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統べる王と声なき人2
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お金を快く渡したアルラは自分は長い時間があるのだから、また貯めればいいと考えているが、どうあってもお金が貯まることはない。
次の取引の日、気分がふさいだまま商人のいる場所に向かった。
「どうかしましたか?アルラ様」
いつもより元気のなさそうなアルラに商人は心配する。アルラは気にしないでほしいと首を振った。
「そうですか? それでは商品を見せていただきますね。今回もよいできです。ではこれほどでよろしいですか?ありがとうございます。では、この前アルラ様がお求めの商品のことですが、」
アルラの望んだ品を商人が懐から取り出した。しかしお金のないアルラは申し訳なさそうな顔で説明の為に用意してあった紙を渡した。
「おや、お金が他に入り用になったんですか。ふむ。アルラ様には儲けさせていただいてますからね。これからも取引していただきたいですし。…わかりました!私も商人ですからね。ここはサービスとしてこの商品を差し上げますよ」
思いもよらない提案にアルラは驚きながらも、もらってよいものか迷う。その迷いに気づいた商人はアルラの手にその品を乗せて握らせた。
「それではこれからもよろしくお願いします」
一礼してすぐに立ち去ってしまった商人。
しばらく呆然としたアルラだったが、その手の中の品に目を向ける。小さな小瓶で中に液体が入っていた。
一度ぎゅっと握り、決意したアルラは小瓶の蓋を取り、中の薬を飲み干した。
それで何か変わったような感覚はこない。それでもアルラは立ち上がって歩き出す。
その様子を監視者は見ていた。
アルラが目的の物を手に入れたとすぐにバンデラグアに伝わった。執務をしていた時だったが、それを止め立ち上がり、アルラを探しに向かう。
「アルラっ」
魔法を使ってアルラの居場所を探ったバンデラグアはまっすぐにアルラのもとにたどり着き、姿を見れば拘束しようと側にいく。
バンデラグアの声を聞いたアルラは振り向くと、勢いよく迫ってくるバンデラグアを目にし足を止めて待つ。
「…どういうつもりだ? …少し自由にしすぎたか…」
アルラの細い腕をしっかりと捕まえたバンデラグア。
アルラの機嫌を気にして商人に状況を聞き出すことをしていなかったので、アルラのしようとしていることを知らない。どんな方法でで逃げようとしているのか。
逃がすつもりはないが、焦りがくる。薬とはどんなものなのか。
そのアルラは、バンデラグアの状態など目に見えてないかのように、自分のペースで自分の喉元を撫でたり口を何度も開閉する。そして、
「あー。あー。ん。バン、デラグア…」
「?!アルラ…、声が?」
とてもとても久しぶりの声。澄んだアルラの声。冷徹な世界の王も驚愕する。
小瓶の中味は、声を取り戻す為のものだった。
声は呪いによって奪われていただけなので、その呪いを解いたのだ。
しかし、そんなことをしてどういう意味があるのか、バンデラグアにはわからない。
「あ、の。わたしは…」
久しぶりの為にうまく話せなく、もどかしいが、力を入れて声にする。
「私は、…バンデ、ラグアが、好き、です」
言い切った後、にこりと微笑みを見せる。目的が達成されて満足した。
「?バンデラグア?」
反応の薄さにアルラが気づくとバンデラグアは停止してしまっている。それが面白く感じたアルラは手を伸ばして停止している身体に触れてみた。
するとそれで覚醒したのかバンデラグアの身体が大きく動いた。
「アルラ…。本当か?」
「はい。好きですよ」
逃げたのは自分の勝手。声をなくしたのはその代償だろう。そんなことをバンデラグアにさせてしまった。結果は重い空気の部屋の中。せめて声を取り戻せば、重い空気を変えられるかもれない。
「なぜ…」
アルラは何度もバンデラグアから逃げている。
「初めから、好きでした」
「な…」
「ただ、私はあなたにつりあわない。だからずっと拒否してた」
「そんなこと…」
アルラは世界の王を独り占めしてはいけないと考えた。それにバンデラグアの愛を信じられなかったのもある。
「だけどあなたはいつまでたっても私を側におく」
「当たり、前だ!俺はお前がいなくては生きてる意味がない」
「…はい。それに気づくのがずいぶん遅くなってしまいました。すみません」
