バルファ旅行記

はるば草花

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バルファ旅行記すりー前編

すりー前編3

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まあ、とにかく下手に動かないのが常套だな。魔法の世界だし、すぐに俺がいないことに気づいてなんとかしてくれるだろう。

どれだけの日数がかかるかは分からないから、水と食料の確保の為に軽く探索はするか。今回は非常用に向こうの世界から持ってきた栄養たっぷりチョコレートがあるから、そこまで焦ることもないが。


『…もし、そこの方…』


まずはこの場所に戻ってこられるように、分かりやすい目印を作るか。ほどよい高さの木があるので、そこにシートをかぶせよう。


『聞こえぬかの?』

「うお?! なんか聞こえた!」

『ああ、よかった』


人なんていないと思いこんでいたので突然の声にビビった。


「ええと、あなたは…」

『驚かせて申し訳ない人の子よ』


全国のバルファふぁんの皆さん聞きましたか?

人を人の子なんてわざわざ言うなんてその人?は人じゃないってことですよね。

そうです。俺の目の前にいる存在はふわふわ浮いて透けてる人です。ホラーではないと思います。


「どういうお方なのか教えていただけないでしょうか。俺は人間でオミです」

『そうか。オミ、私は精霊というものよ』

「もしや木の精霊でしょうか」


すぐ近くに大きな木があって、根本とか寝転んで寝られそうとか思っていたんだが、その木の側で精霊さんはふわふわ浮いているんだよ。


『その通りだ。理解が早くて助かるよ』

「話かけてくれたのは友好的な意味ですか?」

『そうよの』

「では! いくつか質問があるのですがいいですか?! 見た感じ透けてはいても人と変わらない姿なのは、それは力が強いからでしょうか。それと、年齢はけっこういってるんですか。好きな食べ物とかありますか?」


精霊さんは性別はいまいち分からないがなんとなく男っぽくて、期待を裏切らない美しく儚い姿をしている。
足が地面についてなくて高い位置に浮いてるからか、衣がひらひらゆったりしていて、色合いは全体が透けてるのではっきりと分からないが、落ち着いた色ではなかろうか。


『………少し待ってくれぬか?』

「はっ! 俺の馬鹿! なにマナーの悪いファンみたいになってんだ! こういうのはひっそり見守るのが鉄則だろ! なに声かけられたくらいで調子乗ってんだ。童貞か!」


やってしまった。俺だったらそんなやつ冷めた目で見るぞ。


『ふっ。見た目と違って元気な子よ。できる限り答えてやりたいが、まずは大事な話をしよう』

「…はい。よろしくお願いします」


変な奴とは思われなかったけれど諭すような言葉から子供認定されたようだ。頬が赤くなる。雰囲気からもやっぱり長く存在している精霊だろう。


『…では少し大事な話だ。そなたがここに来た理由は、私が引き寄せた』

「あなたが?」

『うむ。不快な方法で強制的に連れてかれそうになっていたのでな』

「え、それってつまり誘拐でもされかけたんですか?」

『そういうことだろうな』

「でもなんで俺を誘拐?」


ここの世界では知り合いすら少ない。恨みは多少買ってるかもしれないが、俺だけってのも不思議だしな。手がこんだやり方から余程の理由があるはずだ。


『覚えがないのなら相手を間違えたのだろうよ』

「それなら納得できるな。もし間違いだと誘拐犯が知ったなら、俺はかなりやばかったわけか…。ありがとうございます。えっと精霊さん?」

『ウィルムという。礼には及ばぬよ。偶然近くで気づいたゆえのこと』

「いえ。ウィルムさんは命の恩人です。なにか俺にできることがあれば言ってください」


精霊の好むものってなんだろ。なにかの手伝いとかできなさそうだし、後で誠那に聞くか。


『ふふ、なら迎えが来るまで話し相手にでもなってもらおうか。世界のことは仲間から聞きもするが、なにせこのように他のところに行けぬ身ゆえ、会話には飢えておる』

「はい! 喜んで。それではさっそく………。ウィルムさんは世界のどんな情報を好むんですか?」


いかんいかん。また暴走しそうになった。恩人への恩返しなんだ。親の会社の取引相手への対応のように丁寧に。


『ふふふ。子供が大人ぶることもない。もう好きに聞いてかまわぬ』

「では! まずは写真よろしいですか?」


切り替え早っというのは自分でも分かってる。そしてさらに図々しい要望するなんてこずるいが許してくれっ。
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