繊細な悪党

はるば草花

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呼ぶ人

呼ぶ人22紹介

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部屋を出たセルツァーは気持ちが落ち着かなくて、意味もなく生徒会室へと向かう。

部屋を出てきたのはクルクの説得ができる気がしなかったからだ。好意は少しはあるようだけど、なんにしても身分の差に負けるのである。

諦めるなんて考えられないが、どうしたらいいのか分からない。

生徒会室で1人、深く息を吐く。



その後、普通に接する2人であったが、どこかよそよそしい。

体力も回復したクルクは自分の部屋に戻り、これまでの日常が戻ることになる。

学校は事件のことや、クリュアの転校によって、前のようにとはいかなかったが、一応落ち着いていた。


「クリュアの奴転校したって、悪いことしたのか?」


クルクの隣の席に座るリンメルがとくに意味なくクルクに話しかける。クリュアの転校は今日教師によって告げられたのだ。


「噂だと、この前の事件があって、ご両親が心配したからだって。他にも同じような生徒が何人もいるらしいよ」


転校理由は勿論、偽装である。事情を知るクルクは偽装ではないかと思うが、考えてもしかたないので、考えない。


「なんだ。根性ねえ奴。クルクを巻き込んだくせに」

「リ、リンメルっ。そのことは話しちゃ駄目なんだよ?」

「あー、これくらいもか? めんどくせえな」

「あ、あんまり、事件のことは話さないほうがいいよ」

「別に興味ないから話さないけどな」

「そっか…」


リンメルはただ、休み時間が暇だから、クルクに話しかけただけである。そろそろ授業が始まろうかという頃に、リンメルは机に腕をのせて枕にして眠り出す。
授業をきかないで勉強は大丈夫か心配するクルクだった。

まだクルクは知らないが、リンメルが学校に通えるのはウィンレイの推薦ということになっている。もとから貴族の為の上位学部なので、成績優秀である必要はない。

今日の授業が終わった後、クルクのほうから眠るリンメルに声をかける。


「リンメル。今日は図書室に行かない?」

「んあ? 図書室…? なんで。まだ試験は先だろ」

「うん。あのね。リンメルに会わせたい生き物がいるんだ」

「生き物ー? んー、夕食も作ってくれるならいいぞ」

「いいよ。でもウィンレイ様と一緒に食べなくていいの?」

「いいに決まってるだろ。あいつとは毎日、朝メシ食う時には一緒なんだから、夕食まで一緒でいたくねえよ」

「朝は一緒なんだね。それならいいか」


一緒にメシを食うことになっている理由がリンメルは分かっていない。

そうしてウキウキとしたクルクはリンメルを第2校舎の図書室へと連れてきた。


「しかし、こんなとこに生物がいるのか?」

「えへへ。ちょっと待ってて」


クルクは肩にかけた鞄を長机の上に乗せ、中から小さい袋を取り出す。それを持って棚の隅に向かう。袋を開けると甘い香りが漂った。


「シェンー。お菓子だよー。おいでー」


基本、シェンは気まぐれに姿を現すが、お菓子の匂いにつられて姿を見せる。今日も我慢ができなかったのか、ふらふらと姿を見せた。


「シェン!」

「クリュ!」

嬉しくてシェンの体を抱きしめたクルク。


「ほら、リンメル。シェンだよ。幻獣なんだって」

「ほー、これが? ただの変わった生き物にしか見えないな」

「そうだね。…リンメルは怖くない?」

「あ? 別にこいつが幻獣でも怖くねえよ」


得体の知れない獣に怯えるものは多い。それは魔物を彷彿とさせるからだろう。リンメルは馬鹿なのもあって、強がっている。それに、学校の噂となったシェンは人を威嚇していたが、クルクの腕の中のシェンはただの大人しい獣にしか見えないので、怖くは感じられない。


「へへっ。よかった。リンメルと会う前は学校で唯一仲良くしてくれたんだ。だからリンメルとも仲良くなってほしくて」

「唯一? ……ふーん」


唯一ということにひっかかったリンメルだったが、気にせずシェンを撫でてみる。


「おっ、意外と毛並みがいいな」


シェンはクルクの友達だからと大人しくしていた。内心非常に嫌だが。


「だよね。僕も好き」


リンメルにシェンが受け入れられて喜ぶクルク。

和んでシェンを触っていたら、人の滅多に来ない図書室のドアが開く。


「お前…。まだいたのか」

「ああ? こっちの勝手だろうが、これだから、貴族は嫌なんだよなあ」


やってきたのはセルツァーで、リンメルの存在に瞬時に顔を険しくした。


「なんだと? 身分は関係ないだろう」

「はん。貴族で嫌みでない奴を見たことねえよ。金はあるわ。顔はいいわ。お前は頭もいいんだったか? どういうことだ」

「お前それ…」


ウィンレイがリンメルのことを馬鹿だとか言ってるのを何度か聞いたがあると思い出したセルツァー。


「な? クルクは貴族じゃなくてよかったな」

「なに言うんだ。クルク、そんなことないよな?」

「ええっと…」


なんと言っていいか分からないクルクは2人の顔を交互に見る。
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