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その後に3
しおりを挟む「はふっ。…ナカキには、あんなとこ見せて、悪いな」
その後、仲樹がお粥を作ったので、それを熱々と食べる倉見。
「いや、見ていなければ考えは甘いままだった」
仲樹は倉見の横に座っており倉見の頭を撫でる。その目は愛しくてしかたないと言っていた。
それが嬉しいが恥ずかしい倉見は目をさまよわせる。
「それで今後のことだが、」
苦痛を思い出させたくないが今も問題はびこっているのだから、考える必要がある。
「…ああ…。そうだ。仕事…」
長い時間を仕事から離れていたのだと思い出した倉見は、部屋の中の書類の山を見て立ち上がろうとする。
「…って?!」
頭を軽く小突かれた倉見。なんで、と仲樹を見る。
「アホか。しばらくそんなこと考えなくていい」
「いや、でも俺がしないと学園が回らない」
「どうでもいいだろ。少しくらい学園が止まっても」
「な?! ナカキ?」
風紀委員長の言葉とは思えない。
「重く考えすぎだ。大きい国だって話し合いが上手くいかず滞ってしまうが、なんとかなってる」
「そうだが…、しかし」
「なんにしても、俺にはなによりお前が大事なんだ」
「うう…、ずるいだろ…」
真剣な眼差しに倉見の頬は熱くなる。
「こうまでなっても仕事を気にするのがお前らしいがな。身体のことを一番に気にしろ。仕事なら俺も手伝うから」
「…お前も忙しいだろ?」
「そうだが、お前のほうが忙しい。これからは苦労は分かちあうべきだろ?」
「うう…」
プロポーズのような言い方やめて。恥ずかしすぎる。
そうしてどうなったかというと、期限切れ間近の書類を仲樹が探して、処理しつつ、膝で眠る倉見を見守る。
倉見の状態がよくなったら風紀室へと行く。
「委員長! 遅かったですね。どうしたのかと……?!」
副委員長の市野が、仲樹が戻ってきたことに気づき声を出したが、仲樹の後ろからおずおずと入ってきた倉見を見て驚く。
「部屋に見にいけばクラミが倒れていてな、今まで介抱していた」
「そ、う…だったんですか…、大丈夫ですか?」
「ああ、もう十分寝たからな」
「馬鹿か。そんな簡単に回復しない。無理は絶対するなよ」
「う…、ああ…」
委員長と会長のやりとりに副委員長市野は目を見張る。
「ずいぶんと仲良くなったんですね?」
「ああ。おい、お前ら話がある。手を止めて聞いてもらいたい」
委員長の帰還に安堵しつつも忙しくしていた風紀委員達だったが、委員長の言葉に手を止めて、席に座った委員長の顔を見た。隣にいる会長の存在には首を傾げるがひとまず静かにしている。
「生徒会長の倉見は倒れるほど仕事に追われていた。考えればわかることだ。倉見以外の役員が仕事をしていないんだからな。…そこでだ。リコールのことは考えていくつもりだが、それには時間もかかる。それに仕事は待ってくれない。だから、これからは俺も倉見の仕事を手伝っていこうと思う」
「ナカキ…」
「なのでみんなには悪いが協力してほしい」
仲樹は席を立ち、頭を深く下げた。
それにみんなが慌てる。
「頭を上げてください委員長!」
「学園のことなら手伝うのは当然ですし!」
風紀委員の中には生徒会長に不満をもっていた者もいたが、委員長にここまでされれば協力したいと思う。
「そうか。…ありがとう」
「俺も、ありがとう。これからよろしく頼む」
倉見も頭を下げた。
それによって委員達のわだかまりもなくなる。
そして、ついでにと仲樹は倉見と付き合うことになったとあっさりと告げて、委員達が絶叫する間に、それから落ち着くまで一緒に行動するからと伝えた。
一緒とはどういうことかというと、仲樹が書類仕事する時は、倉見も風紀で一緒に仕事をし、どちらかが移動する必要があれば、一緒に移動する。
恋人というより、親子みたいだと倉見は言うが、今は心配でしかたないと言われればなんとも言えなくなる。
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