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第十四話・終わりなの?
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数十分前
セルドの肉体を乗っ取ったらしい悪魔との戦闘になったが、勝負はすぐに決した。
「が、はぁ…なんだよこの身体はよぉ…」
「まぁ、乗っ取った体が悪かったわね」
ゲームのラストバトルでは、破壊の悪魔の力を封じた魔石が全てそろい、なおかつ魔力も身体能力も高い邪教祖本人が自身を生贄に現界した。だからラスボスとしてふさわしい力を揮っていた。
だが今回の場合、悪魔はセルドの肉体を生贄に現界した。セルド自身何も強力な能力はない。つまりラスボス戦のようなステータスは持ち合わせていないのだ。
まぁそうでなくても私達はダンジョンで限界までレベル上げをしたのだ。
ただレベルを上げただけじゃない、それぞれの持ち味を生かし、コンビネーションも鍛えてきた。
今の私達ならだれが相手でも負ける気はしない。
「大人しくついてきてもらおうか。お前に用はなくても、こっちはその体の持ち主に用があるのでな」
「はっ…この人間か?この人間の魂ならついさっき体から追い出したたところだよ、残念だったな」
「え?」
追い出したとはどういうことだ?
意味が分からないが、もうあの体にセルドの魂がないということか?
「ただじゃ終わらねぇ……!」
それならセルドの魂はどこへ?私が考え事をしていると、悪魔は最後の力を振り絞ってこちらに向かって駆け出してきた。一瞬の事で動けなかった私たちは、悪魔の突進を許してしまった。
そのまま悪魔はロイドへと突進し、体が光に包まれる。
「なっ!?」
「吹っ飛びなっ!」
光で目がくらむと、その直後に爆発が起こった。私はエリオにかばわれケガはしなかった。ガルフとグレンも無事だ。だが…
「ソフィア無事か!?」
「は、はい、なんとか……ロイド様!」
起き上がると、そこには爆発によってボロボロになっているセルドの身体と、同じくボロボロになっているロイドの姿があった。
悪魔はセルドの身体に残っていた魔力を放出させて爆発を起こしたようだが、セルドの魔力が少ないことから、体が木っ端みじんとまではならなかった。
だけど致命傷は免れず、ぐったりと気を失っている。
「ロイド様!」
「気を失ってるだけだ。だけどこのままじゃ危険だ」
「急いで屋敷まで戻ろう。騎士団の回復術士に診てもらわなければ」
私たちはロイドと、ついでにセルドを運んで急いで屋敷まで戻った。
そして屋敷で冒険者たちの捕縛をしていた騎士団に治療を受けた。
私達は大したケガではなかったが、悪魔の最後の攻撃を受けたロイドは重傷だ。
今回復術士の人たちが全力で手を尽くしてくれているが、危険な状態らしい。
「ロイド様…大丈夫、よね?」
私はロイドが運ばれたテントの近くにいた。治療が終わるまで面会はできないけれど、いてもたってもいられなかったのだ。
せめて私にも回復魔法が使えれば…そう思ったその時だった。
「だ、誰か止めてくれ!脱走だ!」
「!?」
不意に声が聞こえ、弾かれたようにそっちを見る。するといつの間にか縄をほどいたのか、ナタリー、キャロ、ミモザがロイドのいるテントまで走ってきていた!
「と、止まりなさい!」
なぜ彼女たちがこのテントへ?セルドを倒したロイドへの復讐だろうか。
気になったがそれよりもナタリーたちを近づけさせるわけにはいかないから私は彼女たちの前に出る。
飛び出してきた私に、先頭を走っていたナタリーが驚いていたが、キャロとミモザが間に入ってきた。
「くっ…!」
「行ってお姉ちゃん!」
「ここは私たちが押さえます!」
「ありがとう!」
私がキャロの爪を塞いでいる隙にナタリーが通り過ぎ、テントの中へ入っていく。
「貴方たち、こんなことしてタダで済むと…」
「違うんです!私たちは決してロイドさんに危害を加えようと思っていません!」
彼女たちの目的が分からず疑問に思っていると、ロイドのいるテントから強い光があふれた。一体何をしているのか。私はキャロをミモザのところまで突き飛ばし、テントの中へ駆け込む。
テントの中では兵士たちがうずくまり、ナタリーがロイドを寝かせている寝台の前に立っていて、何やら魔法をかけていた。
「あ、あなた何して…!」
「お願いロイド!目を覚まして!」
そういうナタリーの声には必死さがあった。およそロイドに危害を加えているようには見えない。今かけている魔法は回復魔法だろうか?
