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バルファ旅行記すりー前編
すりー前編24
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なんだか楽しく情報収集の日々になった。
取引前日になってやっと緊張が出てくる。
「今さらだが、君達みたいな若くていい子にこんな危険なことさせたくないが、そういう仕事なら俺達が何言っても調査はするんだろう。しかし、けっしてむちゃなことはするなよ?」
いつもと変わらない夕食後に、ワイヤさんが真剣な顔で言う。きっと一緒にいることで少しは情を感じてくれたのかもしれない。
…いかん。シリアスな状況なのに、にやけそう。
「分かってます。1人でやることでもないので危険なことはしません」
誠那はちゃんと真面目に答えた。俺もちゃんときりっとせねば。
「ふふ、そうねー。1人じゃないものね?」
……? ミュリシャさんの言葉は何か含みがあるように聞こえるのは、気のせいだろうか?
あ! 駆け落ちとか思われてた。それは誤解だったと気づいてもらったけど、つまりはそういうことか。男同士への偏見とかバルファ常識を聞くのに夢中で否定してなかった。
「ミュリシャさん。俺達、別に付き合ってないですよ?」
「ええ?! 本当に? すごく仲睦まじい雰囲気を醸し出してるのにっ」
やっぱり…、誤解されたままだったか。ワイヤさんまで驚いて誠那に聞いてるし。
「本当なのか?」
「はい。少しもそんな関係ではないですね。ただ、昔からの知り合いなんで、それで気兼ねのなさがそんなふうに見えるのかもしれません」
「雰囲気が甘いんだが…、あ! そうか、これからか!」
「ワイヤ! それは教えちゃ駄目」
「ああ、そうだな。当人達の問題だ」
えーと、夫婦の会話はよく分からなかったが、教える気はなく、かつ自分達で考えなければならないと。
なにを?とは思うが、まあ、今は重要なことでもないだろう。
そうして次の日。
その日は夫婦はごく普通に接してくれた。周りに悟らせないのもあるが、自分達を緊張させない為だろう。本当に素晴らしい夫婦だな。
普段は仕事場でお昼を食べているワイヤさんだが、今日はわざわざ帰ってきた。目立つ行動ではあるが、心配してのことなので心がほっこりする。
「これまで直感で君達に協力してきたんだが、君達はそれなりに強いのか?」
どうなんだろう? 比較対象が少なすぎる。なので俺は誠那のほうを見た。
「そこそこには。まだ細かいことは上手くないのですが、よほどの相手でなければ負ける気はしないですよ」
それ充分強くない?
俺の予想は、誠那はむっちゃ強い。となってはいるが。
「すごい自信だ。君が自分の力量を間違えるとは思えないしね。それなら一安心だよ」
お昼を食べ終わればワイヤさんは仕事に戻る。
そして取引であるが、ちょうど昼すぎに行われるのだ。つまりこれから。
「それじゃあ、いってらっしゃい」
「「いってきます」」
見送られて出かけるって気分がいいな。
俺達はあの大きなテントまでやってきた。
中の取引を見させてもらう方法は簡単。合い言葉的な言葉と金目の物を預けること。ちゃんと後で返してくれるらしい。とても信用できないが、大抵宝飾品を預けるのだと言う。しかし、誠那の持っていた物は高価すぎると言われた。それだと誰かが目が眩んで盗むか分からない。とのことなので、ワイヤさんの見立てで宝飾品を買った。
品物の価値が分かってきた俺からするとおもちゃのような値段じゃないかと思うが、夫婦に呆れられてショックだった。どうやら、根本的価値観が違うようだ。
たしかにあの学園にいては一般人の感覚とは違うだろうと思っていたが、違ってもなんら問題ないと思って生きてきた。ここにきて大問題だと気づく。ちなみに誠那はまだマシな感覚だと夫婦は言う。何故なら宿の代金交渉のことから判断できたらしい。
ただ、誠那も使い方がやっぱりお金持ちだと言っていた。…俺にはどこがどうお金持ちっぽいのか、さっぱり分からないが。
とにかく誠那の持っていた宝飾品は普通じゃないほどの高価な品というわけで、買ったのはおもちゃでなく、一般女性が一つは持っていたいと思うほどの品なんだとか。
とても勉強になった。やはり現地の人と交流することは素晴らしい。
そんな回想をしていられるくらい入るのは簡単だ。一応、身体検査があるが、簡易のもので魔法具なんかは隠しておけば大丈夫とのこと。
それでも心配ではあるので、なるべく上手く隠している。
テントの入り口では前に訪れた時と違い、多くの人がいた。あきらかに地元の人でない者が多い。まあそうだろう。
受付に並び、俺達の番になると預ける用の宝飾品を受付に渡し、何事か書いた紙を渡してきて受け取った誠那が頷いた。
実は俺も魔法で文章も読もうと思えば読めるんだけど、今は自分で覚えたいということで、あえて分からない状態にしているのでよくわからない。必要ならすぐに魔法発動するけど。あ、俺が魔法使うんじゃなくて、そういう魔法がかかってるだけだから。
それからさらに奥に進むと厳つい荒くれっぽい男がいた。
近づくと身体検査として身体を触ってくる。妙に手つきが怪しかったのは気のせいではないと分かった。だけれど魔法具の1つも見つけられることなく無事に検査終了して奥へと進む。
取引前日になってやっと緊張が出てくる。
「今さらだが、君達みたいな若くていい子にこんな危険なことさせたくないが、そういう仕事なら俺達が何言っても調査はするんだろう。しかし、けっしてむちゃなことはするなよ?」
いつもと変わらない夕食後に、ワイヤさんが真剣な顔で言う。きっと一緒にいることで少しは情を感じてくれたのかもしれない。
…いかん。シリアスな状況なのに、にやけそう。
「分かってます。1人でやることでもないので危険なことはしません」
誠那はちゃんと真面目に答えた。俺もちゃんときりっとせねば。
「ふふ、そうねー。1人じゃないものね?」
……? ミュリシャさんの言葉は何か含みがあるように聞こえるのは、気のせいだろうか?
