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後編
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アリシアを追い出してから数か月後、王国の生誕祭にお呼ばれした私たちはパーティー会場にやってきた。
ここで王子にも魅了をかけてやろうと思った私は、王子が出てくるのを待った。
そして王子が登場した…追い出したはずのアリシアを連れて。
しかもボロボロになったあの頃とは違い、きらびやかなドレスを着て、凛とした姿で。
私が呆気にとられていると、王子がアリシアを紹介した。
彼女が聖女の力に目覚めたこと。そして婚約したことを。
その事実を認めたくない私は王子に近づこうとしたけど、衛兵に止められてしまった。
仕方ないからそいつらに魅了をかけようとしたけど、何故かかからなかった。
この城の者たちは皆、アリシアの祝福によって魅了や呪いが効かなくなったらしい。
あり得ないことの連続で怯んでしまった隙に、アリシアは私に、この会場中に何か光を放った。
すると、今まで私を愛し、敬ってきた家族も、友人も、婚約者も、皆顔が青ざめた。
魅了が解けてしまったのだ。
皆アリシアに謝っていた。何も間違ったこと言ってなかったのにいじめてごめん。家を追い出してごめん。君を疑ってごめん。
だけどアリシアは彼らの謝罪を受け入れなかった。
「貴方たちにされたことを、私は忘れることが出来ません。今までずっと私がなにを言っても誰も信じてくれなくて悲しかった。除け者にされてさみしかった。一方的に悪者にされて悔しかった!もう時間がどうにかしてくれる問題ではないのです。私はもう、貴方たちと共に生きる気はありません」
そうはっきりと告げられ、彼女の元家族は、元友人は、元婚約者は絶望した。
生誕祭も幕を引き、アリシアは新しく婚約者となった王子と共にこの場を去った。こちらに一度も振り向きもしないで
今のアイツの周りには王子だけじゃなくて、新しい家族と、新しい友人がいた。
ずるいわアリシア。どうしてあなただけ何の苦労もなく私のほしいものを全て手に入れられるの?
生誕祭が終わった後、私は衛兵に押さえつけられたまま、王子に魅了魔法をかけようとし、この国を乗っ取ろうとした罪で投獄された。
ちょっと!確かに魅了をかけてやろうとは思ったけど別に乗っ取ろうなんて考えてないわよ!
だけど思ってたよりもすぐに釈放された。家にも帰してくれるって。
そうよね、私何も悪いことしてないもん!もしかしたら王子が私に一目惚れしたのかも!
そんな淡い期待を抱いて釈放してくれた王子を見ると、彼はにっこりと笑っていた。
「キミは閉じ込めておくより、アリシアの元家族の居る家に帰した方が面白そうだからね。あぁ、魔法は取り除いておくよ。もう二度と魅了魔法をつかえないようにね」
王子がそう言うと、魔法使いの人たちが現れて私の身体から光の玉みたいなのを取り出した。それが私の【魅了魔法】らしい。
魔法を奪われた私は取り戻そうとするけどまた衛兵たちに取り押さえられ、強制的に帰らされた。
家に帰った私を待っていたのは…
「何故戻ってきた疫病神!」「お前のせいでアリシアはいなくなったんだ!」「お前さえこの家に来なければ、アリシアはいなくならなかったんだ!」「アリシア様を返せ!」「今までの事も全部嘘だったんだな!」「よくも俺たちをだましやがって!」
かつて私に笑顔を向けてくれた父も、母も、兄も、使用人も、今では全員私に憎悪を向けていた。
周りに味方はいない。怖気図いてしまったけど、私も言い返した。
「何よ!あいつは何の不自由なく生きてきたんだから、少し奪ってやっただけじゃない!それのなにがいけないのよ!」
そしたらあいつら、一瞬呆けたかと思うと、まるで私を憎い仇のように、再び罵倒してくる。
「そうか、そんなにアリシアがうらやましかったのか」
