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呼ぶ人
呼ぶ人6同席
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特別枠の生徒であるクルクは、上位学部の貴族向けの高い食堂も無料である。
食堂に訪れればいつもより騒がかった。なぜかといえば珍しい人物が食堂を利用していたからである。
その人物をクリュアは目敏く発見する。
「セルツァー! 珍しいね」
「ああ、ハルバーか。今日は仕事が区切りよく終わったんで、たまにはな」
生徒会長セルツァーが食堂に来ていた。普段生徒会の仕事が多く、食事は部屋に運ばせることが多い。騒がしくなるのが嫌で避けているというのも大きいが。
「だから、クリュアって呼んでよ。一緒に食べていい?」
「ああ、いいけど、静かにしろよ」
「僕が騒がしいみたいじゃない? ほらクルク、こっちに座るといいよ」
セルツァーは4人がけの席に座っており、セルツァーの前には風紀委員長のグランドが座っていた。この人物も容姿がよく、能力の高さ、その高貴な考えに、人気が高い。
クリュアはクルクをグランドの隣に座らせ、自分はセルツァーの隣に座った。
「あ、クルクは僕の友達なんです。一緒でいいですよね」
「別にいいけど。…お前の友達にしては大人しそうだな」
「庶民だからって馬鹿にしちゃ駄目だよセルツァー」
「いや庶民とか知らねえし」
クリュアとセルツァーが話す中、クルクは縮こまって弁当を食べる。学校で一番目立つ人達の中にいて、視線が突き刺さっている。
「悪いな。目立って。平気か?」
「あ、は、はい。ありがとうございます」
可哀想に見えたグランドはクルクに顔を向けずに気遣う。クルクはびっくりしたが、少し気が楽になった。
人生で一番緊張した食事も終わればそれで終わりだとクルクは安堵したが、自分の立場を忘れていた。
授業が終わり、寮へと帰ろうとしたクルクを、何度か見たことのある集団が呼び止めた。今回はいつもより状況が悪そうだと漠然ながらも分かるクルクであったが、集団についていかない選択肢はなかった。
今日も人のあまり来ない校舎の隅で囲まれる。
「一体どういうこと?!」
「えと、なんのことでしょう?」
「今日、食堂でのこと! 忘れたとか言わないでしょ。この学校で人気の方々ばかりとご同席するとかどういうつもり? 自分がそれに見合う存在だとか思ってるわけ?」
「あ、それは…。別に…」
クルクはさすがに不味かったのだと気づく。つい、知り合いであるセルツァーがいたことで、一緒にいることになったが、なんとしても別になるべきだった。
「言い訳したって無駄だから! クリュア様に目をかけられてるからって調子乗りすぎ!」
「あ、わ……あ…」
いつものように突き飛ばされたクルク。しかし、今回は怒りが強いのか、いつもより力が強く、クルクは勢いよく後ろに飛ばされ、そして。
「ぼ、僕は悪くないっ!」
クルクを囲んでいた男達は慌ててその場から逃げていった。
「おい! 大丈夫か! くそっ」
「揺するな。保健室に連れていこう」
食事を終えたセルツァーは、グランドがクルクが危険なんじゃないかということを聞き、遊ぼうというクリュアと別れクルクを探した。
そして見つけた時にはクルクは生徒に囲まれており、それを咎めようとした時に、その事は起こった。
クルクは階段の下へと落ちていったのだ。幸いというか、転がるに落ちたので、大きな衝撃は受けていないだろうが、十分危険な衝撃は受けただろう。呼びかけても反応がないことから意識を失っていると分かった。
ふわりと意識が浮上すれば、すぐに聞きなれた声が聞こえる。
「起きたか。クルク。平気か?」
「へぇ? せるつあー?」
「頭打ったりしてないよな?」
「え、あれ? …いたっ」
状況のおかしさに気付いたクルクは驚き身体を起こそうとすれば、身体が痛んだ。
「動くな。何かしたいことあるなら俺に言え」
「え、あの、僕…」
「覚えてないか? 階段から落ちたんだ」
「そうなんだ…。じゃあ、セルツァーが僕をここに?」
「ああ。ちょうど落とされた時に居合わせたんだ。だが、犯人の顔は遠くて見えなかった。グランドが調べているが分からないかもしれない。すまない」
「いえっ。いいんです。誰か分かったとしても、咎めなくていいですし」
「何故だ」
「事故なんですよ。落とす気なんてなかったんです」
「しかし。いや…、お前がそういうならそうなんだろう。で、体調はどうだ?」
「あちこち痛いです…」
「だろうな、しばらく安静にしろ」
「あの、ここまでありがとうございました」
「いや…」
感謝されることに照れてそっけなく答えたセルツァー。この後どうしたものかと沈黙となったが、助けるように保健室に報告に行っていたグランドが戻ってくる。
「セルツァー。その子はどうだ?」
「ああ、意識も戻ったし、はっきり話ができてる。身体は痛そうだが、大事はないようだ」
「そうか。それはよかった。クルクだったか、俺は風紀委員長をしている。今回のことを防げなくてすまなかった。それだけでなく、これまでのこともすまない」
「いいえ。セルツァーにも言いましたが今回のことは事故なんです。そんなに気に病まないでください」
「ありがとう。…いい子だな、セルツァー」
クルクのセルツァーの名前呼びに親しいということを感じとったグランドがからかうように言う。