あ! 駆け落ちとか思われてた。それは誤解だったと気づいてもらったけど、つまりはそういうことか。男同士への偏見とかバルファ常識を聞くのに夢中で否定してなかった。
「ミュリシャさん。俺達、別に付き合ってないですよ?」
「ええ?! 本当に? すごく仲睦まじい雰囲気を醸し出してるのにっ」
やっぱり…、誤解されたままだったか。ワイヤさんまで驚いて誠那に聞いてるし。
「本当なのか?」
「はい。少しもそんな関係ではないですね。ただ、昔からの知り合いなんで、それで気兼ねのなさがそんなふうに見えるのかもしれません」
「雰囲気が甘いんだが…、あ! そうか、これからか!」
「ワイヤ! それは教えちゃ駄目」
「ああ、そうだな。当人達の問題だ」
えーと、夫婦の会話はよく分からなかったが、教える気はなく、かつ自分達で考えなければならないと。
なにを?とは思うが、まあ、今は重要なことでもないだろう。
そうして次の日。
その日は夫婦はごく普通に接してくれた。周りに悟らせないのもあるが、自分達を緊張させない為だろう。本当に素晴らしい夫婦だな。
普段は仕事場でお昼を食べているワイヤさんだが、今日はわざわざ帰ってきた。目立つ行動ではあるが、心配してのことなので心がほっこりする。
「これまで直感で君達に協力してきたんだが、君達はそれなりに強いのか?」
どうなんだろう? 比較対象が少なすぎる。なので俺は誠那のほうを見た。
「そこそこには。まだ細かいことは上手くないのですが、よほどの相手でなければ負ける気はしないですよ」
それ充分強くない?
俺の予想は、誠那はむっちゃ強い。となってはいるが。
「すごい自信だ。君が自分の力量を間違えるとは思えないしね。それなら一安心だよ」
お昼を食べ終わればワイヤさんは仕事に戻る。
そして取引であるが、ちょうど昼すぎに行われるのだ。つまりこれから。
「それじゃあ、いってらっしゃい」
「「いってきます」」
見送られて出かけるって気分がいいな。
俺達はあの大きなテントまでやってきた。
中の取引を見させてもらう方法は簡単。合い言葉的な言葉と金目の物を預けること。ちゃんと後で返してくれるらしい。とても信用できないが、大抵宝飾品を預けるのだと言う。しかし、誠那の持っていた物は高価すぎると言われた。それだと誰かが目が眩んで盗むか分からない。とのことなので、ワイヤさんの見立てで宝飾品を買った。
品物の価値が分かってきた俺からするとおもちゃのような値段じゃないかと思うが、夫婦に呆れられてショックだった。どうやら、根本的価値観が違うようだ。
たしかにあの学園にいては一般人の感覚とは違うだろうと思っていたが、違ってもなんら問題ないと思って生きてきた。ここにきて大問題だと気づく。ちなみに誠那はまだマシな感覚だと夫婦は言う。何故なら宿の代金交渉のことから判断できたらしい。
ただ、誠那も使い方がやっぱりお金持ちだと言っていた。…俺にはどこがどうお金持ちっぽいのか、さっぱり分からないが。
とにかく誠那の持っていた宝飾品は普通じゃないほどの高価な品というわけで、買ったのはおもちゃでなく、一般女性が一つは持っていたいと思うほどの品なんだとか。
とても勉強になった。やはり現地の人と交流することは素晴らしい。
そんな回想をしていられるくらい入るのは簡単だ。一応、身体検査があるが、簡易のもので魔法具なんかは隠しておけば大丈夫とのこと。
それでも心配ではあるので、なるべく上手く隠している。
テントの入り口では前に訪れた時と違い、多くの人がいた。あきらかに地元の人でない者が多い。まあそうだろう。
受付に並び、俺達の番になると預ける用の宝飾品を受付に渡し、何事か書いた紙を渡してきて受け取った誠那が頷いた。
実は俺も魔法で文章も読もうと思えば読めるんだけど、今は自分で覚えたいということで、あえて分からない状態にしているのでよくわからない。必要ならすぐに魔法発動するけど。あ、俺が魔法使うんじゃなくて、そういう魔法がかかってるだけだから。
それからさらに奥に進むと厳つい荒くれっぽい男がいた。
近づくと身体検査として身体を触ってくる。妙に手つきが怪しかったのは気のせいではないと分かった。だけれど魔法具の1つも見つけられることなく無事に検査終了して奥へと進む。
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