すると父が静かに言った。
「それならなればいいじゃないか。今日からお前はアリシアだ」
その日から、私は「ミア」ではなく「アリシア」にされた。
「アリシア」らしくあるように、徹底的に教育された。勉強も、お稽古も、貴族のマナーも、「アリシア」と同じくらいできるまで、寝る時間も削られる程に。
髪も「アリシア」と同じ色の染められて、長さも同じくらいに切られて、目の色も薬を使って「アリシア」と同じ色に変えられた。
少しでも「アリシア」らしくない行動をとると、周りの人は皆攻撃してきた。
顔を叩かれた。水をかけられた。食事を抜きにされた。部屋に閉じ込められた。虫を食わされた。物を壊された。足蹴にされた。お腹を殴られた。髪を引っ張られた…かつて、あいつを追い込んだ時と同じことをされた。
あいつの元婚約者も、最初は「お前のせいで!」って言って殴ってきたけど、父がことを説明すると、私を「アリシア」として扱った。
私が「アリシア」をちゃんとやっている間は、彼も優しくしてくれた。だけど少しでも違う行動をとると彼は私の首を絞めて「お前はアリシアじゃない」「僕のアリシアを返せ」って怖い顔で言うの。
友人に至っては、不気味がって誰も近寄ってこない。
だから私は「アリシア」を演じた。一瞬でも気が抜ける暇もなく、心がすり減るのを感じながら…
そうして時が流れ、私と彼の間に子供が生まれたけれど、「アリシア」に似てない、「ミア」と同じ髪の色だからって養子に出された。
私がいくら泣いて懇願しても聞き入れてもらえず、我が子を養子に出されてしまった。
もうこんなところにいたくない。私はかつてあいつがしたようにここから逃げようとしたけど、見張りを立てられていたらしく、逃げようとした罰でまた暴力を振るわれてしまった。
そしていつしか、私は何も感じなくなった。
私は「アリシア」。この家の娘。愛する彼の婚約者。そういう風にしていたら、皆愛してくれるから。
だから私は今日も「アリシア」として生きていく。もう平民の「ミア」を知っている人は、「ミア」と呼んでくれる人は、いない。
ここで王子にも魅了をかけてやろうと思った私は、王子が出てくるのを待った。
そして王子が登場した…追い出したはずのアリシアを連れて。
しかもボロボロになったあの頃とは違い、きらびやかなドレスを着て、凛とした姿で。
私が呆気にとられていると、王子がアリシアを紹介した。
彼女が聖女の力に目覚めたこと。そして婚約したことを。
その事実を認めたくない私は王子に近づこうとしたけど、衛兵に止められてしまった。
仕方ないからそいつらに魅了をかけようとしたけど、何故かかからなかった。
この城の者たちは皆、アリシアの祝福によって魅了や呪いが効かなくなったらしい。
あり得ないことの連続で怯んでしまった隙に、アリシアは私に、この会場中に何か光を放った。
すると、今まで私を愛し、敬ってきた家族も、友人も、婚約者も、皆顔が青ざめた。
魅了が解けてしまったのだ。
皆アリシアに謝っていた。何も間違ったこと言ってなかったのにいじめてごめん。家を追い出してごめん。君を疑ってごめん。
だけどアリシアは彼らの謝罪を受け入れなかった。
「貴方たちにされたことを、私は忘れることが出来ません。今までずっと私がなにを言っても誰も信じてくれなくて悲しかった。除け者にされてさみしかった。一方的に悪者にされて悔しかった!もう時間がどうにかしてくれる問題ではないのです。私はもう、貴方たちと共に生きる気はありません」
そうはっきりと告げられ、彼女の元家族は、元友人は、元婚約者は絶望した。
生誕祭も幕を引き、アリシアは新しく婚約者となった王子と共にこの場を去った。こちらに一度も振り向きもしないで
今のアイツの周りには王子だけじゃなくて、新しい家族と、新しい友人がいた。
ずるいわアリシア。どうしてあなただけ何の苦労もなく私のほしいものを全て手に入れられるの?
