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呼ぶ人7友達
しおりを挟む「風紀委員長と仲いいですね」
「別に、腐れ縁だ。…お前こそ、今日あったばかりなのにずいぶん仲よさそうじゃないか」
「へ? 委員長とですか? 委員長がいい方なだけで…」
「そういうふうに言うのも怪しい。俺の時は警戒してたのに」
「それはだって…。…セルツァーだってクリュアと仲よさそうでした。知らなかったです」
「はあ? あいつは…。あれだ、それなりの貴族だし、ああいう性格は逃げると追ってくるもんだから、ほどよく相手してやってるだけだよ。正直、鬱陶しい」
「そうなの? 僕のことは知らない人みたいな対応だったし、僕なんて大人しい生徒だし」
「それはっ、…お前が目立たないようにと思って…。結局目立ってこんなことになったけど…」
大人しい生徒と言ったのはクリュアと違うというより、クルクに合わないと思ったゆえの言葉だった。
「それは気にしないでください。僕にも悪いところがあるんですから。でも、気遣ってくれてたんですね。ふふ…」
クリュアに連れられ食堂に行くことになった時は憂鬱な気持ちで、セルツァーがいたことで気分がよくなったのに、クリュアと仲がよさそうなことに、裏切られたような気分になって、さらに初めて会ったかのように言われてへこんだ。
考えてみればセルツァーは目立つから、2人だけの時以外は話をしないようにしていたのだ。クリュアと仲がいいことで、何故か自分は仲良くできないと思ってしまった。当然の態度だったのにへこんだ自分が馬鹿である。
「それじゃあこれからも、図書室では親しくしてください」
「当然だ。…ただ、今回のこともあるから、今後は会っても冷たい対応や、いないものとして扱うかもしれないが許してくれ」
「………はい。分かってますよ」
セルツァーの言うことはもっともだった。意図がなかったとはいえ、今回クルクが怪我をすることになったのはセルツァーとの関わりのせいではある。そうなると今後さらにセルツァーと関わりを持ってはいけない。そのことにクルクの胸は痛んだ。セルツァーは自分なんかと違う。立派な人なのだ。
大きな怪我はなかったものの、足を痛めたクルクは一週間ほど学校を休むことになった。
そして一週間ぶりに学校に行ったその日、思わぬ再会をすることになる。
教室で会ったのは、休んでいる間にやってきた一般の学部から移動してきたリンメルだ。
不機嫌さが隠れてない顔で初めましてと言ってきた。リンメルはクルクのいた孤児院で一緒に育った人だ。
初めましてという意味は、孤児院出身であるのを知られたくないからだろうとクルクは考えた。
それでも久しぶりに会うリンメルにクルクは高揚していた。声をかけたくてしかたなく、でも人前はいけないと我慢して。
授業が終わった後、教室を早く出ていったリンメルをクルクは見失わないように後を追った。
人がいない場所にきたら声をかけようとしていたのだが、リンメルの足が早くて後を追うのがやっとで、寮の部屋の中にリンメルは入ってしまった。
どうしたものか部屋の前で悩んでいれば、すぐにその扉が開く。
不機嫌そうな顔のリンメルの顔であったが、クルクは気持ちを一気に口にした。
「ちゃんと知り合いだってばれないようにするから。懐かしくて話がしたかったんだ」
孤児院では今の学校でのことよりひどい生活で、痛い思いも何度もした。だけれど、家族のいない自分にとっては家であった孤児院だ。
孤児院を運営していたおばちゃんとおじちゃんはいい人だったものの、孤児院で暮らす子には悪い道にいく子も多く、大人しいだけのつまらないクルクは邪険にされることが多かった。
同じ年齢で親しいものがいず、おばちゃんおじちゃんの手伝いをする日々だった。
そんな中、リンメルは同じ年齢で、悪い仲間に入っていたし、何度か叩かれたり貯めたお金をとられたりしたけど、暴言もそれほどひどくなくて叩いてきたのも他より弱かったし、一緒に孤児院の手伝いも少しだけどしたことがある。
どこがとはっきり言えないものの、リンメルはそんなに悪い人じゃないとクルクは信じていた。
同年代の友達のいないクルクにとって、唯一心の中で友達認定しているのが、リンメルだった。
勝手に友達にするのは駄目かなと思いつつも、ついそう思ってしまっていた。
だからリンメルが嫌がっていると分かっていても話がしたかった。
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