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バルファ旅行記つー
つー4
しおりを挟む「それじゃあ乗るぞ」
「おー、さすがにドラゴンに乗るの初めてー。会長も嬉しいでしょ?……会長ー?」
「?どうした?」
誠那も俺の様子が気になったのか声をかけてきたが、俺はそんな声も遠くに聞こえるようだ。
「会長ー?!生きてるー?」
「イチ…ト…」
一十が俺の肩を揺さぶってきたので棒立ちだった俺の身体が倒れそうになる。
ドラゴンに乗るって、乗るって!いいのか?
そんな幸福あっていいのか自分!
「か、会長?」
「俺は生きてバルファに確かにいるのか…」
「うんうん。ちゃんとバルファの地に足をつけて存在しているよ!気持ちはわかるけど、気をしっかりもって!今からドラゴンに乗るんだから、しっかり堪能しないと!」
「そう…だな…、ぐふっ、イチト、俺がもしも…」
俺には衝撃が強すぎて受け止めきれるか分からない。
「もしもなんて言っちゃ駄目だよー。絶対2人でちゃんとドラゴンに乗るって約束したじゃないかー!」
一十が俺の肩を強く掴むので、俺はこれが夢でないのだと実感できる。
「コント?とかいう奴か?」
「ああ!聞いたことあります。あちらの世界の演劇のひとつですよね。なるほど。これが…」
「間違ってはないな」
冷静な感想を言われると居たたまれないので、俺と一十は距離をとった。
「会長いい感じに変わったよねー」
「そうか?別に変わったとは思ってないが」
落ち着いたところでいざドラゴンに乗る。シャルハの説明に合わせてドラゴンの体に足をかけ、つけられてる紐を掴んでいっきに上に乗る。
体の大きさが格段にでかいから勢いをかなりつけて飛び掛かるように駆け登る。伏せしたキリンに乗るようなものか。
そして感動の飛行を始めた。重さを感じさせない上昇で、けれども人を乗せてるからかは分からないが素早い上昇ではない。
「おおおおお、景色が違う。確実に違う」
高い位置になって見るバルファの景色は格別だ。俺達がいるからか、それほどのスピードでもなく、快適だ。はーー、幸せ。
「しかし、3人で乗るものなのか?」
2匹のドラゴンに3人と2人で分かれて乗っている。ルーバルトとシャルハの2人と俺達3人。
「決まりがあるとは聞いたことないよ。おっこちない人数ならいいんじゃない?それにしても俺達だけで乗ってるからびっくりしたんだけど。委員長、ドラゴンを操れるなんてすごいね。ちょっとジェラシー」
「ちょっとどころかものすごいジェラシーだ。なんでだ。バルファの人間でもドラゴン見るのさえ稀だとか聞いたぞ」
一番前に誠那が乗っていて、その背が目の前にある。バルファの美しい空とドラゴンを操る様は、出来る男の姿に見えてくる。
大の男3人で乗ってる姿は間抜けじゃないかと思うが、誠那だけは格好よく見えるんだろうな。
「数が少ないうえ、気性が人に懐くものでないからな。だが、こうして馴らしているドラゴンならどうということもない。とても賢いから、どう動いてほしいか伝えれば、その通り行動してくれる。だからあの2人も俺達だけで乗せたんだ」
「ほう…」
いいこと聞いた。やはり生態学の為に誠那を利用するのがいいな。
「えー。それはそうらしいけど、それでもそんな堂々と出来るものじゃないでしょ?委員長って何者ー?」
「まだ知らないほうが面白いだろ?」
冗談言いそうにない顔してる誠那が楽しそうに言う。隠す気は、そんなにないってことか?
「たしかにまだ早い。しかし、よく焦らして連載途中で終わるってことは、あるからな。早めに教えてくれ」
「ああ。いいタイミングでな」
おお、期待が高まるな。まあ、何故かずっと期待しているんだが。
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