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バルファ旅行記すりー前編
すりー前編4
しおりを挟む『シャシンとは?』
「見たままそっくりを紙に写すということですよ」
こういう説明でわかるだろうか。デジタルだと紙いらないが。
『見たままの絵ということか。面白い。そなたが持つだけなら構わぬよ』
「はい! 大事な宝物にします」
すでに取り出していたカメラを構える。カメラは誠那の力で許可が出たんだ。細かい条件とかまったくなく許可がおりたなんてちょっと怖いくらいだ。
「…あれ?」
『どうした?』
「写らない…」
画面には大きな木と自然が写ってるだけでウィルムさんは写ってない。
『よく分からぬが、水や鏡に姿がうつらないといったところか? これでもオミに見えるようにしているのだがな』
「うう…。これもよくある話か…。しかたない。気を取り直して質問いいですか?」
『うむ』
写真が撮れなかったのはとても悲しかったが、ウィルムさん情報が聞けたのですぐに幸せになった。年齢は二千歳とか精霊の能力とかを教えてもらえた。帰ったら研究資料として文章にせねば!
『ああ、迎えが来たようだ』
「おお」
気配とかで分かるのか?
俺はどうやってやってくるのかわくわくして周囲を見ていれば、すごい勢いで飛んできたラルクス。
迫力はさすが幻獣!って感じだな。
「オミ! 無事か?!」
俺の目の前に来たラルクスは、もやりと人型になった。つまりは誠那だ。必死になって探してくれたのが表情でよく分かる。心配かけて申し訳ない。ゆるい顔で精霊とお喋りしててスマン。
「ああ。この精霊のウィルムさんのおかげだ」
「そうか。よかった。ウィルム、助かる」
『いいえ。偶然のこと。次代の幻獣の王の役に立てたのは光栄なほど』
なんかウィルムさんが気になる単語を言ったか?
それだと誠那の態度が少し偉そうなのも納得なんだが。
「どういうことだ。話してくれてないなんて酷いぞ」
「違うんだ。そんなこと決まってない」
『しかし、私もあなたがなると思う』
「やめてくれ…」
「つまり候補、か?」
「そんなこともない」
『確かに正式に決まってはいないが、選定の者達は概ね決めていると知っているであろう?』
ウィリムさん動けないのに事情通ですね。
「俺はそんな気はない」
『拒否できるのかは知らぬが、上が決めることよ。それに私だけでなく、そなたが王になると考えている者は多くいる。だからこそ今回狙われたのではないか?』
「それは…。やはりオミは俺の事情に巻き込まれたのか。悪い」
苦虫を噛み潰したような顔って感じになった後、申し訳なさそうな顔になった誠那。
「こんなハプニングくらいむしろ来いだ。こうして無事なんだし気にするな」
言葉だけでは足らないだろうと誠那の身体をばしばし叩いた。
「…そうしよう。それはそれとして、問題はある」
「ん?」
「オミを送ってすぐ、魔法陣に細工がされてるのが分かったんで、オミが連れてかれただろう場所を特定して、その地点に近くてすぐに転移可能なところに転移したんだ。その後は、こうして魔力の跡を辿りながら探した」
「大変だったな。それで?」
「帰る方法がな。急遽の転移魔法は行きのみのもので、俺は転移魔法を使えないから、ここから帰るには地道に帰るしかない」
「ちなみにさっきラルクス姿でぶっとんできたが、それでセイナだけでも帰ることはできないか?」
「あれは、全力疾走してたようなものだからな。それで元の場所まではな」
「そうか。そんなに遠くに来たか?」
「国が違う」
「は? マジか。それじゃあ、地道に帰るなんて何ヶ月かかるんだ」
「それなら大丈夫だ。ツテの転移魔法陣を使えばいい。少し遠いが、行けない距離じゃない」
「ツテ! どんなだ?!」
幻獣のツテってことはそういうことじゃないのか!
鼻息も荒くなるだろ。
「それは、お楽しみでな?」
「ハードル上げて大丈夫か?」
「………おそらく。いや、期待はするな」
「わかってる」
がっかりして怒ったりしないぞ。まあバルファならたいてい楽しめる気がする。
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