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呼ぶ人
呼ぶ人24ヒーロー参上
しおりを挟む「あのさあ、最近、調子に乗ってない?」
「この前の騒動であんたが消されればよかったのに。なんでクリュア様のほうがいなくなるのか信じられない」
可愛らしい男の子2人が主導で体つきのいい男達とともにクルクを呼び出して、人のあまり来ない建物の裏で囲む。
クルクが何か悪いことをしているということではないので、クルクは何か言うこともできない。
「何か言いなよ。暗いよねー。まあ、いいか。とにかくつまりは消えて欲しいわけ。なかなか、なくならないから、消えたくなるようなことしてあげるよ」
主導の生徒の合図で体格のいい男達が動き出す。暴力をふるわれると思いクルクは身を固くする。
そこに。
「なにやってんだ? てめえら」
突然の声に全員が驚き、その声の主を見る。
「リンメル!」
「うわっ。不良!」
面倒そうな顔のリンメルがいて、クルクは嬉しくもあるが、リンメルのことが心配になる。
小柄な生徒は顔をゆがめる。
「どうする? こいつもやる?」
動揺した小柄な生徒だが、体格のいい男の言葉にそれがいいかと頷いた。
そういうことで体格のいい男の半分はリンメルへと向かう。
「リ、リンメル逃げて」
自分のことよりリンメルが危険になることが耐えがたいクルクは悲痛な声を出す。
「はっ。馬鹿だな」
そのリンメルは、余裕のある男前風に、相手を馬鹿にしたような笑みを浮かべる。
普段お坊っちゃんは、不良認定しているリンメルを嫌がって近づかないが、しょせんリンメルはただの馬鹿だと思っているので、体格のいい男達は問題ないと考えている。
そして、リンメルの強さはどんなものかといえば、普通だ。ちょっと強い相手には勝てない。
しかし、繊細と自負していても怖い世界で生きてきたのだ。場数が違う。
すらりと背に隠していた長い木の棒を取り出したリンメル。体格のいい男達は足を止めた。
「てめえっ。卑怯だぞ!」
「馬鹿か。これくらい普通だろ」
武器のひとつ、しかもただの木の棒だけで動揺しているのがリンメルにはおかしく感じる。
さらにリンメルは優しい人なわけはない。相手の出方なんて待たず、木の棒を振り上げて躊躇なく下ろす。
「うわっ!」
「ひっ。こいつ頭いかれてるぞ!」
「あ?」
木の棒は男達にかすりもしなかったが、話し合うこともなく攻撃してきたリンメルが信じられなく、男達は自分達で不安を煽り、慌てて逃げていく。
「なんだー? よわっ」
お坊っちゃんくらいなら自分でも対応できるだろうと思ってたリンメルだが、想像よりずっと弱かった。
「リ、リンメル、け、怪我ない?」
「見てたろ。なんもねえ。そっちのほうがどうなんだ?」
「う、うん。大丈夫。リンメルが来てくれたから」
「ならもう帰るか。今日もおやつあるー?」
「うん。あるよ」
問題解決、ほのぼの2人は帰ろうとした。
「動くな!」
「あ?」
「ほえ?」
いきなりの静止の声に気の抜けていたクルクは緊張感のない声が出た。
周囲を見れば複数の人に囲まれていた。
「会長! こっちです」
「クルク! 無事か?!」
「あん? セルツァーか。何しにきた」
「リンメル…?」
クルクが見つかったと急いでやってきたセルツァーだったが、リンメルがいたことにわずかに混乱する。
「どういうことだ? クルクは呼び出されたんじゃないのか?」
「俺が追い払ったんだよ。お前らは遅いな」
「本当か?」
「はい。ご心配おかけしてすみませんでした」
礼儀正しく頭を下げてクルクは先に進んでいるリンメルを追いかける。
その後ろ姿をセルツァーは呆然と見ているしかなかった。仲を深める機会をリンメルに潰された。クルクが助かったのはよかったが、少々悲しい。
そのことでへこんだセルツァー。本人に自覚は薄いが。
「なあ、あいつすげーうざいんだけど」
嫌いな場所といえる図書室にも馴染んできたリンメルは、幻獣シェンを抱えて撫でながら、最近のセルツァーについて文句を言う。
撫でられてるシェンはリンメルになんてと憤慨しつつも、撫でられるのが好きでされるがままになっている。
「んー、僕もよく分からなくて…」
苦笑するクルク。最近、セルツァーが変だとは気づいているが、理由は分からない。
クルクと妙な距離があったり、リンメルを見ると睨んで去っていったり、だからといって姿をまったく見せないというわけではないので、心配するようなことではないと考えられるが。
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