「いい。もう、いい。アルラ。これからも私の側にいてくれ」
「…はい」
バンデラグアの少し苦しい抱擁に、アルラは幸せそうに微笑んだ。
20130818
次の取引の日、気分がふさいだまま商人のいる場所に向かった。
「どうかしましたか?アルラ様」
いつもより元気のなさそうなアルラに商人は心配する。アルラは気にしないでほしいと首を振った。
「そうですか? それでは商品を見せていただきますね。今回もよいできです。ではこれほどでよろしいですか?ありがとうございます。では、この前アルラ様がお求めの商品のことですが、」
アルラの望んだ品を商人が懐から取り出した。しかしお金のないアルラは申し訳なさそうな顔で説明の為に用意してあった紙を渡した。
「おや、お金が他に入り用になったんですか。ふむ。アルラ様には儲けさせていただいてますからね。これからも取引していただきたいですし。…わかりました!私も商人ですからね。ここはサービスとしてこの商品を差し上げますよ」
思いもよらない提案にアルラは驚きながらも、もらってよいものか迷う。その迷いに気づいた商人はアルラの手にその品を乗せて握らせた。
「それではこれからもよろしくお願いします」
一礼してすぐに立ち去ってしまった商人。
しばらく呆然としたアルラだったが、その手の中の品に目を向ける。小さな小瓶で中に液体が入っていた。
一度ぎゅっと握り、決意したアルラは小瓶の蓋を取り、中の薬を飲み干した。
それで何か変わったような感覚はこない。それでもアルラは立ち上がって歩き出す。
その様子を監視者は見ていた。
アルラが目的の物を手に入れたとすぐにバンデラグアに伝わった。執務をしていた時だったが、それを止め立ち上がり、アルラを探しに向かう。
「アルラっ」
魔法を使ってアルラの居場所を探ったバンデラグアはまっすぐにアルラのもとにたどり着き、姿を見れば拘束しようと側にいく。
バンデラグアの声を聞いたアルラは振り向くと、勢いよく迫ってくるバンデラグアを目にし足を止めて待つ。
「…どういうつもりだ? …少し自由にしすぎたか…」
アルラの細い腕をしっかりと捕まえたバンデラグア。
アルラの機嫌を気にして商人に状況を聞き出すことをしていなかったので、アルラのしようとしていることを知らない。どんな方法でで逃げようとしているのか。
逃がすつもりはないが、焦りがくる。薬とはどんなものなのか。
そのアルラは、バンデラグアの状態など目に見えてないかのように、自分のペースで自分の喉元を撫でたり口を何度も開閉する。そして、
「あー。あー。ん。バン、デラグア…」
「?!アルラ…、声が?」
とてもとても久しぶりの声。澄んだアルラの声。冷徹な世界の王も驚愕する。
小瓶の中味は、声を取り戻す為のものだった。
声は呪いによって奪われていただけなので、その呪いを解いたのだ。
しかし、そんなことをしてどういう意味があるのか、バンデラグアにはわからない。
「あ、の。わたしは…」
久しぶりの為にうまく話せなく、もどかしいが、力を入れて声にする。
「私は、…バンデ、ラグアが、好き、です」
言い切った後、にこりと微笑みを見せる。目的が達成されて満足した。
「?バンデラグア?」
反応の薄さにアルラが気づくとバンデラグアは停止してしまっている。それが面白く感じたアルラは手を伸ばして停止している身体に触れてみた。
するとそれで覚醒したのかバンデラグアの身体が大きく動いた。
「アルラ…。本当か?」
「はい。好きですよ」
逃げたのは自分の勝手。声をなくしたのはその代償だろう。そんなことをバンデラグアにさせてしまった。結果は重い空気の部屋の中。せめて声を取り戻せば、重い空気を変えられるかもれない。
「なぜ…」
アルラは何度もバンデラグアから逃げている。
「初めから、好きでした」
「な…」
「ただ、私はあなたにつりあわない。だからずっと拒否してた」
「そんなこと…」
アルラは世界の王を独り占めしてはいけないと考えた。それにバンデラグアの愛を信じられなかったのもある。
「だけどあなたはいつまでたっても私を側におく」
「当たり、前だ!俺はお前がいなくては生きてる意味がない」
「…はい。それに気づくのがずいぶん遅くなってしまいました。すみません」
「いい。もう、いい。アルラ。これからも私の側にいてくれ」
「…はい」
バンデラグアの少し苦しい抱擁に、アルラは幸せそうに微笑んだ。
20130818
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