見る見るうちにロイドの傷は癒えていく。それに比例してナタリーの顔には疲労が見え、汗が流れている。それだけ全力を注いでいるのだろう。ロイド程の重傷患者を完治させるには最高レベルの回復術師が複数人必要であると聞いた。
それを一人で担っているのだから、その負担はすさまじいものだろう。だんだんと彼女の息が荒くなっている。
「っは、ぁ……!」
だがナタリーは回復魔法を止めず、最後の仕上げとばかりに歯を食いしばり、ロイドの怪我を治していく。
そして光が収まるころには、ロイドの容態が落ち着き、穏やかな寝息が聞こえてきた。峠を越えたようだ。
「よか…た……」
ロイドのその様子を見たナタリーは安堵し、その場に座り込んだ。外ではキャロとミモザが捕縛されている。
駆け付けた騎士団に取り押さえられ、牢に戻されていった。私はその一連の流れを、ただ眺めることしかできなかった。
「いったい彼女たちに何があったの?」
屋敷で対峙した時はロイドの事を馬鹿にしていたのに、どうして今になってあんな必死に彼を治したのだろうか。
ナタリーをロイドの元へ行かせるために足止めをしていたキャロとミモザの決意を固めた顔と、ロイドの傷を癒すために全力で回復魔法をかけたナタリーの必死な顔と、落ち着いたロイドの容態に、心から安心したあの表情が頭から離れない。
気が付けば夜が明けていて、この騒動の幕が降ろされたのだった。
セルドの肉体を乗っ取ったらしい悪魔との戦闘になったが、勝負はすぐに決した。
「が、はぁ…なんだよこの身体はよぉ…」
「まぁ、乗っ取った体が悪かったわね」
ゲームのラストバトルでは、破壊の悪魔の力を封じた魔石が全てそろい、なおかつ魔力も身体能力も高い邪教祖本人が自身を生贄に現界した。だからラスボスとしてふさわしい力を揮っていた。
だが今回の場合、悪魔はセルドの肉体を生贄に現界した。セルド自身何も強力な能力はない。つまりラスボス戦のようなステータスは持ち合わせていないのだ。
まぁそうでなくても私達はダンジョンで限界までレベル上げをしたのだ。
ただレベルを上げただけじゃない、それぞれの持ち味を生かし、コンビネーションも鍛えてきた。
今の私達ならだれが相手でも負ける気はしない。
「大人しくついてきてもらおうか。お前に用はなくても、こっちはその体の持ち主に用があるのでな」
「はっ…この人間か?この人間の魂ならついさっき体から追い出したたところだよ、残念だったな」
「え?」
追い出したとはどういうことだ?
意味が分からないが、もうあの体にセルドの魂がないということか?
