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呼ぶ人
呼ぶ人9純粋なリンメル
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自分の勉強をしていれば、部屋にリンメルがやってきた。勉強で分からないところがあったのかと思って中に招く。
お腹が空いているというので簡単な食事を出した。遠慮のかけらなく出したものを全て食べた。
「それで、なにか用事?」
「あ? ああ、そうだ! お前に聞きたいっつーか、見せてもらいたいんだけど」
「え、なに、わ」
突然リンメルがクルクの腕をとって袖をまくった。そこには、腕をぐるぐると巻く赤い模様があった。蔦と花の模様のようで繊細で美しい。2人は知らないが、とある神をしめす文様である。
クルクは慌ててそれを隠す。
「ど、どうしたの?」
とても小さい頃にその模様でからかわれたことの多かったクルクは隠すことにしている。
「それってさあ、生まれた時からあるんだよな?」
「そうだよ。リンメルは一緒に育ったんだから、知ってるでしょ?」
「まあな。それってなんであるか知ってるか?」
「なんでって言われても…。前は何かの意味で両親が描いたのかなって思ってたけど、身体が大きくなるにつれ模様が変わってるから、変な痣なのかなって思ってるよ。だいぶ変だけど」
「そっか。じゃ、帰るわ。メシはうまかった」
「え、ありがと。え?」
そのまま帰ってしまったリンメル。何をしにきたのか分からなかった。
クルクにとっては腕の模様は嫌な思い出が多い。そのせいで親に捨てられた可能性もある。ただ、リンメルが来たことで思い出すのはとても小さな時のことだ。
まだ純粋でお手伝いもしていたリンメルは、クルクの腕を見てキレイだと言ってくれた。
クルクもそれまで忘れていたことだ。
そんな時もあったなと微笑んだ。
その夜のこと、生徒会長セルツァーの広い部屋にて、セルツァーと風紀委員長グランドが真面目な顔で2人座って無言にいた。
ある人物がやってくるとの情報が入ったからである。
そこに部屋付きの侍従の案内でやってきた男が現れた。
決めていた暗号を侍従に言って入室許可をえた男は怪しい格好であるが、魔術師ウィンレイである。
「あれ? あなたは生徒の親戚では?」
ウィンレイの姿に見覚えのあったグランド。怪しい人物として職務質問した相手だ。
「ああ、あれはちょっとしたことで嘘でかばってくれたんだよ。詳しくは詮索しないでほしい」
浅い理由なのだが、こう言うと機密情報のように聞こえる。
「わかりました。それであなたは魔術師団長の従者の方なのですか?」
「いや、団長本人」
顔を隠していた布をとったウィンレイ。優美な顔がそこにあった。
「ウィンレイ様! 直接来ていただけるとは光栄です。セルツァー・カリハルフィーです」
座っていたセルツァーは立ち上がりウィンレイに手を差し伸べる。
「大貴族のご子息に光栄に思われるほどの存在ではないよ。まあ、気軽に話そう」
手を握り、2人に座ることを促した。
ウィンレイという魔術師は、噂ではその才能は歴史的に見ても上位間違いなしと言われるほどの能力の高さがあるが、性格に難ありと言われている。
しかし、今のところ所作は優美で言動もしっかりしている。魔術師団長の地位でありながら気さくで、自ら赴くということに2人とも感動する。
実際に自ら動いている理由は、そうでないと気が済まないからだ。仕事は嫌いだが、やるからには完璧にしたい。地位に胡座をかく気はみじんもない。
もともと憧れてるセルツァーの視線を受けながら、ふかふかの椅子に座ったウィンレイはさっそく話を始める。
「まずは情報交換だ。といってもたいして情報は手には入っていないようだが」
「申し訳ありません」
2人は無力さと申し訳なさに顔を歪める。
「君達がそれほど気に病むことはないよ。そもそもいくら問題の人物が学校にいるからって、子供の君達に今回のことを任せるのがどうかしている」
「しかし…」
「もちろん、子供だからってしっかり行動してもらわないと困るが。それに上も今回の情報をあまり多くの人間に知られたくなかったんだろう。だから知られてもいい地位の君達に話した。大人は下手に動けないしね。俺に今回の話がやってきたのも手をこまねいてどうしていいか分からなくなってから、やっと話したんだと思うよ。俺は嫌われてるからね。できれば知られたくなかっただろう。…それはいいとして、こっちが手に入れた情報だけど、こっちがぼんやりしている間に向こうはかなり進んでいるよ。これは深刻な上、大きな事が起こるのが迫ってるってことだ」
「な!」
