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その後に8
しおりを挟む「それじゃあ詰みだろう。学園は崩壊の一途か」
「んー、原因を取り除けば思念は簡単に霧散すると思うよ?」
「原因なんて簡単だろ」
「へ?」
死神の立場ない原因を知るということに間抜けな顔をさらす。そんな死神の顔を見れるのはレアじゃなかろうかと思いつつ、倉見は答える。
「転校生に決まってるだろ。あいつが来て始まったんだ」
「いやいや、実は裏で副会長がヤンデレで会長を狙ってとかもありうる!」
「そんな奴じゃない。外面がよくて勉強のできる馬鹿だからな。まあ、それが演技という可能性もなくはないが、副会長など元から学園にいた人間が原因なら、何故、今なんだ」
「それはそうだけど、簡単すぎない?」
「複雑な陰謀があるなら、今の俺がナカキとうまく恋人になって幸せいっぱいの生活をしてるとは思えない」
「幸せなんだね…。幸せオーラが見えそうだよ」
「見えないのか?」
「ないから! あれ? 俺いじられキャラじゃ決してないはずなのに」
「いじってないが…。それで転校生を排除すればいいわけか?」
「んー。できれば解決してよ。学園から離れても、別のところで問題が起きる」
眉を下げてお願いしてくる姿に倉見はいじられキャラにも見えた。
「それなら陰陽師とかに頼めば?」
「そんなホイホイと現世の人とコンタクトとれたりしないよ。ね、見込んでるんだ」
じっと真剣ぽい目で見てくる。
「…報酬は? こっちはかなり危険なめにあってるんだか」
「う…、俺にできることといったら…、この先のナカキくんとの縁を深めることくらいかな?」
「分かった。解決しよう」
「はやっ! …ラブラブいいね。俺も片割れ欲しいなー」
「頑張れ」
死神となにやら打ち解けた倉見は警戒心をなくして紅茶を飲んだ。
飲むにつれ意識がぼんやりしてくる。死神がその紅茶で少しは思念に耐えられると思うからと、微妙なことを言ったのを聞きながら、意識が途絶えた。
「クラミ!」
「…ナカ、キ?」
「ああ。大丈夫か?」
顔をのぞき込む仲樹の顔はひどく心配しているのが分かる顔だった。
倉見は安心させるように微笑む。
「平気。死神に少しは耐えられるだろう紅茶を飲ませてもらったからな」
「少しとは微妙だが。顔色はよさそうだな」
仲樹は近くで倉見の顔をじっくり見る。
「夢の中で死神と話をしてきたんでナカキに話したい」
「そうか。もっさり野菜炒めは部屋に持ってきてもらったから、食べるか?」
「食べる」
倉見はベッドから起きあがった。部屋は仲樹の部屋だ。倉見が倒れてから2時間ほどがたっていた。
「なるほど、転校生が確かに原因なんだな?」
「あ。微妙だな。死神には原因は分からないらしい。俺の推理に納得しただけで」
「なんにしても転校生を調べるのが基本か。副会長の陰謀説も捨てがたいが」
「複雑だと本当に探偵役がいる。なんにしても転校生が無関係ってパターンはないだろうが」
「なくはないと思うが調べよう。家の力を使う」
「おお、そんな発言は物語のメインキャラのようだぞ」
「なら、お前がこの物語の主人公だな」
優しく微笑む仲樹に倉見の顔は熱くなる。
食事の後は倉見が倒れたということで仕事はしないで2人はまったりすごす。
「なんか、でかい男2人でこれはいいのか? 視界の暴力じゃないか?」
ソファーに座る2人であるが、倉見は仲樹の足の間にいて抱き込まれている。
「誰も見てないぞ? 俺はこうしていたいんだが、嫌か?」
「別に…、いいけど」
「よかった」
恋人同士なら、こうしてイチャイチャしたいに決まってる倉見であるけど、恥ずかしい。その日は羞恥に耐えながらもしっかり幸せを感じて過ごした。
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