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バルファ旅行記すりー前編
すりー前編15
しおりを挟む「そう。落ち込むな。あれだけラルクスが懐く奴だし、幻獣に好かれやすいタイプなんだろうな。俺はちゃんと幻獣は自然とか大地とかバルファにとってはすげー重要な存在だって分かってるからな」
幻獣は精霊よりの獣だ。なので、その存在が少なくなるのは精霊が少なくなるのと同じことになる。つまりは自然のバランスが悪くなる。獣と違って異常に増えることはないが、それは簡単に増えないということでもある。
俺としては、そんな理由なしにでも大事にしてほしいものだが、それじゃあ緒深に言ったのとは違ってくる。やっぱり同種がないがしろにされるのは嫌なようだ。
緒深を連れてこなくて正解だったな。いずれは知ることでもあるが。
「そういうことで、調べなくても簡単に取引の話が耳に入ってくる。少し調べれば簡単にいつ取引があるかも分かるだろう」
「そうか…。助かった…。いつか、借りは返そう」
「おいおい。そんな顔色で大丈夫か? というか、偶然知ったことのようだが、まさか、2人だけでその現場に乗り込んだりしないだろうな?」
「こういった場合の対応の仕方も習っている」
「そうか…。俺が言っても説得力ないが、こういうとき、感情を抑えるなんて難しいが、抑えたほうがいい結果になると思えば少しは落ち着くぞ」
「わかった。アドバイスありがとうな」
「おう。また情報とか関係なくメシ一緒に食おうぜ」
「ああ…」
俺は席をたち店を出る。はやしたてる男達がいたが、今は睨む気にもならない。
問題への対応は習っているが、それはあの国での範囲までだ。他国で起きた場合なんて、まだマニュアルができてるわけもない。
どう判断をすべきか悩みつつ取引の情報を探しにまずは道具屋へと向かった。
道具屋で話を聞き、さらに情報を手に入れようと思案していたら守りの魔法具が緒深の危険を知らせた。
緒深が危ないと思うと、自分で対処できるだろうと1人で送り出したくせに、身が強ばった。
守りの魔法具が知らせる緒深の場所に向かって走った。
あきらかによろしくない狭い路地を走る。
「オミ…!」
もうすぐと感じて建物の角を曲がるとその姿があった。
「…おう。へー、魔法具で場所とかも分かるんだな」
悠然と立つ美しい姿がそこにあった。危険な存在でもいいと思わせるほどに美しい。
変わりない姿に、俺も落ち着きを取り戻せた。聞いたばかりのアドバイスを忘れてたな。
「そうでないと守れないだろ? 本来はオミのような自分でなんとかできる人間に持たせるものじゃないしな」
ちょうど終わったところらしく、緒深を狙ったのだろう男達が逃げようとしていた。気を失った仲間を引きずっている。
「魔法具で相手が近づく気配がよく分かって助かったけどな。…つわものになると自分で気配が分かるからいらないのか?」
「…あまり関係ないとはいえるな。それより、見事に自分で対処したようだな」
圧勝したのだろうことは想像できる。実際に目にしたかったものだな。
「…いや、少し、やりすぎたと反省しているところだ。悪人だから加減なんていらないと思ったが、相手が弱いのにやりすぎたらこっちが悪者にみえるよな」
目をそらし、しょんぼりしている。そんな緒深も可愛いな。
「…オミを狙った奴なんて潰れてしまえばいい。気にするな。ま、力のコントロールはできたほうがいいな。自分自身を痛めることにもなる」
「セイナは友達がやられるとすごく怒るタイプだったのか? まあ、コントロールはやっぱ必要かー。苦手だー」
「じっくりやればいい。ほら、もう十分散策はできただろう? 宿に戻ろう」
「…おー」
十分でなさそうな顔だが、文句はないようなので宿へと戻るとしよう。
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