セルツァーは今回の魔術師団との接触は今後の連携をする為に確認ごとをする程度だと思っていたのに、すでに危険な状況だということに驚くしかない。
お腹が空いているというので簡単な食事を出した。遠慮のかけらなく出したものを全て食べた。
「それで、なにか用事?」
「あ? ああ、そうだ! お前に聞きたいっつーか、見せてもらいたいんだけど」
「え、なに、わ」
突然リンメルがクルクの腕をとって袖をまくった。そこには、腕をぐるぐると巻く赤い模様があった。蔦と花の模様のようで繊細で美しい。2人は知らないが、とある神をしめす文様である。
クルクは慌ててそれを隠す。
「ど、どうしたの?」
とても小さい頃にその模様でからかわれたことの多かったクルクは隠すことにしている。
「それってさあ、生まれた時からあるんだよな?」
「そうだよ。リンメルは一緒に育ったんだから、知ってるでしょ?」
「まあな。それってなんであるか知ってるか?」
「なんでって言われても…。前は何かの意味で両親が描いたのかなって思ってたけど、身体が大きくなるにつれ模様が変わってるから、変な痣なのかなって思ってるよ。だいぶ変だけど」
「そっか。じゃ、帰るわ。メシはうまかった」
「え、ありがと。え?」
そのまま帰ってしまったリンメル。何をしにきたのか分からなかった。
クルクにとっては腕の模様は嫌な思い出が多い。そのせいで親に捨てられた可能性もある。ただ、リンメルが来たことで思い出すのはとても小さな時のことだ。
まだ純粋でお手伝いもしていたリンメルは、クルクの腕を見てキレイだと言ってくれた。
クルクもそれまで忘れていたことだ。
そんな時もあったなと微笑んだ。
その夜のこと、生徒会長セルツァーの広い部屋にて、セルツァーと風紀委員長グランドが真面目な顔で2人座って無言にいた。
ある人物がやってくるとの情報が入ったからである。
そこに部屋付きの侍従の案内でやってきた男が現れた。
決めていた暗号を侍従に言って入室許可をえた男は怪しい格好であるが、魔術師ウィンレイである。
「あれ? あなたは生徒の親戚では?」
ウィンレイの姿に見覚えのあったグランド。怪しい人物として職務質問した相手だ。
「ああ、あれはちょっとしたことで嘘でかばってくれたんだよ。詳しくは詮索しないでほしい」
浅い理由なのだが、こう言うと機密情報のように聞こえる。
「わかりました。それであなたは魔術師団長の従者の方なのですか?」
「いや、団長本人」
顔を隠していた布をとったウィンレイ。優美な顔がそこにあった。
「ウィンレイ様! 直接来ていただけるとは光栄です。セルツァー・カリハルフィーです」
座っていたセルツァーは立ち上がりウィンレイに手を差し伸べる。
「大貴族のご子息に光栄に思われるほどの存在ではないよ。まあ、気軽に話そう」
手を握り、2人に座ることを促した。
ウィンレイという魔術師は、噂ではその才能は歴史的に見ても上位間違いなしと言われるほどの能力の高さがあるが、性格に難ありと言われている。
しかし、今のところ所作は優美で言動もしっかりしている。魔術師団長の地位でありながら気さくで、自ら赴くということに2人とも感動する。
実際に自ら動いている理由は、そうでないと気が済まないからだ。仕事は嫌いだが、やるからには完璧にしたい。地位に胡座をかく気はみじんもない。
もともと憧れてるセルツァーの視線を受けながら、ふかふかの椅子に座ったウィンレイはさっそく話を始める。
「まずは情報交換だ。といってもたいして情報は手には入っていないようだが」
「申し訳ありません」
2人は無力さと申し訳なさに顔を歪める。
「君達がそれほど気に病むことはないよ。そもそもいくら問題の人物が学校にいるからって、子供の君達に今回のことを任せるのがどうかしている」
「しかし…」
「もちろん、子供だからってしっかり行動してもらわないと困るが。それに上も今回の情報をあまり多くの人間に知られたくなかったんだろう。だから知られてもいい地位の君達に話した。大人は下手に動けないしね。俺に今回の話がやってきたのも手をこまねいてどうしていいか分からなくなってから、やっと話したんだと思うよ。俺は嫌われてるからね。できれば知られたくなかっただろう。…それはいいとして、こっちが手に入れた情報だけど、こっちがぼんやりしている間に向こうはかなり進んでいるよ。これは深刻な上、大きな事が起こるのが迫ってるってことだ」
「な!」
セルツァーは今回の魔術師団との接触は今後の連携をする為に確認ごとをする程度だと思っていたのに、すでに危険な状況だということに驚くしかない。
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