ツクチホ短編まとめ

はるば草花

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会長を中心に世界が回る12

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「相手は強敵だし、委員長はもうさ、しかたないから、ストーカー一歩手前くらい接触を試みるしかないんじゃない?」


もうそれしかない。十根の言葉に2人とも頷いた。

なんで青井まで真剣なの?と十根は首を傾げた。

もし、本当にストーキングするにしても、会長を守る壁は強力である。

親衛隊長の間戸は見た目よりしっかりしていて、隊員を誑かすなんて方法は何度も通じないだろう。

そして強敵佐城は家墨の部屋に盗聴器をしかけても見抜きそうだ。

しかし、風紀委員の十根は人の心理をつくのは得意だ。

探さなくてもターゲットは決まってる。





いつも幸せそうな会計、深高は無防備に廊下を1人歩いてる。


「ご機嫌よさそうだね。子猫ちゃん?」

「ひょわああ?!」


突然後ろに人が現れて深高は叫ぶ。それほど突然で異様に近い。慌てて距離をとろうと深高は移動する。


「そんな逃げなくてもいいでしょ」

「あわわわわわわ」


たしかに動いたのに、変わらず後ろにいる十根。さらに背中に密着させてくる。


「な、なんの用ですかっ」

「えー?用っていうか、生徒会と風紀ってもっと交流すべきだと思わない?」

「な、なれあうのは、どうかとー…、あの……、ごめんなさいっ」

「あー。…そんな怖いかなあ?」


深高は脱兎のごとく逃げた。そんな後ろ姿を十根はにやにやと見る。

上手く逃げれたと思ってる深高は、もう二度と遭遇することはないだろうと暢気に歩いているところを再び十根が襲う。

十根は怖がらせる気はなかったが怖がった。

そして、


「かいちょおー。一緒に帰ろっ。ねっ」


生徒会の仕事が終わり帰ろうとなった時、深高は家墨の腕をがっちり掴んだ。


「あ?なんでだ」

「いいじゃん!この前も一緒だったでしょ」

「そりゃそうだが…」


今日の深高は必死すぎて不審である。深高は唯一不良を怖がらない家墨がいれば、もしまた十根にからまれたとしても安心だからだ。


「ミタカ。あなたは今日の帰りに買い物するとか言ってませんでしたか。カスミもつき合わせるつもりですか?」


学園内にはお金持ちの子息の為のお店が充実しているので、買い物も楽しめる。


「た、たまには会長も行動したほうがいいと思わない?ね、副会長ー」

「俺ってなんだ…」


買い物くらいすると思った家墨だが、前に買い物したのはいつか思い出せない。ちょっとやばい気がした。


「たしかにそうですね。どうですか、たまには動きますか?」

「おう……」


動くのはやっぱり面倒なのだが、仲間と認識している深高の頼みなので、家墨はこくりと頷く。


「やった!!会長と遊ぶとかってなにげに初めてかもー。楽しみ」

「私は一緒にいけませんが、ミタカはちゃんとカスミを守るんですよ。それと、なるべく早く帰ること」

「心配しなくても、分かってるよー」


任せてと深高は胸を張る。実際は助けてもらう気だが。


「じゃあ、さあさあ、さっそく行こー」

「おい、ひっぱんな」


やる気のない家墨を引っ張る深高。それに注意したい衝動が起こる佐城だったが、それくらいでないと家墨は動かないので我慢して見送った。


いろんな店が集まっているエリアには授業の終わった生徒が多くやってきている。

生徒達は役員が、とくに珍しい会長が訪れたことに騒ぐが、遠巻きに見ているだけにする。


「ね、会長はなにが好き?今度一緒に遊ぼうよ」

「なんでゲーム売ってんだよ」

「まあ、金持ちの力かな?それか、あれじゃない。さすがにこんななんでもある時代の子から娯楽を取り除きすぎると変な方向にいっちゃうからかもよ」

「あー、正しいギャンブルの嗜み方とか教えといたほうが変にはまらないんだろうな」


納得したところで深高はゲームソフトを喜々として選ぶ。



そんな2人に近づく黒い影。

家墨はすぐに気づいたが、鬱陶しい相手でも逃げるようなマネはしたくないので気にしないようにする。それなら深高は教えてほしかっただろう。


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