ツクチホ短編まとめ

はるば草花

文字の大きさ
上 下
18 / 59

会長を中心に世界が回る16

しおりを挟む
放課後、

佐城とは別で1人でいる家墨を見つけた北義の理性は切れた。


「よお。カスミ」

「キタギ…?」


いつもと違う雰囲気の北義に気づいた家墨は眉を寄せる。身構えるが、あっというまに腕をとられて担がれた。


「う、わ、」

「大人しくしてねえと落ちるぞ」


脅されても家墨はひとまず暴れてみるが、がっちり掴まれていて落ちる気配もない。

なんなんだと思いながらも、家墨は別に北義を怖がってもいなければ警戒する相手だとも思っていないので、多いに不服だが大人しく連れてかれることにした。

その一部始終を見てるだけしかなかった家墨の親衛隊員は気を失いそうになった。

2人の姿が見えなくなってから慌てて隊長へと連絡をする。




見回りで委員が1人もいない風紀室へと家墨を連れ込んだ北義。ドアには内鍵をかける。

ソファーに家墨の身体をおろし、逃げないように押さえ付ける。


「おいっ」

「カスミィ。俺はけっこう頑張ったんだぜ?」

「は?」

「きーみじかい俺が健気に誘ってただろ?」

「…なにを言ってる?」


頭おかしくなったのか?という目で北義を見る家墨。


「なのによお。なんだあれ。俺を嫉妬で狂わせたいわけ?」

「………ちゃんと話せ。じゃなきゃ意味わからんぞ」

「あ?いいんだよ、わかんなくて。身体のほうに教えてやるから」


そう言って北義はすばやく家墨の両手をまとめて本人の頭の上で押さえつける。
そして家墨のシャツを脱がしにかかった。


「おい、キタ…ん?!んん…」


なにするのかと問おうとした家墨の口が塞がれる。
北義に口づけられた。

塞ぐ目的だった北義だが、夢中になって貪る。


「…はっ、……てめえ……、ふざけんじゃねえぞ」


北義の行動は嫌がらせだと考えた家墨は腹を立て睨む。


「……ふざけてねえよ」


北義は、静かに低く唸る。


「お前を俺のもんにしてやる」

「あ?」

「泣こうが喚こうが、サジョウからぶんどる。……本気だ」


家墨の首に顔を寄せる北義。


「待て!確認させろ。それは……、好意か?」

「…ああ、お前が欲しくてたまらねえ。俺のもんになれよ、カスミ」

「は、こんなふうに無理矢理にか?それじゃあこの前の奴と同じじゃねえか」

「………わかってんだよ。これじゃあダメだってな。それでも他の奴のもんになるくらいなら、どんなことしても手に入れてえくらい、好きで好きでしょうがねえんだ。狂いそうだ。もう狂ってるのかもなぁ」


どんなことをしてでもと言って、ここまでしたのに、北義の声はだんだん弱々しくなっていく。

わかっているのだ。無理矢理自分のものにしたって、心が手に入らなければ虚しいだけだ。


家墨は、北義から好意を抱かれていたなんて全く気づいてなかったので驚きつつ、密着している身体から北義の熱を感じていた。

もとから体温が高いのか、興奮しているから高いのか。


密着しているものの、すでに拘束する力はなくなっている。諦めだしたのか。

家墨はでかくて重いその身体を抱きしめる。


「んなに欲しいなら、やってもいいぜ?」

「……カスミ?」

「熱いなあ、お前。…俺の側にずっといるってんなら、いいぞ」

「…本気か?」

「あ?なんだよ。反応薄いな。さっきまでのは嘘かよ」


突然の事に驚いた北義の身体が家墨から少し離れた。ので、家墨のほうからくっつく。


「んなわけあるか!俺の想いは深けえんだよ。俺よりそっちだ。俺のことからかってんじゃねえだろうな。いきなり突然惚れたとかじゃねえだろ」

「…まあな。だが、こうやって触れ合ってるのは悪くねえよ。だから、欲しいならやる」


気分が良さそうに家墨は目を細めた。


北義はそんな家墨を凝視しながら真意を考える。からかっているのか。しかし目の前に美味しそうなのがぶらさがってて我慢ができるわけもなく。


「………………もらう。くれ」

「おー」


軽い返事が嘘くさい。が、もう返さない。北義はらしくなく、震える手で家墨の頬を覆うように触れる。

家墨は、惚れてる側ではないが、でかいのが手に入ったと、力をこめて抱きついてみる。力をこめても潰れないどころかびくともしないことに満足する。

北義は信じられない気持ちだが、歓喜する気持ちが溢れ心から震える。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

青少年病棟

BL
性に関する診察・治療を行う病院。 小学生から高校生まで、性に関する悩みを抱えた様々な青少年に対して、外来での診察・治療及び、入院での治療を行なっています。 ※性的描写あり。 ※患者・医師ともに全員男性です。 ※主人公の患者は中学一年生設定。 ※結末未定。できるだけリクエスト等には対応してい期待と考えているため、ぜひコメントお願いします。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

執着攻めと平凡受けの短編集

松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。 疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。 基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)

みどりとあおとあお

うりぼう
BL
明るく元気な双子の弟とは真逆の性格の兄、碧。 ある日、とある男に付き合ってくれないかと言われる。 モテる弟の身代わりだと思っていたけれど、いつからか惹かれてしまっていた。 そんな碧の物語です。 短編。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

代わりでいいから

氷魚彰人
BL
親に裏切られ、一人で生きていこうと決めた青年『護』の隣に引っ越してきたのは強面のおっさん『岩間』だった。 不定期に岩間に晩御飯を誘われるようになり、何時からかそれが護の楽しみとなっていくが……。 ハピエンですがちょっと暗い内容ですので、苦手な方、コメディ系の明るいお話しをお求めの方はお気を付け下さいませ。 他サイトに投稿した「隣のお節介」をタイトルを変え、手直ししたものになります。

そんなの真実じゃない

イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———? 彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。 ============== 人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。

処理中です...