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繊細な悪党
繊細な悪党12心配と騒動
しおりを挟む「なのに、心配されてるとかにほっこりするとか、俺ってば病気みたい。あのねー、おっちゃんに代わりに話をしてきてくれって言われただけだよ」
「それ、証明できんのかよ」
「うわっ、メンドっ。あー、そうだな。おっちゃんから伝言で、今危ないことしてるだろ、それが心配だから、この人に話して俺に状況を教えてくれって。…おっちゃんは仕事が見つかったけどリンメルが心配で仕事がうまくいかないそうだ」
「おっちゃん…」
心配してくれてたのか。話、ちゃんと聞いててくれたんだなあ…。胸の奥がじんわり温かくなる。
「あー、俺、やっぱりどっか病気かな? 自分自身に嫉妬してる…」
優男がぶつぶつうるさい。なんでおっちゃんはこんな奴を選んだんだ?
「納得してもらえた? 最近どうなの?」
「どうって…。別に…」
「推測だけど、そろそろ、依頼主は動くとか言ってる?」
「なんで分かる」
「…おっちゃんから話を聞いてるから推測できるんだよ」
「そうなのか? …そうなんだけどさ。なにすっかは俺は聞かされてないんだよな」
「そりゃ下っ端だからね。それで怖じ気付いた?」
「ちげえ。…ただ、あいつの顔はやばすぎんだよなー」
「嫌ならもう手を引けばいい。手配するけど」
「それはない。大金が手にはいんだぞ」
「…そんな話聞いたっけ? しょうがないな、リンメルは。おっちゃんからの伝言で、リンメルは馬鹿なのは仕方ないとして、後悔するようなことのないようにしろよって言ってる。…リンメルにはおっちゃんがいるんだから、無理なんてすることないさ」
「…おう」
優美な男ウィンレイはリンメルの頭を一撫でした。そんな子供扱いをリンメルは何故か受け入れている。
「これ、おっちゃんからのお守り! おっちゃんに心配かけたくなかったらいつも持っとくように!」
紐に安物の丸い宝石がついたお守りをリンメルに投げて渡してウィンレイはその場を離れていった。
「って! おっちゃんは馬鹿とか言わないし。そこはお前が付け加えたんだろ!」
微妙なところだけ疑った。
胡散臭いウィンレイの言葉を信じきり、おっちゃんに励まされた気でいるリンメルの気分はすっきり、お守りを棚に置いて、その日もたっぷり睡眠をとることができた。
馬鹿なのか、ウィンレイを本当のおっちゃんだと本能が感じていたからなのかは誰にも分からない。
繊細と自負するリンメルはクルクの顔が見づらくなって避けるようになる。なのでクルクの状況は全く分からないでいた。
英雄祭の前日、指示者から明日に行動を起こすと聞かされた。
せっかくなので楽しもうかと思っていたリンメルなので少し不満だったが仕方ない。
呼ぶ人は誰なのか、完全には分からないということで、クリュアとクルクの2人をさらうことになる。
リンメルは2人に近い存在であるが、当日のリンメルには別の仕事が与えられる。
リンメル以外に生徒として潜入していた者達と合流して外から侵入する男達の手引きを行う。
「お前は俺達を第1校舎に連れていけ。そっちは第2校舎、寮、職員棟へ案内しろ」
やってきた男達をそれぞれ案内する。何をするかは今だ分からない。
そうして、英雄祭で賑わうはずだった学校は突然の侵入者に大混乱となった。
「おおー、すげー」
案内した男達は武器を手に生徒達を制圧していく。無力な生徒はなすすべなく従うしかなかった。それぞれの場所で生徒達は集められていく。
「おい、お前はこの中央の周辺の見張りな」
「ういっす」
第1校舎の中央玄関はかなり広く、そこで催しもされる予定だったのを撤去して、学校の制圧後にやってきた胡散臭い神官服の連中が何かの準備を始めている。雰囲気から、儀式のようだと感じられる。
リンメルからすると興味はない。
その儀式を行うだろう中央玄関広場は締め切られ、中が分からないようになり、外にいるリンメルは邪魔が入らないように周囲を見張るように言われた。
指示された辺りをリンメルはやる気なさそうに歩く。
生徒や教師はどこかに集められているので静かだ。
これから起ころうとしている出来事なんて欠片も知らず。知ろうともせず。
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