生誕祭が終わった後、私は衛兵に押さえつけられたまま、王子に魅了魔法をかけようとし、この国を乗っ取ろうとした罪で投獄された。
ちょっと!確かに魅了をかけてやろうとは思ったけど別に乗っ取ろうなんて考えてないわよ!
だけど思ってたよりもすぐに釈放された。家にも帰してくれるって。
そうよね、私何も悪いことしてないもん!もしかしたら王子が私に一目惚れしたのかも!
そんな淡い期待を抱いて釈放してくれた王子を見ると、彼はにっこりと笑っていた。
「キミは閉じ込めておくより、アリシアの元家族の居る家に帰した方が面白そうだからね。あぁ、魔法は取り除いておくよ。もう二度と魅了魔法をつかえないようにね」
王子がそう言うと、魔法使いの人たちが現れて私の身体から光の玉みたいなのを取り出した。それが私の【魅了魔法】らしい。
魔法を奪われた私は取り戻そうとするけどまた衛兵たちに取り押さえられ、強制的に帰らされた。
家に帰った私を待っていたのは…
「何故戻ってきた疫病神!」「お前のせいでアリシアはいなくなったんだ!」「お前さえこの家に来なければ、アリシアはいなくならなかったんだ!」「アリシア様を返せ!」「今までの事も全部嘘だったんだな!」「よくも俺たちをだましやがって!」
かつて私に笑顔を向けてくれた父も、母も、兄も、使用人も、今では全員私に憎悪を向けていた。
周りに味方はいない。怖気図いてしまったけど、私も言い返した。
「何よ!あいつは何の不自由なく生きてきたんだから、少し奪ってやっただけじゃない!それのなにがいけないのよ!」
そしたらあいつら、一瞬呆けたかと思うと、まるで私を憎い仇のように、再び罵倒してくる。
「そうか、そんなにアリシアがうらやましかったのか」
すると父が静かに言った。
「それならなればいいじゃないか。今日からお前はアリシアだ」
その日から、私は「ミア」ではなく「アリシア」にされた。
「アリシア」らしくあるように、徹底的に教育された。勉強も、お稽古も、貴族のマナーも、「アリシア」と同じくらいできるまで、寝る時間も削られる程に。
髪も「アリシア」と同じ色の染められて、長さも同じくらいに切られて、目の色も薬を使って「アリシア」と同じ色に変えられた。
少しでも「アリシア」らしくない行動をとると、周りの人は皆攻撃してきた。
顔を叩かれた。水をかけられた。食事を抜きにされた。部屋に閉じ込められた。虫を食わされた。物を壊された。足蹴にされた。お腹を殴られた。髪を引っ張られた…かつて、あいつを追い込んだ時と同じことをされた。
あいつの元婚約者も、最初は「お前のせいで!」って言って殴ってきたけど、父がことを説明すると、私を「アリシア」として扱った。
私が「アリシア」をちゃんとやっている間は、彼も優しくしてくれた。だけど少しでも違う行動をとると彼は私の首を絞めて「お前はアリシアじゃない」「僕のアリシアを返せ」って怖い顔で言うの。
友人に至っては、不気味がって誰も近寄ってこない。
だから私は「アリシア」を演じた。一瞬でも気が抜ける暇もなく、心がすり減るのを感じながら…
そうして時が流れ、私と彼の間に子供が生まれたけれど、「アリシア」に似てない、「ミア」と同じ髪の色だからって養子に出された。
私がいくら泣いて懇願しても聞き入れてもらえず、我が子を養子に出されてしまった。
もうこんなところにいたくない。私はかつてあいつがしたようにここから逃げようとしたけど、見張りを立てられていたらしく、逃げようとした罰でまた暴力を振るわれてしまった。
そしていつしか、私は何も感じなくなった。
私は「アリシア」。この家の娘。愛する彼の婚約者。そういう風にしていたら、皆愛してくれるから。
だから私は今日も「アリシア」として生きていく。もう平民の「ミア」を知っている人は、「ミア」と呼んでくれる人は、いない。
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