繊細な悪党

はるば草花

文字の大きさ
49 / 50
番外

弱いとこ1

しおりを挟む
あの天才魔術師に恋人ができた。

その情報の衝撃は強く、噂は爆発的に広まった。さすがに一般市民にまで流れるものではないが、貴族だと学生達にまで知られることになる。

上位学部に通っているリンメルが、その恋人だということも一部は知ることになった。


「なんだあ?」

「リ、リンメル。逃げたほうがいいよ」


学校の庭で複数の人に囲まれたリンメルとクルク。似た状況を何度か体験しているクルクは危険だとすぐに察知した。


「ひとつ聞きたいことがあるだけなんだけど、呼び出しに応じないから、こっちから来たんだよ」


相手のうちの一人の、綺麗な顔の男が相手が馬鹿リンメルだと知ってるので説明する。


「はああ? 呼び出しに応じるなんて馬鹿だろ。聞きたければ最初から来い」


馬鹿リンメルが正論っぽく煽ってくるのに、綺麗な男は切れそうになりながらも堪える。


「そうだね。では、聞きたいんだけど、信じられない噂を聞いてね。君が天才魔術師、国の至宝たる美しいウィンレイ様の恋人だなんて馬鹿馬鹿しいことはないよね?」

「あん?」


男の言葉にクルクはこんなにも早く情報が伝わってしまってることに驚愕し、そしてやはりこういうことが起きたかと、苦痛の表情を浮かべた。
当事者はまだ言葉も理解していないけど。複雑な言い方をしたからである。


「ウィンレイ?がなんだって」

「だからっ。ウィンレイ様の恋人は君かと聞いてるんだ!」

「あー。あー……。違うぞ」


面倒になるから内緒という話を思い出した。なので嘘を言ったが。このあっさりさが肯定している。キャラが違う。


「はああ?! あんたなんかがなんで、麗しいウィンレイ様の恋人になれるわけ?!」


綺麗な男以外もリンメルを批判する声をあげる。


「そうだ! そんな訳ありえない!」

「そう。違うぞ。そう言ったのに、なんでそう思い込むんだ?」


またあっさりした返しで、さらにリンメルの顔が馬鹿にしてるように見える。それが余裕からきているようにしか見えない。


「とぼけないで! あんたがウィンレイ様を騙しているに違いない。あんたみたいな不細工が側にいるというだけでありえないんだから!」

「ああん?」

「うっ、ば、馬鹿だし! 金目当てでしょ! あんたの悪事を調べ上げてさらしてやるから!」


金切り声が響く。その状況にクルクが身を固くする。相手は貴族だ。怒らせればどんな報復をされるか分からない。そしてその結果で、リンメルが愛するウィンレイと別れなければならないことになってしまうのではないかと、悲痛に感じる。


「はっ。坊っちゃん供が俺をどーこーできるとでも思ってんのか?」

「こっちは貴族だ。その違いも分からないとでも言うつもりか?」


貴族と庶民の違いは大きい。庶民をぷちりと潰すことは簡単なことだと綺麗な男は思ってる。


「何言ってる。そっちが貴族かどうかなんてたいしたことじゃない」

「は?」

「うちのウィンレイは誰よりも一番強いんだよ。お前らが束になっても無駄だぞ」


複雑なことは考えてない。こっちの陣地には最強に強い味方がいるという話だ。しかし色んな意味で攻撃力は高い。


「あんたはただの庶民だろ。あんたの悪事をウィンレイ様に言ってやるって言ってるの!」

なんとでもでっちあげるつもりだ。

「はあ? 俺のした悪事はウィンレイは全部知ってるぞ。なんとかしてくれたくらいだしな」


呼ぶ人騒動の話をしているだけであるが、それがもう、相手にクリティカルヒット。もう深い深い仲なんですと言ってるのと同じ。嘘には到底見えない。


「ふ、ふざけないでっ!」

「うおっと」


平手打ちをしてきたが、警戒していたリンメルは躱す。相手はお坊っちゃんなので余裕だ。


「リンメル!」


リンメルは強いと思ってるクルクもここまで相手を怒らせては危険だと考えた。実際に複数の人間がリンメルに向かっていく。


「はっ。坊っちゃん供は馬鹿だなあ」

「いった」


鞄に隠し持っていた短い棒を手慣れた感じで取り出したリンメルは躊躇なく相手を殴る。


「リ、リンメルっ」


貴族に怪我をさせると庶民は不利だ。


「これがどういうことか、いった」


クルクが心配するようなことを相手もわかってるが、複雑に考えないリンメルはさらに殴った。リンメルからすると防衛の範疇である。やる気ならもっとちゃんと考える。

不良同士のやり取りなんて知らない坊っちゃん達からすると狂人である。全員パニックになって逃げていった。


「リ、リンメル。大丈夫?」

「見てただろ? 俺の圧勝だ」

「それは心配してなかったよ。リンメル強いからね。そのことじゃなくて、今後もウィンレイ様の恋人ってことで色々言ってくる人がいると思うんだ。リンメルが嫌だと思うことを探してしてくると思う」

