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バルファ旅行記すりー前編
すりー前編5
しおりを挟む「なので、まずはこの森を早く抜けよう」
「そうだな」
「そういえば、こんな分かりやすい精霊がいるが、もう少し交流したいとかはないのか?」
俺のバルファ愛を知る誠那には、俺が素晴らしい精霊の前で落ち着いているのが信じられないのだろう。
「セイナが来る前に話はしていた。ただ…、カメラの画面に写らなかったのは残念だが」
せっかく許可もらったのにな。頭をうなだれさせる。するとその頭を撫でられた。
「セイナ?」
「それなら方法があるから、そんなに落ち込むな」
「ある、のか?」
「カメラを構えてみろ」
言われた通りにカメラをウィリムさんに向けてみる。画面には写ってないけど。
そうすると誠那が後ろから手を伸ばしてカメラに触れる。すると精霊がくっきり!
透けてはいるけど、怖いものというよりはうまい合成のようにはっきりしている。
「ええ! どうやったんだ?」
「俺の感覚を写しているような感じだな。後で精霊も写りやすいように魔法具にしよう」
「えええ。できる男すぎる! ありがたいけど、なんで出来るんだ?」
会話中もしっかりウィリムさんを連写し動画もちゃっかり撮影している。ちゃんとモバイルバッテリーも持ってきてるので大丈夫だ。俺の目では見えてない小さな精霊らしきものも写ってるぞ。
「両方の世界を知ってるからだろう。機械を力を使って動かせないかとか思って小さい頃はよく壊したもんだ」
懐かしい思い出を語ってるという顔の誠那。真面目なだけでなくやんちゃなとこもあったんだな。
ずっと後の話で、この精霊も写るカメラは貴重な魔法具認定されることになる。ちょっと恥ずかしい魔法具名がつくのだ。
「それじゃあ、ひとまずこの森を出るまでは俺がオミを運ぼう」
どうやって?と聞く前に誠那がラルクス姿になった。つまりその背に乗れと。
「え。普通のラルクスより大きいけど俺を乗せるのはきつくないか? 重いぞ」
身長はそこそこあるし、筋肉もそこそこついてるぞ。
「問題ない。魔力を使って飛ぶんだからな」
目の前にスタンバイしたが、犬に乗るようで動物虐待みたいじゃないか。
それでもそうするしかないのだから、恐る恐る跨ってみる。絵面変じゃないか?
「うおっ?!」
どうなるんだと微妙な心境になっていたら突然身体が浮いた。
ラルクスに持ち上げられたというより、浮遊魔法でもかけられたかのようだ。
魔力を使うってこういうことか。そういやラルクスって普通のでも魔力があるって言ってたし、身体のわりに羽は小さいうえ、あまり羽ばたいていないから、飛ぶのは魔力を使ってるってことか。
「しっかり掴まっとけよ」
「そう言われても掴まるとこない」
「羽でいい。使わないから」
痛くないかと思うが掴んでみる。
「ではなウィリム。世話になった」
『よければまた来てほしい。片割れ殿と一緒に』
「ああ」
誠那の片割れって、俺か?
片割れ=相棒=親友ってことか。そうだな。もうその域まできてるよな。
「必ず来る。その時はまた話を聞かせてほしいな」
「それは楽しみだ」
俺が挨拶をすませばすぐに移動が開始される。なかなかのスピードであるが、きっと気を使って移動しているだろう。親友だから。
いい言葉だ。親友。よもや俺にできるとは思わなかった。
1時間ほどして休憩して、さらに1時間後に森を抜けた。
ついたのは平原で、道がある。
あまり人が通ってないようだ。草が好き放題して道らしさが消えかけているが、人が作った痕跡を感じる。
「これからどうするんだ。ってずいぶん疲れたようだな」
誠那は人型に戻って座り込み、息を荒くしている。そういや全力疾走と同じとか言ってたっけ。
休憩した時は平気そうだったが、俺が気にしないように我慢していたんだろう。そういう奴なんだろう。
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