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拘束4
しおりを挟む「あー、やっぱりだいぶ増えてんだろ」
「ただ触発された不良も混じってるのかもしれん。後は風紀が片づけるから、お前はもう帰っていいぞ。明日にでも話は聞かせてもらうが」
「わかった。それなら……おい!?」
「く…。…ちょっとくらっただけだ」
風紀に任せ戻ろうと考えた比坂だったが、実元の身体がふらついているのに気づく。
それに慌てて駆け寄り身体をささえた。心配になったので風紀室へと連れていく。
「わりい。いや、ありがとな」
「いや、こっちも助かった」
「それで今回のことだが、これからも気をつけてくれ」
「わかってる」
実元の身体が気になりつつも残る仕事をする為に、比坂は生徒会室に戻る。
気分は落ち着いていた。さっきの実元とのやりとりが、昔に戻ったように感じたからだ。
もとは友人関係だったが、ある日、実元から告白され比坂がふったことから関係は悪化した。
告白を断ったとしても友人関係は続くと思ったが、そうはならなかったのだ。だから、実元に脅された時、憎まれていたのだと思った。
自分のせいで、実元は憎むということになったのかと。だからといって哀れに思って脅しに応じた訳ではないが。
比坂には友人と呼べる者は少ないから、なんとかまた友人になりたかった。せめて、憎まれることがなくならないかと願った。
その願いが叶うかもしれない。自然と笑みを浮かべていた。
ひたすらに暗い道を歩み続けるしかないのかと思っていたが、実元との関係がよくなっているようで、自分の進む道が明るくなってきたと無意識に安心していく。
明るくなると、そう思ったのだが、すぐにもそれがまやかしだったと知ることになる。
「あ!会長。お話があるんですが」
廊下で声をかけてきたのは、騒ぎの原因である転校生、泉陽美貴である。
「なんの用だ?」
泉陽とは一度顔を合わせたことがあるだけで、笑顔を向けられる理由がわからず、訝しむ。噂通りの美少女のような顔をしているが、比坂はとくに心動かされるものはない。
「あ、あの、実は、実元風紀委員長のことで…」
「…サネモト?」
突然の名前に比坂は驚く。わざわざ呼び止めるほどの用とはなんであるのか。
「はい。実は…」
泉陽が話そうとしたその時、泉陽を呼ぶ声が響く。
「ミキちゃーん。あいつらすげー強かったんだけど、もっと報酬くれない?」
不良と分かるなりをした男で、比坂の存在は気づかず近づいてくる。
「うわっ、馬鹿。外で会うのなしって言ったじゃん」
「えー? げっ、会長…。あー。じゃあ、また後でね、ミキちゃん」
急いでその場を離れていった不良であったが、比坂はしっかりその生徒の姿を見た。
「会長って頭良さそうだし、ばれた?」
「ああ…。あいつは俺達を襲ってきた連中の1人だったな。お前が主犯だったのか?」
泉陽の態度からして、主犯だとばれたことに焦っている様子はない。
「うん。まあ、そうなるかな? あー、こんな早くばれるとは困ったなあ」
困ってる様子はないし、その言葉を鵜呑みにするなら、そのうちばれても良かったということになる。
「そんな睨まないでよ。会長って噂だと鬼畜なまでに容赦ないって聞くし、拷問とかされたくないからね。ちゃんと話すよ。もしばれたとしても話していいって実元から言われてたし」
「サネモト?」
意外な名前に動揺する。
そして今までの騒動がどうして起こったのか、泉陽から一通り聞いた比坂は、仕事を置いて実元の部屋へと向かった。
ドアは開いてると部屋の主の声が聞こえ、すぐに中へと入った。
「どういうことだ! しっかり聞かせてもらうぞ!」
「そう大きな声を出さなくても聞こえる。しかし、久しぶりに激しく感情を出すところを見たな。最近は慣れてきたのか、つまらなかったぞ」
激昂する比坂に比べ、実元は余裕でいる。すでに泉陽からばれたことが伝わっているのだろう。
「…どういうことだ。それほどまでに…」
「一応全部聞いたんだろ? そのままだ」
泉陽の説明によると、泉陽は実元の遠縁で面白いことが好きな性格なので、実元の話にのったという。
計画は、学園を混乱させ比坂を追い込む。最終予定としては比坂が自分のせいで実元に害が及んだと思わせる。
実際、そう思いかけていた。元凶は転校生泉陽だと、冷静になれば分かることなのに。
泉陽の特殊な能力の操り方というのも、ただの手品のようなものだった。世の中に超能力だと騙す人間はいくらでもいると知っているはずでも、能力保持者がわざわざそんな馬鹿らしい真似するはずがないという思いこみだ。
実元が今回の混乱を作り出したということだけでも、比坂は衝撃であったが、理解できないことがある。その得体のしれないことが不安でしかたない。
最終目標の意味はなんだ?
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