46 / 49
バルファ旅行記すりー前編
すりー前編23
しおりを挟む「…さっき辛そうな顔してた。幻獣に思い入れがあるのね。この街は資源が少なくて、巡礼の道からも少しはずれているから、旅人からもそんなに収入が得られなくて…」
「あー…」
うわー、そんな顔してたか。スパイみたく表情をコントロールすべも教えてもらわないとな。
「その、知ってる。いい事じゃないが、怖い人に逆らえないってのもあるんだろ?」
それの怖さはかなりのものだろう。ましてここは守ってくれるはずの国の人達がそもそもあまり来ないのだ。少しは警備兵がいるらしいが、そんなの金をもらってるに決まってるし。
「…賢い子ね。そんなの間違ってるって言っていいのよ。本当だもの。ワイヤはなんとかしたいと思ってるんだけどね」
「…それは止めたほうが…」
「いいのよ。人はそうして考えていないと、いつか何かあった時すぐに動けないでしょ」
この2人だったら無闇に危ないことはしないだろうか。それでもいつか、協力できることがあれば、するつもりってことか。
「なら今、動いてくれるだろうか?」
考えもせず、口にしてしまった。本当ならちゃんとは信用できるのかとか、危ないとか、考えないといけないのに、頭でなく大丈夫だと感じてしまった。
「いいわよ」
あっさりと答えたミュリシャさん。きっと俺と同じく感じとったんだろう。その笑みが頼もしく見えた。
誠那が帰ってきてから喋ったことを言い、さらに協力を願ったことを言う。
溜息を吐かれた。うう…。すまん。
「しょうがないな。夫婦に危険なことはさせたくないが、お前優先だよ」
「セイナ…!」
女が喜びそうなセリフだな。さすがだ。
「情報を話すくらいなら、たいして危険ではないだろうし、事情を話したほうが情報は得られやすいだろう」
「それで俺から話しをしておきながら、なんだが、あまりお国事情が分からないから…」
確か、この国と俺達の本拠地のある国の仲は至って良好だったとは思うが。
「ああ。うまく話そう」
ワイヤさんが帰ってきて、夕食の後に話すことになった。
「なるほど。犯罪者を取り締まる訓練中なのか。なんとなく納得。きっと幹部候補生なんだね。それで、偶然、ここの取引の情報を知り、まずは調査してみようってことだ」
「ええ。ただ、その後どうなるかは分かりません。勿論、報告はしますし、こちらの国とこの国は協定もあるので国が動く可能性は高いです」
「そりゃいい。一度だけ取り締まったところで、完全に消えるとは思えないが、たまには取り締まれられるべきだ」
ワイヤさんの言葉に俺も頷く。
「今回は偶然なので、どこまで調査すべきかまだ不確定なんですが、どうしても様子だけは見たく。そちらの危険になるような情報まではいいので、取引の情報を教えていただけませんか」
「情報くらいそんなに危険でもない。というか、黒幕とかはまださっぱり知らないんだ。偉そうにしている小太りの男はいるんだが、どう見ても下っ端に見える。それにどこから幻獣を仕入れてくるのかも分からない。もうすぐ取引があるんだから、すでにこの街に幻獣はいるはずなんだが、その場所もまったく。だから気にすることはないよ。そっちも無理する気がないなら堂々と入ればいい。警備とかそういうのまで調査する気はないんだろ?」
おお、調べているだけあって話しが早い。
「堂々と、というのは?」
そういえばなんだ?
「単純に、取引の客として入るってことだ」
「そういえば街のおばちゃんが見るだけだ、みたいなこと言ってたけど、そんなに簡単に?」
「それだけ今まで取り締まりがなかったってことさ。それでも一応決まりはある。入る為の方法みたいなものか。それを教えよう」
「ありがとうございます!」
誠那がびしりと頭を下げたので俺も遅れて下げた。ワイヤさんは笑って俺達の仲だろ?と言う。か、かっこいい夫婦だ。
それからワイヤさんの調べた限りを全部教えてくれた。ミュリシャさんもあそこに取引に関係している人が滞在しているとか、買い物中に教えてくる。俺は慌てたが、俺が取引を調べにきた人だなんて誰も思わないから大丈夫だと言う。
どういうことかと思うが、それなら取引に行く人には見えるのかと言えば、ばっちりだと言った。その根拠は分からないが地元の人がそう言うのだから、そうなんだろう。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説


囚われた元王は逃げ出せない
スノウ
BL
異世界からひょっこり召喚されてまさか国王!?でも人柄が良く周りに助けられながら10年もの間、国王に準じていた
そうあの日までは
忠誠を誓ったはずの仲間に王位を剥奪され次々と手篭めに
なんで俺にこんな事を
「国王でないならもう俺のものだ」
「僕をあなたの側にずっといさせて」
「君のいない人生は生きられない」
「私の国の王妃にならないか」
いやいや、みんな何いってんの?
