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会長を中心に世界が回る11
しおりを挟む佐城のほうは控えめに部屋の中に入っていた間戸に話しかける。
「隊長ということは着替えの場所も知ってますよね。あと、ちゃんと入ってくるまで出てこないように見張っておいてくれませんか」
「は、はい。わかりました」
慌てて行動を始めた間戸。
佐城のほうは食材を購入してきてあり、料理を始める。
「…なにやってんだ?」
「ああ、カスミ。ちょうどいいところに出てきてくれました。あ、髪がまだずいぶん濡れてるじゃないですか。まったく」
「わっ、やめろ」
風呂から出た家墨を見た佐城は家墨の肩にかけてあったタオルを使ってわしゃわしゃと髪を拭う。
「他人にされるのが嫌なら初めから自分でしていればいいでしょう。子供ですか」
「説教するくらいなら、しなきゃいいだろ」
「もう終わりましたよ。さっ、こっちに座ってください」
家墨の文句なんて聞き流し、髪の拭き終えた佐城は、家墨の手をとり椅子に座らせた。
「これ…、まさかお前が?」
「ええ。毒は入ってませんよ」
テーブルの上にはクリームスープパスタ。
温かそうで美味しそう。香りがお腹をくすぐる。
思わず手が伸びる家墨だが、動きを止める。
「…いらない。メシなら食った」
「そうは見えませんが、だとしても、夜食として食べられるでしょう。大きい体してるんですから。とにかく一口食べてみてください」
「……………」
引きそうにない佐城なので、家墨はしかたなく一口だけとスプーンですくい、口に含む。
「……うまい」
さらに一口と食べるのが止まらない。
「それはよかった」
素直な感想に佐城の頬もゆるむ。
食事を終えた後、間戸がお茶をいれ、佐城は仕事の話を家墨にふる。今話す必要のないもので、家墨は不審に思いつつ、話をする。
時間がたつと眠むりそうになってきた家墨で、その家墨の身体を佐城は持ち上げて寝室に運んでベッドの上に乗せた。
身体にさっきかぶっていた毛布をかけた。
「おやすみなさい。カスミ」
「……………」
まだぎりぎりながら意識のあった家墨。このまま眠るものかと目を開けようとするが、身体をぽんぽんと優しく叩かれているうちに目は閉じていく。
穏やかな寝顔に佐城はほっとした。
それから親衛隊には感謝され、公認の世話係となってしまう。大きな男の世話なんて嫌だと思ったのだが、ついつい世話が増えていく。
世話をしていて、家墨はきっと寂しいのだろうと佐城は推測する。
家墨は世界的な企業の家であり1人息子だ。もしかしたら親にあまり甘えられないで育ったのかもしれない。
中等部の頃から親衛隊ができて遠巻きに扱われるようになったうえ、役員になったことで1人部屋にもなった。性格から誰かに頼ったりもできなかったのだろう。
そうして気になって気になって、今では自分が世話するのが当然となっている。
「という感じで世話をするようになったんですよ」
「なるほどな」
「これでカスミの世話をしている気持ちがわかったでしょう?ああ、だからといって誰にでもカスミの世話をさせるわけにはいきませんが」
「いや…、別にいい」
「そうですか?」
青井が興味なさそうなのが残念そうな佐城。
やっぱり親ばかの域である。
その情報を持ち帰って風紀室で話す。佐城は話を広めてもいいですよという顔をしていたので遠慮なく。
「うわあ、なにそれ。十分恋愛に発展しそうじゃん」
「トネ…」
「副委員長だってそう思わなかったわけ?」
「それは………」
直接聞いた青井は佐城が嬉しそうに話していて嫉妬しなかったわけはない。
「それにさー。この前のことだってカスミ会長を助けた副会長って王子様みたいだよね。うちの委員長少しもいいとこないじゃん」
「うっせえ!わかってんだよ!」
北義が十根を殴った。
「いったあ。八つ当たりしてもしょうがないでしょ」
イライラが抑えられない北義。自分自身が腹立たしい。
十根と青井は北義が本気なのだと知っているから応援している。
「まあ…、頑張りなよ。委員長」
「ああ……」
珍しい十根の励ましにも北義は覇気がない。
青井とて、2人が付き合ってないとはっきりしてなければ、落ち込んでいただろう。
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