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会長を中心に世界が回る9
しおりを挟む「まあ、そういう学校ですよね。わかっていたことです。いくらあなた方に力があっても難しいでしょう」
納得いかない顔を佐城はしているが、青井は話を続けた。
「それで、連中、というか、1人の生徒だが、今回のことを計画した奴だが、けっこう会長に執着しているような感じだったな。なので、そのままだと再び行動を起こしかねない」
「するでしょう。絶対」
それで風紀としてどうしてくれるんですかと、佐城は青井をじっと見る。
「ああ。それで、会長の身の回りの安全強化をしばらくすることになった。それと3人とも再教育することを計画中だ」
「中途半端なことはやめてくださいね」
「わかってる」
青井はしっかりと頷く。失態は重ねられない。
「なあ、猫ってケーキ食うか?」
「人の食べ物を無闇にあげてはいけませんよ」
報告を聞いていたのか分からない家墨が突然聞いてきた。
「…そうなのか」
「なにか食べさせたいですか?すぐに用意できますが」
「いや、いい」
ケーキは自分が食べることにした家墨は、丸くなっている子猫を見ながら食べる。
その家墨を見た佐城はあることを思いつく。
「しまった」
「ん?」
「子猫に癒されてもらおうと思ってましたが、このまま子猫に愛着をもってしまえば別れがきたとき、悲しむかもしれません。考えが浅はかすぎました…」
「……そうか?」
そこまで気にすることが青井には理解しがたい。これは親ばかの域ではないか。
だとしても、佐城の為になんとか悩みを解決しようと青井は考える。
「アニマルセラピーってのは確かにあることだし、もし猫に興味をもったならその時考えればいい」
「まあ、そうですね…」
「どうしてそこまで気にかける?」
2人の関係は恋愛関係でないと青井は考えている。しかし、深い意味があるように思え、真剣な眼差しを佐城に向ける。
「あなたに話す必要がありますか?」
「そうだな。だが、そんなに話せないようなことなのか?」
「いえ…、別にそういうわけでは…。わかりました。話しましょう」
乗せられた感じはあるが、実は佐城はちょっと聞いてもらいたかった。
家墨のことを知ってもらいたいのだ。誰にでも話すわけではないが。
中等部の3年の頃、今と同じく佐城は副会長、家墨は会長だった。
だとしても性格の違いがあって仕事以外での会話は少なかった。
そして高等部1年になり、生徒会入り予定として、2人は補佐になった。
授業が終わって教室を出た佐城は生徒会室に向かおうとするのだが、家墨の姿を見つけて眉を寄せた。
「カスミ!どこに行くつもりです。そちらに生徒会室はないでしょう」
「あ?サジョウか。ちょっと休憩だ。休憩」
「なに言ってるんです。そう言ってあなたは何十分も戻ってこないでしょう」
「うるせーな。ちゃんと後で行くし、仕事は問題なくしてんだろ。少しくらいいいじゃねえか」
「あなたはまったく…」
そのまま家墨は休憩しに向かっていく。それを佐城は止めなかった。
無駄だと感じているのもあるが、生徒会の仕事は決まった時間にしなければならないと決まっていないのだから咎める理由がない。
確かに仕事はちゃんとしているのだ。
ただ態度の悪い家墨にたいしての佐城の印象はよくなかった。
そんなある日、生徒会室に向かおうとしている佐城に声をかける者がいた。
「あなたは、たしかカスミの?」
「はい。マドと申します」
家墨の親衛隊の隊長をしている間戸だった。表情はなにか困っていそうだ。
「どうしました?」
「あの、その、カスミ様が…、最近食事をちゃんととられていないのです」
「そうなんですか?どこか体調でも…」
今日も授業は出ていて、はっきり見てはいないがいつもと変わりなかった。
「そうかもしれませんが、わかりません。カスミ様が私達の用意したものを食べないことはよくあることですし、食事しているかどうかは、はっきりと確認はできないのです。前からそうなのですが、今回は長いので不安なのです。…私の考えすぎかもしれりませんが…」
「自分の親衛隊を不安にさせるなんて駄目でしょう。我が儘な男ですね。適当な男ですから、適当な生活をしているんでしょう。それで体調を崩しても自業自得ですが、人に心配させるなんて許されません。わかりました。食事くらいなら任せてください」
「あ、ありがとうございます」
間戸は安心したように佐城に頭を下げる。とても聡明そうな生徒が家墨を慕うのが佐城には疑問である。
そして、生徒会の仕事を終えた佐城は家墨を見つけて腕を掴まえる。
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