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落ちた。12
しおりを挟む「今は気にするな。俺はこれからじっくり口説くから」
男前に笑うエルバラはかっこいい。
「お手柔らかに」
なんとか返す言葉は出た貴広だったが、いっぱいいっぱいだ。
「わかってる。まずは旅をしないとな。旅先は俺のいた国でいいだろうか?そこであれば落ち着ける」
「あ、うん。お任せします。俺ここの世界のことほとんど知らないから」
移動手段はよくて馬車なことから、辛い旅が待っていると想像できると貴広は上がった熱が落ち着いてげんなりとする。そんな貴広の様子に気づいたエルバラ。
「キヒロ。宝具があるから、ウィリダとはいつでも話すことはできるから、少しは安心だろう?」
「あ。そっか。なんかもう、こう、最後の別れみたいに思っちゃったよ」
「また会えるかは分からないが」
「本当に会いたい人とは話すこともできないから、すごく十分。むしろ、それで絶対寂しいなんて思うことはないと断言できる」
それなのにさっきはあんな哀愁っぽいものをウィリダに感じてしまうなんて不覚だ。
「さて。ではまずは、荷物の整理か。貴族の思考はあてにならないしな」
貴広が何気なく言った本当に会いたい人のことにはふれないで、エルバラは置かれた袋の中身を探る。
「エルバラ、教えて欲しいんだけど。俺さっぱりで」
「ああ、なんだ」
袋の中は生活用品が最低限入れられてるようだったが、それは旅用というか引っ越しのようで、次々にいらないものを分ける。
「俺って捨てられたの?」
「手放す気はないと言ってたから、放棄はしてないんだろう。それでも追放に近い形だな。あのフェレント王子としては」
「追放?」
「この地から出ていけってことだろう」
「習ったけど、レンゼントとかいうんだっけここは。微妙に高い位置にあるんだよな」
「ここ以外では聖域という」
「聖域?」
聖域とは、人の寄せ付けない場所のイメージがあるが。
「ハルラスを使う権力者達は神だと言われている。だから聖域」
「ええー、やな神。それ自分達で公言しちゃってるの?宗教は場合によっては怖いけれど」
「あの力は絶対だからな。とても長命らしいし、人の理と違うらしい。自分達以外は家畜と同じ感覚なのだろう。この地の人々は恩恵を受けているというが、豊かな国よりも生活水準は低いように見える」
「そう聞くとウィリダがマシだと言うのも頷けるような?あれ?エルバラ、ハルラス使ってなかった?」
「いや…、ああ、異能力のことか。どんな力かはっきり分からないが、ハルラスほどに万能ではない。この世界には多くの物や人が落ちてくるとは知ってるだろう?数多の世界の人の中にはこの世界にない力を持つ者もいる。その能力をひっくるめて異能力というんだ。キヒロの武術も戦いの恩寵を受けし異能力だとする見解もある」
「へー、なるほど。あれ、じゃあエルバラも落ちてきたの?」
「俺は違う。俺の母がそうだったんだ。多く落ちてくるとはいっても異能力者は稀だ。世界の異能力者のほとんどは落ちてきた人の子が幸運にも力を受け継いだというものだ」
「そうなんだ。荷物整理手伝ったほうがいい?」
エルバラは袋の中身をほとんど取り出していて、選別中である。
「キヒロは長旅の経験はあるか?馬車を使わないような」
「ありません。馬車よりも楽な旅しかないよ。せいぜい町一番の山に日帰りで登ったことがあるくらいかな」
「そうか。…任せてくれ」
「…お願いします」
ウィリダがいなかったらエルバラに頼りきるしかなさそうだ。情けないがなにも分からない。
「す、少しづつ覚えるから…」
「頑張れ」
優しいエルバラの笑顔に貴広は再び顔に熱を感じた。
与えられた荷物はほとんど利用価値がなかったので、まず街で物を売って物を買った。
金は呆れるほどにあってエルバラにはそれさえも邪魔に思えた。
ウィリダの餞別はぬいぐるみとか意味不明なものもあったが、貴広に合った道具は使えるもので、貴広は一応、餞別だからと意味不明のものを含めて持っていくことにする。そんな量でもなかったからでもある。
その日は情報収集をし、街の宿に泊まって、次の日に出発した。
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