ツクチホ短編まとめ

はるば草花

文字の大きさ
上 下
13 / 59

会長を中心に世界が回る11

しおりを挟む

佐城のほうは控えめに部屋の中に入っていた間戸に話しかける。


「隊長ということは着替えの場所も知ってますよね。あと、ちゃんと入ってくるまで出てこないように見張っておいてくれませんか」

「は、はい。わかりました」


慌てて行動を始めた間戸。
佐城のほうは食材を購入してきてあり、料理を始める。


「…なにやってんだ?」

「ああ、カスミ。ちょうどいいところに出てきてくれました。あ、髪がまだずいぶん濡れてるじゃないですか。まったく」

「わっ、やめろ」


風呂から出た家墨を見た佐城は家墨の肩にかけてあったタオルを使ってわしゃわしゃと髪を拭う。


「他人にされるのが嫌なら初めから自分でしていればいいでしょう。子供ですか」

「説教するくらいなら、しなきゃいいだろ」

「もう終わりましたよ。さっ、こっちに座ってください」


家墨の文句なんて聞き流し、髪の拭き終えた佐城は、家墨の手をとり椅子に座らせた。


「これ…、まさかお前が?」

「ええ。毒は入ってませんよ」


テーブルの上にはクリームスープパスタ。
温かそうで美味しそう。香りがお腹をくすぐる。

思わず手が伸びる家墨だが、動きを止める。


「…いらない。メシなら食った」

「そうは見えませんが、だとしても、夜食として食べられるでしょう。大きい体してるんですから。とにかく一口食べてみてください」

「……………」


引きそうにない佐城なので、家墨はしかたなく一口だけとスプーンですくい、口に含む。


「……うまい」


さらに一口と食べるのが止まらない。


「それはよかった」


素直な感想に佐城の頬もゆるむ。

食事を終えた後、間戸がお茶をいれ、佐城は仕事の話を家墨にふる。今話す必要のないもので、家墨は不審に思いつつ、話をする。

時間がたつと眠むりそうになってきた家墨で、その家墨の身体を佐城は持ち上げて寝室に運んでベッドの上に乗せた。

身体にさっきかぶっていた毛布をかけた。


「おやすみなさい。カスミ」

「……………」


まだぎりぎりながら意識のあった家墨。このまま眠るものかと目を開けようとするが、身体をぽんぽんと優しく叩かれているうちに目は閉じていく。

穏やかな寝顔に佐城はほっとした。


それから親衛隊には感謝され、公認の世話係となってしまう。大きな男の世話なんて嫌だと思ったのだが、ついつい世話が増えていく。

世話をしていて、家墨はきっと寂しいのだろうと佐城は推測する。

家墨は世界的な企業の家であり1人息子だ。もしかしたら親にあまり甘えられないで育ったのかもしれない。

中等部の頃から親衛隊ができて遠巻きに扱われるようになったうえ、役員になったことで1人部屋にもなった。性格から誰かに頼ったりもできなかったのだろう。

そうして気になって気になって、今では自分が世話するのが当然となっている。





「という感じで世話をするようになったんですよ」

「なるほどな」

「これでカスミの世話をしている気持ちがわかったでしょう?ああ、だからといって誰にでもカスミの世話をさせるわけにはいきませんが」

「いや…、別にいい」

「そうですか?」


青井が興味なさそうなのが残念そうな佐城。

やっぱり親ばかの域である。





その情報を持ち帰って風紀室で話す。佐城は話を広めてもいいですよという顔をしていたので遠慮なく。


「うわあ、なにそれ。十分恋愛に発展しそうじゃん」

「トネ…」

「副委員長だってそう思わなかったわけ?」

「それは………」


直接聞いた青井は佐城が嬉しそうに話していて嫉妬しなかったわけはない。


「それにさー。この前のことだってカスミ会長を助けた副会長って王子様みたいだよね。うちの委員長少しもいいとこないじゃん」

「うっせえ!わかってんだよ!」

北義が十根を殴った。


「いったあ。八つ当たりしてもしょうがないでしょ」


イライラが抑えられない北義。自分自身が腹立たしい。

十根と青井は北義が本気なのだと知っているから応援している。


「まあ…、頑張りなよ。委員長」

「ああ……」


珍しい十根の励ましにも北義は覇気がない。

青井とて、2人が付き合ってないとはっきりしてなければ、落ち込んでいただろう。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

黄色い水仙を君に贈る

えんがわ
BL
────────── 「ねぇ、別れよっか……俺たち……。」 「ああ、そうだな」 「っ……ばいばい……」 俺は……ただっ…… 「うわああああああああ!」 君に愛して欲しかっただけなのに……

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

大学生はバックヤードで

リリーブルー
BL
大学生がクラブのバックヤードにつれこまれ初体験にあえぐ。

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!

灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。 何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。 仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。 思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。 みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。 ※完結しました!ありがとうございました!

愛され末っ子

西条ネア
BL
本サイトでの感想欄は感想のみでお願いします。全ての感想に返答します。 リクエストはTwitter(@NeaSaijou)にて受付中です。また、小説のストーリーに関するアンケートもTwitterにて行います。 (お知らせは本編で行います。) ******** 上園琉架(うえぞの るか)四男 理斗の双子の弟 虚弱 前髪は後々左に流し始めます。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い赤みたいなのアースアイ 後々髪の毛を肩口くらいまで伸ばしてゆるく結びます。アレルギー多め。その他の設定は各話で出てきます! 上園理斗(うえぞの りと)三男 琉架の双子の兄 琉架が心配 琉架第一&大好き 前髪は後々右に流します。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い緑みたいなアースアイ 髪型はずっと短いままです。 琉架の元気もお母さんのお腹の中で取っちゃった、、、 上園静矢 (うえぞの せいや)長男 普通にサラッとイケメン。なんでもできちゃうマン。でも弟(特に琉架)絡むと残念。弟達溺愛。深い青色の瞳。髪の毛の色はご想像にお任せします。 上園竜葵(うえぞの りゅうき)次男 ツンデレみたいな、考えと行動が一致しないマン。でも弟達大好きで奮闘して玉砕する。弟達傷つけられたら、、、 深い青色の瞳。兄貴(静矢)と一個差 ケンカ強い でも勉強できる。料理は壊滅的 上園理玖斗(うえぞの りくと)父 息子達大好き 藍羅(あいら・妻)も愛してる 家族傷つけるやつ許さんマジ 琉架の身体が弱すぎて心配 深い緑の瞳。普通にイケメン 上園藍羅(うえぞの あいら) 母 子供達、夫大好き 母は強し、の具現化版 美人さん 息子達(特に琉架)傷つけるやつ許さんマジ。 てか普通に上園家の皆さんは顔面偏差値馬鹿高いです。 (特に琉架)の部分は家族の中で順列ができているわけではなく、特に琉架になる場面が多いという意味です。 琉架の従者 遼(はる)琉架の10歳上 理斗の従者 蘭(らん)理斗の10歳上 その他の従者は後々出します。 虚弱体質な末っ子・琉架が家族からの寵愛、溺愛を受ける物語です。 前半、BL要素少なめです。 この作品は作者の前作と違い毎日更新(予定)です。 できないな、と悟ったらこの文は消します。 ※琉架はある一定の時期から体の成長(精神も若干)がなくなる設定です。詳しくはその時に補足します。 皆様にとって最高の作品になりますように。 ※作者の近況状況欄は要チェックです! 西条ネア

ヤンデレBL作品集

みるきぃ
BL
主にヤンデレ攻めを中心としたBL作品集となっています。

処理中です...