バルファ旅行記

はるば草花

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バルファ旅行記つー

つー6

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「感無量…」

「会長。それ、今日何度め?気持ちは分かるけど…」


中は広くて、長い柱があったり、崩れてよく分からない彫刻があったりと、ありふれた遺跡って感じだが、寂れ具合なんかはいい感じだ。


「とくに豪華でもないだろ?」


ルーバルトは理解できないようだ。現地人はそうだろう。


「こういう造りの神殿は、バルファでは多いからな」


誠那が冷静に解説してくれた。なるほど。見た目が似た神殿が他にもあるんだな。


「この先に進みますよ」


シャルハも当然見慣れているのか、感慨にふけることなくさくさく奥へと進んでいく。

通路はなかなか長く、わくわくする。
屋根や壁はあったりなかったり。たまに転がってる石のオブジェや壷を見つけては近づき探ってみるが、何もない。まあ、それが普通か。


「宝なんてありはしないぞ?とっくに誰かが持っていってる」

「それはそうなんだろうが、ロマンを見させてくれ…」


到着したのは、小さい6畳間ほどの場所にやってきた。でかい男5人には少し窮屈だ。奥には石でできた何かを置く為の台があり、壁には彫刻がある。


「ここは奥の祈りの間ですよ」


またもシャルハが解説してくれた。最初の広間が一般人が祈りを捧げる場所で、ここは神殿に仕えていた神官が祈りを捧げる間なのだとか。

説明終えたシャルハは懐から取り出した白い石を台の上に乗せ、祈り始めた。


「おい、俺達も祈ったほうがいいのか?」


小さな声でルーバルトに聞いてみる。


「別にしなくてもいい。俺もそこまで興味ないしな」

「いいのか、それで。じゃあ、長くなりそうだし、探検してていいか?」


あの状態は長くなると分かる。


「んー、まあ、セイナもいるし、いいぞ。俺はシャルハが拗ねないように側から離れられないが」

「分かった。なんだかんだで仲いいな」

「まあな」


にやりとしたルーバルト。もしや普段の苦労かけてるのも計算か?まあ、そんなことはどうでもいい。冒険が俺を待っている。


「行くぞ。セイナ、イチト」

「はいはーい。うわっ、楽しみ」

「…ああ」


くっ、現地人な誠那は冷静だが、しかたない。

俺達は道なき道を進む。ぶっ壊れた壁の穴を見つけたらくぐって先に行くのは当然する。

建物の外に出たが、中庭だろうか?とくに何もなく荒れていて雑草だらけだ。来たところ以外壁に囲まれており、窓らしき開いてるところを通って通路へと入る。

やっぱり同じような通路で、それをさらに進む。


「くっ、同じようなところばかりだが、動画で撮りたい。せめて写真とか」

「分かる分かる。とくに何もないけどね」

「色々あるだろ。壷とか皿とかカップとか」


落ちてるのはほとんど陶器製だ。金属でできたものは盗られるんだろう。

こういうものでも地球に持って帰って、メイド・イン・バルファだと証明できれば莫大な金になりそうだ。うちは十分金はあるので興味はないが。


「そういえば古いものかな。売れるかな?」


バルファで売るとかもありだな。残りものでも価値はあるのか?


「古そうだな。バルファでも古いものへの興味は深いぞ」

「おお。しかし、持ってけないよな。…ん?」

「どしたの会長?」

「なんか…、音楽が聞こえるような気がする」

「えー?俺は聞こえないけど。委員長は聞こえる?」

「いや……」


ファンタジーじゃ他の奴が聞こえないなんて定番すぎて驚きもないな。とにかくその音を辿る。
音楽?のようなそれは、上のほうから降り注ぐように聞こえるような気がする。

けれど上に音があるという感じではなく、俺は導かれるようにその音に惹かれて神殿を進む。

木の枝が入り口を塞ぐようなところに来た。


「きっとこの先に何かあるに違いない」

「それ、絶対適当に言ってるよね?」

「俺の勘」

「うん。適当だ」

「よし、行くぞ」


入り口を塞ぐ木の枝を掴んで引っ張るがびくともしない。何故だ。俺を呼んでいるんじゃないのか!


「あー、無理だね。冒険はここまでだ」

「諦めたら終わりだ!諦めなければ道はある!ふぐぐっ」

「すっぱり諦めるのも重要だよ」

「くっ……、何故だ…」


数分粘ったが、枝は少し歪んだだけだった。せっかく来れたというのに、もう終わりなのだろうか…。


「会長…、そこまでしょげなくても、まだまだこれから機会はあるから!」

「一期一会だ。そんなに何度も同じ機会はないものだ」

「会長?」


あのラルクスに今もまだ会えないのと同じだ。もう二度と会えないだなんて思いたくはないが。


「この先にそんなに行きたいか?」

「行きたい」


誠那が聞いてきたので答えた。どうもあのラルクスのことがあるからか、今、行動したくてならない。


「そうか…。なら、木に呼びかけてみよう」

「え?」

「ん?」


誠那の言葉に一十が驚いたので、意味を理解していないながらも顔を上げる。すると、誠那が木に手をあてて淡い緑の光の粒を全身から出していた。
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