どうせ処理なんだから思い切って愛せば良い

七瀬京

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 啓司を見やる。視線がかちあった。

「……他のやつにも、こんなこと、してんのか? 優等生」

 侮蔑の視線に、胸が、痛むのを感じつつ、蓮は、言う。

「こっちに、集中して」

 手を動かすと、今の不機嫌そうな侮蔑が、一瞬で、快楽の眼差しに変わった。

 小さな声が、漏れる。いつもより甘くて、かすれた声だった。

(この声が、僕の、名前を呼んでくれたら良いのに)

 けれど、そんなことはないだろう。

 甘い夢を見ながら、蓮は、啓司を追い詰める。啓司の呼気が荒くなる。先走りのおかげでぬめりを帯びて手は動かしやすくなる。熱い。硬い。はち切れそうだ、と、おもったら、急に、啓司が蓮の頭に手をやった。そのまま、どかそうとするのがわかった。

「も、ダメだ……どけ……」

「いいよ、手の中にして」

「は? なに、言って……」

 部屋着ではなくて制服のままで来てしまったから、制服に付いたら、少し困るかな、とは思うが、このまま、体のどこかで彼の精を受けてみたかった。

(こんなの、多分、一生に一回のことだし)

 啓司が、きゅっと目を瞑る。その瞬間、蓮の手の中に生暖かくて濃い、粘度を伴った液体がほとばしった。手を動かし続けると、くちゃくちゃ、という聞くに堪えない淫音が響く。

「あ、もう、良いから……っ!」

 啓司の手に押しのけられて、蓮は離れる。手は、べったりと、彼の精で汚れていた。

「それ……これで拭いて」

 ばつが悪そうに顔を背ける啓司から、蓮は差し出されたタオルを受け取らなかった。

「鳩ヶ谷?」

 訝しがる啓司と、蓮の、視線がかち合う。

 蓮は迷わなかった。

 手についた濃い白濁に、舌を伸ばした。舌先に、生暖かさを、感じた。青臭い、というか、生命そのものの匂いがすると思った。

「なっ……!! 何して……!!」

 あからさまに驚いて、真っ赤な顔をしながら叫ぶ啓司を見て、蓮は少し満足した。こんなことをしたやつのことを、少しの間だけでも、覚えておいて欲しかったからだ。

「……変な味がするもんだね」

「そりゃ、そんなの、舐めるようなもんじゃないだろ」

「でも、嫌いな味じゃなかったよ」

 蓮の言葉を聞いた啓司が、大きく目を見開く。

「お前……なんなんだよ」

「さあ? じゃあ、本、間違えてごめんね。僕はもう帰るね。おやすみなさい」

 言いたいことだけを告げて去った蓮の背後から、なんとも言えないうめき声が聞こえてきたが、蓮は気にしないことにした。



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