「うるせー。お前はもう帰れ」
「分かった。そうしよう」
邪魔しちゃ悪いからという感じでグランドは部屋を出ていく。
食堂に訪れればいつもより騒がかった。なぜかといえば珍しい人物が食堂を利用していたからである。
その人物をクリュアは目敏く発見する。
「セルツァー! 珍しいね」
「ああ、ハルバーか。今日は仕事が区切りよく終わったんで、たまにはな」
生徒会長セルツァーが食堂に来ていた。普段生徒会の仕事が多く、食事は部屋に運ばせることが多い。騒がしくなるのが嫌で避けているというのも大きいが。
「だから、クリュアって呼んでよ。一緒に食べていい?」
「ああ、いいけど、静かにしろよ」
「僕が騒がしいみたいじゃない? ほらクルク、こっちに座るといいよ」
セルツァーは4人がけの席に座っており、セルツァーの前には風紀委員長のグランドが座っていた。この人物も容姿がよく、能力の高さ、その高貴な考えに、人気が高い。
クリュアはクルクをグランドの隣に座らせ、自分はセルツァーの隣に座った。
「あ、クルクは僕の友達なんです。一緒でいいですよね」
「別にいいけど。…お前の友達にしては大人しそうだな」
「庶民だからって馬鹿にしちゃ駄目だよセルツァー」
「いや庶民とか知らねえし」
クリュアとセルツァーが話す中、クルクは縮こまって弁当を食べる。学校で一番目立つ人達の中にいて、視線が突き刺さっている。
「悪いな。目立って。平気か?」
「あ、は、はい。ありがとうございます」
可哀想に見えたグランドはクルクに顔を向けずに気遣う。クルクはびっくりしたが、少し気が楽になった。
人生で一番緊張した食事も終わればそれで終わりだとクルクは安堵したが、自分の立場を忘れていた。
授業が終わり、寮へと帰ろうとしたクルクを、何度か見たことのある集団が呼び止めた。今回はいつもより状況が悪そうだと漠然ながらも分かるクルクであったが、集団についていかない選択肢はなかった。
今日も人のあまり来ない校舎の隅で囲まれる。
「一体どういうこと?!」
「えと、なんのことでしょう?」
「今日、食堂でのこと! 忘れたとか言わないでしょ。この学校で人気の方々ばかりとご同席するとかどういうつもり? 自分がそれに見合う存在だとか思ってるわけ?」
「あ、それは…。別に…」
クルクはさすがに不味かったのだと気づく。つい、知り合いであるセルツァーがいたことで、一緒にいることになったが、なんとしても別になるべきだった。
「言い訳したって無駄だから! クリュア様に目をかけられてるからって調子乗りすぎ!」
「あ、わ……あ…」
いつものように突き飛ばされたクルク。しかし、今回は怒りが強いのか、いつもより力が強く、クルクは勢いよく後ろに飛ばされ、そして。
「ぼ、僕は悪くないっ!」
クルクを囲んでいた男達は慌ててその場から逃げていった。
「おい! 大丈夫か! くそっ」
「揺するな。保健室に連れていこう」
食事を終えたセルツァーは、グランドがクルクが危険なんじゃないかということを聞き、遊ぼうというクリュアと別れクルクを探した。
そして見つけた時にはクルクは生徒に囲まれており、それを咎めようとした時に、その事は起こった。
クルクは階段の下へと落ちていったのだ。幸いというか、転がるに落ちたので、大きな衝撃は受けていないだろうが、十分危険な衝撃は受けただろう。呼びかけても反応がないことから意識を失っていると分かった。
ふわりと意識が浮上すれば、すぐに聞きなれた声が聞こえる。
「起きたか。クルク。平気か?」
「へぇ? せるつあー?」
「頭打ったりしてないよな?」
「え、あれ? …いたっ」
状況のおかしさに気付いたクルクは驚き身体を起こそうとすれば、身体が痛んだ。
「動くな。何かしたいことあるなら俺に言え」
「え、あの、僕…」
「覚えてないか? 階段から落ちたんだ」
「そうなんだ…。じゃあ、セルツァーが僕をここに?」
「ああ。ちょうど落とされた時に居合わせたんだ。だが、犯人の顔は遠くて見えなかった。グランドが調べているが分からないかもしれない。すまない」
「いえっ。いいんです。誰か分かったとしても、咎めなくていいですし」
「何故だ」
「事故なんですよ。落とす気なんてなかったんです」
「しかし。いや…、お前がそういうならそうなんだろう。で、体調はどうだ?」
「あちこち痛いです…」
「だろうな、しばらく安静にしろ」
「あの、ここまでありがとうございました」
「いや…」
感謝されることに照れてそっけなく答えたセルツァー。この後どうしたものかと沈黙となったが、助けるように保健室に報告に行っていたグランドが戻ってくる。
「セルツァー。その子はどうだ?」
「ああ、意識も戻ったし、はっきり話ができてる。身体は痛そうだが、大事はないようだ」
「そうか。それはよかった。クルクだったか、俺は風紀委員長をしている。今回のことを防げなくてすまなかった。それだけでなく、これまでのこともすまない」
「いいえ。セルツァーにも言いましたが今回のことは事故なんです。そんなに気に病まないでください」
「ありがとう。…いい子だな、セルツァー」
クルクのセルツァーの名前呼びに親しいということを感じとったグランドがからかうように言う。
「うるせー。お前はもう帰れ」
「分かった。そうしよう」
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