「ただじゃ終わらねぇ……!」
それならセルドの魂はどこへ?私が考え事をしていると、悪魔は最後の力を振り絞ってこちらに向かって駆け出してきた。一瞬の事で動けなかった私たちは、悪魔の突進を許してしまった。
そのまま悪魔はロイドへと突進し、体が光に包まれる。
「なっ!?」
「吹っ飛びなっ!」
光で目がくらむと、その直後に爆発が起こった。私はエリオにかばわれケガはしなかった。ガルフとグレンも無事だ。だが…
「ソフィア無事か!?」
「は、はい、なんとか……ロイド様!」
起き上がると、そこには爆発によってボロボロになっているセルドの身体と、同じくボロボロになっているロイドの姿があった。
悪魔はセルドの身体に残っていた魔力を放出させて爆発を起こしたようだが、セルドの魔力が少ないことから、体が木っ端みじんとまではならなかった。
だけど致命傷は免れず、ぐったりと気を失っている。
「ロイド様!」
「気を失ってるだけだ。だけどこのままじゃ危険だ」
「急いで屋敷まで戻ろう。騎士団の回復術士に診てもらわなければ」
私たちはロイドと、ついでにセルドを運んで急いで屋敷まで戻った。
そして屋敷で冒険者たちの捕縛をしていた騎士団に治療を受けた。
私達は大したケガではなかったが、悪魔の最後の攻撃を受けたロイドは重傷だ。
今回復術士の人たちが全力で手を尽くしてくれているが、危険な状態らしい。
「ロイド様…大丈夫、よね?」
私はロイドが運ばれたテントの近くにいた。治療が終わるまで面会はできないけれど、いてもたってもいられなかったのだ。
せめて私にも回復魔法が使えれば…そう思ったその時だった。
「だ、誰か止めてくれ!脱走だ!」
「!?」
不意に声が聞こえ、弾かれたようにそっちを見る。するといつの間にか縄をほどいたのか、ナタリー、キャロ、ミモザがロイドのいるテントまで走ってきていた!
「と、止まりなさい!」
なぜ彼女たちがこのテントへ?セルドを倒したロイドへの復讐だろうか。
気になったがそれよりもナタリーたちを近づけさせるわけにはいかないから私は彼女たちの前に出る。
飛び出してきた私に、先頭を走っていたナタリーが驚いていたが、キャロとミモザが間に入ってきた。
「くっ…!」
「行ってお姉ちゃん!」
「ここは私たちが押さえます!」
「ありがとう!」
私がキャロの爪を塞いでいる隙にナタリーが通り過ぎ、テントの中へ入っていく。
「貴方たち、こんなことしてタダで済むと…」
「違うんです!私たちは決してロイドさんに危害を加えようと思っていません!」
彼女たちの目的が分からず疑問に思っていると、ロイドのいるテントから強い光があふれた。一体何をしているのか。私はキャロをミモザのところまで突き飛ばし、テントの中へ駆け込む。
テントの中では兵士たちがうずくまり、ナタリーがロイドを寝かせている寝台の前に立っていて、何やら魔法をかけていた。
「あ、あなた何して…!」
「お願いロイド!目を覚まして!」
そういうナタリーの声には必死さがあった。およそロイドに危害を加えているようには見えない。今かけている魔法は回復魔法だろうか?
見る見るうちにロイドの傷は癒えていく。それに比例してナタリーの顔には疲労が見え、汗が流れている。それだけ全力を注いでいるのだろう。ロイド程の重傷患者を完治させるには最高レベルの回復術師が複数人必要であると聞いた。
それを一人で担っているのだから、その負担はすさまじいものだろう。だんだんと彼女の息が荒くなっている。
「っは、ぁ……!」
だがナタリーは回復魔法を止めず、最後の仕上げとばかりに歯を食いしばり、ロイドの怪我を治していく。
そして光が収まるころには、ロイドの容態が落ち着き、穏やかな寝息が聞こえてきた。峠を越えたようだ。
「よか…た……」
ロイドのその様子を見たナタリーは安堵し、その場に座り込んだ。外ではキャロとミモザが捕縛されている。
駆け付けた騎士団に取り押さえられ、牢に戻されていった。私はその一連の流れを、ただ眺めることしかできなかった。
「いったい彼女たちに何があったの?」
屋敷で対峙した時はロイドの事を馬鹿にしていたのに、どうして今になってあんな必死に彼を治したのだろうか。
ナタリーをロイドの元へ行かせるために足止めをしていたキャロとミモザの決意を固めた顔と、ロイドの傷を癒すために全力で回復魔法をかけたナタリーの必死な顔と、落ち着いたロイドの容態に、心から安心したあの表情が頭から離れない。
気が付けば夜が明けていて、この騒動の幕が降ろされたのだった。
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