天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します
バナナ男さん
BL
享年59歳、ハッピーエンドで人生の幕を閉じた大樹は、生前の善行から神様の幹部候補に選ばれたがそれを断りあの世に行く事を望んだ。
しかし自分の人生を変えてくれた「アルバード英雄記」がこれから起こる未来を綴った予言書であった事を知り、その本の主人公である呪われた英雄<レオンハルト>を助けたいと望むも、運命を変えることはできないときっぱり告げられてしまう。
しかしそれでも自分なりのハッピーエンドを目指すと誓い転生───しかし平凡の代名詞である大樹が転生したのは平凡な平民ではなく……?
少年マンガとBLの半々の作品が読みたくてコツコツ書いていたら物凄い量になってしまったため投稿してみることにしました。
(後に)美形の英雄 ✕ (中身おじいちゃん)平凡、攻ヤンデレ注意です。
文章を書くことに関して素人ですので、変な言い回しや文章はソッと目を滑らして頂けると幸いです。
また歴史的な知識や出てくる施設などの設定も作者の無知ゆえの全てファンタジーのものだと思って下さい。

傷だらけの僕は空をみる
猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。
生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。
諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。
身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。
ハッピーエンドです。
若干の胸くそが出てきます。
ちょっと痛い表現出てくるかもです。
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿
その男、有能につき……
大和撫子
BL
俺はその日最高に落ち込んでいた。このまま死んで異世界に転生。チート能力を手に入れて最高にリア充な人生を……なんてことが現実に起こる筈もなく。奇しくもその日は俺の二十歳の誕生日だった。初めて飲む酒はヤケ酒で。簡単に酒に呑まれちまった俺はフラフラと渋谷の繁華街を彷徨い歩いた。ふと気づいたら、全く知らない路地(?)に立っていたんだ。そうだな、辺りの建物や雰囲気でいったら……ビクトリア調時代風? て、まさかなぁ。俺、さっきいつもの道を歩いていた筈だよな? どこだよ、ここ。酔いつぶれて寝ちまったのか?
「君、どうかしたのかい?」
その時、背後にフルートみたいに澄んだ柔らかい声が響いた。突然、そう話しかけてくる声に振り向いた。そこにいたのは……。
黄金の髪、真珠の肌、ピンクサファイアの唇、そして光の加減によって深紅からロイヤルブルーに変化する瞳を持った、まるで全身が宝石で出来ているような超絶美形男子だった。えーと、確か電気の光と太陽光で色が変わって見える宝石、あったような……。後で聞いたら、そんな風に光によって赤から青に変化する宝石は『ベキリーブルーガーネット』と言うらしい。何でも、翠から赤に変化するアレキサンドライトよりも非常に希少な代物だそうだ。
彼は|Radius《ラディウス》~ラテン語で「光源」の意味を持つ、|Eternal《エターナル》王家の次男らしい。何だか分からない内に彼に気に入られた俺は、エターナル王家第二王子の専属侍従として仕える事になっちまったんだ! しかもゆくゆくは執事になって欲しいんだとか。
だけど彼は第二王子。専属についている秘書を始め護衛役や美容師、マッサージ師などなど。数多く王子と密に接する男たちは沢山いる。そんな訳で、まずは見習いから、と彼らの指導のもと、仕事を覚えていく訳だけど……。皆、王子の寵愛を独占しようと日々蹴落としあって熾烈な争いは日常茶飯事だった。そんな中、得体の知れない俺が王子直々で専属侍従にする、なんていうもんだから、そいつらから様々な嫌がらせを受けたりするようになっちまって。それは日増しにエスカレートしていく。
大丈夫か? こんな「ムササビの五能」な俺……果たしてこのまま皇子の寵愛を受け続ける事が出来るんだろうか?
更には、第一王子も登場。まるで第二王子に対抗するかのように俺を引き抜こうとしてみたり、波乱の予感しかしない。どうなる? 俺?!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる