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しおりを挟む死にものぐるいという言葉が、まさに相応しいような内容だった。惨敗を喫し、宇都宮城が、幕府軍の手に渡ってしまった。兵力の差がありすぎた。幕府軍は、新型の大砲を持っていた。伝習組など、フランス式の訓練を受けたものたちの動きや、土方達新撰組に加えて、新撰組を離脱した永倉新八達の、靖兵隊、様々な支隊が、それぞれ良い動きをしていた。不意を突かれたのも、痛いところだった。不意を突かれ、一気に攻められた。
鳥羽伏見の戦いでは、官軍の圧勝だったという気持ちが大きかった。今回も、苦戦するような事はないと思い込んでいた。完全に、油断をしていたと言うことだ。壬生城に付いた香川は、自軍の損害状況を確かめて、壬生城での体制強化を整えることにした。壬生城への撤退は、土方には感知されている、と香川は確信していた。あの瞬間、きっと、土方は、香川を見た、と思った。つまり、次は、この壬生城が、戦場に成ると言うことだ。
香川は、唇を噛み締めた。目を閉じた。中岡慎太郎が笑っていた。武士は、笑わないものだが、中岡慎太郎は、よく笑った。笑顔の気持ちのいい男だった。
(中岡さん、敵を討てって言っているんですか?)と香川は問いかける。しかし、瞼の裏の中岡慎太郎は笑うばかりだ。(私は、あの、土方という男が恐ろしい。得体が知れない。アレと戦うくらいなら、仲間に引き入れてしまいたい)
香川は、近藤と土方に対して、仲間になって欲しいと思った。しかし、内容は随分違う。近藤には、『共に戦う同士』として誘った。しかし、土方は『敵に回したくないから味方に引き入れておきたい』というだけだ。嫌な気分だった。
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