ツクチホ短編まとめ

はるば草花

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落ちた。14

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いつもより少し着飾ったウィリダは王宮の回廊を家にいる時と変わらぬ態度で進む。

ある一画にやってくると待ち人の姿が見えた。

とろけそうな笑顔でウィリダを迎える。


「今日も一段と美しい。これ以上の美などあろうはずもないというのに、何故私は他のものと婚姻を結んだりしたのか…」

「はいはい、分かったからー。それでちゃんと別れたのー?」


今日はフェレントが婚姻を解消したか確認しにきたのだ。手紙でもいいことだが、直接聞きたい。華やかな服装はフェレントへのささやかなご褒美である。


「ああ、しっかりと別れている」

「あっさりすんだね。問題とかなかったの?」

「私の意志に否やを言うものなど存在しない。父上が反対すれば面倒になったろうが、反対する理由がない」


この世界においては結婚はしょせん遊びなのだ。跡継ぎなどのことも問題にはならない。


「そういうことだから、これでウィリダと結婚していいのだろう?」

「んー、それなんだけど、今すぐでなくてもいい?」

「何故だ。私はその為に条件をのみ、我慢してきたんだ。そもそも、成長すれば結婚できると思っていたからこそ、ずっと我慢してこれたんだ。これ以上何故待てという?」


これでも気性が穏やかなフェレントがウィリダにたいして気を荒くする。


「結婚なんて形だけだよ。そんなのフェレントは望んでいないはずだ。それよりずっと側にいて、両思いなら嬉しいでしょ?」

「それは…、つまり…」


ウィリダの思いがけない言葉にフェレントは一転呆ける。


「うん。好きだよ」

「そ、うか、」


あっさりさっくりのウィリダの告白だったが、フェレントは胸が詰まる。声を出そうにも喉がつまる。

この世界の腐った常識の中では結婚や恋愛なんて綺麗なものではなく、好んで付き合っても利害の一致にすぎない。綺麗な思いなんて存在などせず、フェレント自身、ウィリダへの執着は強くても欲望の一種だと思っている。それ以外知らない。

知らないとはいえ、同じような気持ちになってくれることなんて望んでもいなかった。それでもそんな願いが心にはあったのだろう。

例えウィリダの思いがフェレントと比べ小さくとも、ただの契約で自分のものになるのとは意味が違う。


「想像すらしていなかったが、胸の奥が歓喜が強すぎて苦しいような気分だ。…どう例えればいいのか分からない。ウィリダならこの思いを知っているのだろうか?」

「たぶんね。フェレントが俺の側にずっといるというなら教えるよ」


ウィリダはフェレントの執着が恋愛という好意からきているのだと昔から分かっていた。それでもフェレントは他の人間にも愛を囁くは結婚するはで、その執着もたいしたものではないのだと推測していた。それは腹が立つからそう思いたかったのかもしれない。

しかし貴広とのことで引くほどの執着だと理解すれば、フェレントほどこの世界で好ましいという者は他にいない。

だから条件はあってもフェレントのものになることを受け入れるつもりだ。


「手放すことなどありはしない。私の愛しい宝石。それでは結婚してもいいのでは?」

「んー、それよりまずは他にも確認するよー」


ウィリダは服の中から貝を取り出す。貴広に渡した宝具の対である。

その貝を撫でれば貝がゆっくりと開いた。外見は普通の貝でしかなかったが、中は美しい装飾が施されていた。白金に宝石が散りばめられている。

その真ん中にある大きく澄んだ青の宝石を撫でれば霧のような粒子が溢れ、人の顔ほどの大きさとなり維持する。

そこに慌てている貴広の姿が浮かび上がった。

貴広と繋がりをしたのだと分かったフェレントは途端に表情を険しくした。


「なななな、なんだこれ」

「はろー、キヒロちゃん。元気ー?」

「なんだ、ウィリダか。何か用か?」


ウィリダだと冷静に気づけば貴広は不機嫌な顔になる。


「そんなに遠く離れてるのに頼みごとなんてしないよー。これからは旅の話とか聞くくらいだって」

「意味なく嫌な頼みごとしそうだろ。所有権放棄してないところとか怪しい」

「所有権は愛情なんだけどー。それは理解されないのは悲しいけどしかたないとして、危ないめにとかあってない?」

「ああ…、とくに変なことはない。疲れたくらい」


ウィリダの聞きたいことが分かった貴広。つまりはまたフェレントによって命を狙われるようなことになってないか。


「体力ないねー、キヒロちゃん。それじゃあ今後もなにかあったらすぐに言ってねー、本人に文句言うから」

「わかった。…これどうやって切れるんだ? こうすればいいのか?」


貴広が真ん中の宝石を撫でれば霧はすぐに消える。最後に端にエルバラの姿が映っていたのでエルバラが教えたのだろう。
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