもとくに変わったことがない。
「あるかもしれないが、これ以上は調べようもない」
転校生の生い立ちなどは学園で見たままだった。金持ちの両親に溺愛されて我が儘に育ったというもので、可哀想な過去の一つもない。
「転校生が実は美少年で、あれはカツラだなんて意味のない情報だよな?」
「ないな」
あっさり分かった情報だ。
「うーー…、やっぱり探偵役いないと無理だな。詰んだ」
あれから、さらなる情報を聞きだそうと死神とコンタクトをとれないものかと思ったものの、一度として夢で会うことはなかった。
幸い、紅茶のおかげか倉見の体調はあれ以来悪くない。黒いモヤに近づかないようにしてるからかもしれないが。
「報酬、欲しかったんだがな」
「安心しろ。俺はお前にまとわりつくから」
うなだれる倉見の頭を仲樹が撫でる。仲樹の言葉に倉見の心が温かくなった。
手詰まりになって数日後、倉見は急な家からの連絡に頭を痛める。
「こんな時にパーティーとか。空気読め。誰の主催だ」
元大物政治家の誕生日パーティーに出席するように言われたのだ。それは断っていたのに何故だと言いたいが、おそらく倉見一風とお近づきになりたい人間が強くお願いしたのだ。一風と身内が結婚できないかと思ってる親か、その子供だ。
「…しかたないさ」
仲樹に優しく撫でられる倉見だが、納得いかない。
「それだと、お前と離れないといけないじゃないか」
その理由で拗ねている。
「ついていってもいいが、さすがにまだ早いよな」
「だよな」
仲樹としては、いつでも息子さんを下さいと言う気があるが、まだ早すぎると思う。
「そうだ。問題ない範囲でなら一緒でもいいよな?」
「というと?」
「パーティーに出さえすればいいなら、それ以外は俺といてもいいだろ? パーティーの間はどこかで時間を潰して待ってるから」
「いい、のか?」
「だから、これは俺の我が儘だから。…いいか?」
「ああ、嬉しい」
倉見は仲樹の首に腕を回して喜んだ。もう、この温もりのない所で生きていける気がしない。
そうしてパーティーのある日曜日。
ホテルで開催されるということで、仲樹はラウンジで待つとにした。
「じゃあ、行ってくる」
「ああ。嫌になったらすぐに戻ってこい」
「ん」
人前なので軽い触れあいで2人は離れた。
仲樹と離れただけで不安になる倉見だったが、しっかりとした足取りで会場へと入った。
するとすぐに倉見の存在に気づいた男や女に囲まれる。
眉間に皺を寄せそうになったが、なんとか堪えて笑顔を作る。
そして次々と挨拶をしていくが少し疲れてきて休憩することにし、人の少ない場所へと移動しながら飲み物を飲む。
少し息をついて、落ち着いてこれからどうしようかと会場を見回すと、あの、黒いモヤが見えた。
どういうことだと目を凝らすとあちこちにある。
よくよく見ると何人かは纏わせていた。
その人間の様子や、それ以外の人間を見て、倉見は黒いモヤがどういうものか、なんとなく分かってきた。
そんな場に長くはいたくないので、倉見は体調がすぐれないと言って会場を出る。
「どうした? なにかあったか?」
ラウンジのソファーに座る仲樹にまっすぐ向かった倉見。
「ん…。黒いモヤが見えた」
「そうか。早くここを離れよう」
仲樹は倉見の体調を優先してホテルを出た。
車の中では気分が落ち着かないだろうと、仲樹のよく行くレストランへと連れていく。
個室に入ると倉見も落ち着けた。
「平気か?」
「ああ。最初から体調は問題ない。ただあんなの見て気分が悪くなったんだ。もう離れたし、それも平気だ」
「…悪くなったらすぐに言えよ?」
「ナカキ。黒いモヤの正体がわかった気がする」
「思念じゃないのか?」
「そうなんだが、どうして出来るのか、だ」
「わかったのか!」
「これで学園もどうにかなるといいが…」
分かったが、まだそれを退治する方法は分からない。
その後、2人は料理を堪能し、学園へと帰った。
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