「あー…。あいつも目立つから内緒にしとけって言ってたしな。あいつの財産を狙う奴は貴族でも多いってことだろうな。まあ、大丈夫だろ。ウィンレイは強いし。全部ウィンレイにちくってやる」

「そっか。そうなんだね。すごいな」


二人がとても仲良いことは知っていたが、リンメルの言い方が深い信頼関係を感じさせる。クルクはまだまだセルツァーに甘えることはできない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。

星乃シキ
BL
発作の後に目覚めたら、公爵家嫡男の身体だった。 前世の記憶だけを抱えたまま生きるレイは、ある夜、男の聖女への嫌がらせの罪で断罪される。 だが図書室の記録が冤罪を覆す。 そしてレイは知る。 聖女ディーンの本当の名はアキラ。 同じ日本から来た存在だった。 帰りたい聖女と、この身体で生きるレイ。 秘密を共有した二人は、友達になる。 人との関わりを避けてきたレイの人間関係が、少しずつ動き始める。

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

デコボコな僕ら

天渡清華
BL
スター文具入社2年目の宮本樹は、小柄・顔に自信がない・交際経験なしでコンプレックスだらけ。高身長・イケメン・実家がセレブ(?)でその上優しい同期の大沼清文に内定式で一目惚れしたが、コンプレックスゆえに仲のいい同期以上になれずにいた。 そんな2人がグズグズしながらもくっつくまでのお話です。

台風の目はどこだ

あこ
BL
とある学園で生徒会会長を務める本多政輝は、数年に一度起きる原因不明の体調不良により入院をする事に。 政輝の恋人が入院先に居座るのもいつものこと。 そんな入院生活中、二人がいない学園では嵐が吹き荒れていた。 ✔︎ いわゆる全寮制王道学園が舞台 ✔︎ 私の見果てぬ夢である『王道脇』を書こうとしたら、こうなりました(2019/05/11に書きました) ✔︎ 風紀委員会委員長×生徒会会長様 ✔︎ 恋人がいないと充電切れする委員長様 ✔︎ 時々原因不明の体調不良で入院する会長様 ✔︎ 会長様を見守るオカン気味な副会長様 ✔︎ アンチくんや他の役員はかけらほども出てきません。 ✔︎ ギャクになるといいなと思って書きました(目標にしましたが、叶いませんでした)

光と瘴気の境界で

天気
BL
黒髪黒眼の少年・はるは、ある日下校途中にトラックに轢かれると、瘴気に侵された森で倒れていた。 彼を救ったのは、第二騎士団長であるアルバート。 目を覚ましたはるは、魔法や魔物も瘴気も知らず… アルバートの身に危険が迫ったその瞬間、 彼の中で眠っていた“異質な力”が覚醒する。 古来より黒目黒髪は“救世主の色”であり、膨大な力を持っているとされている。 魔物と瘴気で侵されているエクリシア王国の国王ははるの存在を知るとその力を彼の体が壊れようとも思うがままに使おうとする。 ーー動き始めた運命は、やがて大いなる伝承の核心へと迫って行く。

もう一度言って欲しいオレと思わず言ってしまったあいつの話する?

藍音
BL
ある日、親友の壮介はおれたちの友情をぶち壊すようなことを言い出したんだ。 なんで?どうして? そんな二人の出会いから、二人の想いを綴るラブストーリーです。 片想い進行中の方、失恋経験のある方に是非読んでもらいたい、切ないお話です。 勇太と壮介の視点が交互に入れ替わりながら進みます。 お話の重複は可能な限り避けながら、ストーリーは進行していきます。 少しでもお楽しみいただけたら、嬉しいです。 (R4.11.3 全体に手を入れました) 【ちょこっとネタバレ】 番外編にて二人の想いが通じた後日譚を進行中。 BL大賞期間内に番外編も完結予定です。

全速力の君と

yoyo
BL
親友への恋心に蓋をするために、離れることを決めたはずなのに

職業寵妃の薬膳茶

なか
BL
大国のむちゃぶりは小国には断れない。 俺は帝国に求められ、人質として輿入れすることになる。

処理中です...