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25.蹂躙
しおりを挟む身体が、燃えるように熱かった。
口からは、何を言っているのか定かでない朦朧とした言葉と、喘ぎが断続的に漏れている。
それを他人事のように感じながら、ルシェールは、快楽に翻弄されていた。
すでに、抵抗する気力は無かった。
「……また、達しました?」
くすくすと、アルトゥールが笑う。
すでに、何度達したか解らない。射精を伴わずに絶頂を迎え、身体が、ガクガクと震えている。
口の端からは飲み干せなかった唾液が垂れていて、あちこちは、精液で汚れていた。全身に、玉のような汗が噴き出してくる。肌を手や舌で暴かれ、身体の最奥まで貫かれた時、得体のしれない悦びが、全身を貫いていった。
「ぁっ……っあっ、あっ、っああっ……っ」
アルトゥールが、ぐい、と腰を進める。
「っ―――――っ! ぁっ……っ深……っ」
「……男を受け入れるのは、初めてだったのですよね? ……その割に、身体は……、従順ですね。もう少し、手が掛かるかと思いましたが」
アルトゥールが口づけをしてくる。
何度、口づけられたか、よく解らなかった。
体内で脈打つアルトゥールの大きさや、形に、身体が馴染んでいくのが、解る。
身体は、彼から与えられる刺激を求めて、勝手に収縮していた。それが―――彼に快楽を与えているのも、理解はしている。
ルシェールは、自分の意識と、感覚が酷く乖離しているのを感じていた。
身勝手に犯されて快楽を感じている肉体を、魂の自分が、遠くから眺めているような、酷い乖離だった。
「……あなたも、大分、感じているようですね。良かった」
アルトゥールの手が、愛おしそうに、ルシェールの頬を捕らえた。
「あなたの……あなたさえ触れたことのない所まで、俺が居るんですよ。わかりますか、ここに」
と、アルトゥールはルシェールの腹に手をやった。
どこまで、アルトゥールの性器が届いているのかは解らなかったが、その奥に―――身体の中に、アルトゥールがいると言うことを強く意識してしまった。
「っ!!!」
思わず、奥がより強く収縮するのを感じた。
「っ……っ。は……ルシェール……事実ですよ。あなたの身体の中に、俺がいて……あなたが女だったら、孕むほど、俺の精を受け入れて居るんです」
それを認めろ、認識しろ。受け入れろ。
そう、アルトゥールは言う。ゆるゆると腰を動かして、内部を抉られるたび、ルシェールが悲鳴じみた喘ぎを漏らして、身もだえる。
「っ……っぁっ、ああっ……っぁっ……っ!」
その様をみおろすアルトゥールは、愉悦の表情を浮かべながら、緩急を付けて抽送を繰り返す。
「あ、……っ……、で……、殿下……っ、も、おゆるし……」
哀願が漏れたのを聞いて、アルトゥールの笑みが濃くなった。
誇り高き『帝国の甘美なる闇』ロイストゥヒ大公・ルシェール。
その美しい人が、自分の身体のしたで身もだえて、矜恃もかなぐり捨てて哀願を繰り返しているのだ。
「……まだまだ、あなたも満足して居ないでしょう?」
ぐちゃぐちゃと、酷い音と、喘ぎ声、荒い吐息が口から漏れている。
「あっ、あっ……も、……」
「まだ、ですよ……あなたが、完全に、俺のものになるまで……」
アルトゥールが、ルシェールの耳を噛む。
「っ――――っ!!!」
アルトゥールは、ルシェールの脚を捕らえて、太腿に唇をおとす。
「っ……っ!」
内腿が、びくっと震えた。その時に、酷く締め付けられて、アルトゥールは、ルシェールの感じた甘い快楽を知る。
「ふうん……、ここ、好きなんですね」
舌で、ちろちろと舐めて刺激すると、ルシェールが上半身をよじって、酷く身もだえた。顔を、枕に埋めてしまったので、アルトゥールは少し面白くないが、それほど感じていると言うことなのだ。
そのまま、ゆっくりと舌を這わせる。
ゆっくりと、腰の抽送を繰り返しながら。
足首までたどり着き、足の甲に、口づけた。敬虔な巡礼者が聖なる彫像にするように。けれど、さらにつま先までたどりつき、足の指を口に夫君がたき、ルシェールの身体がおおきく、びくん、と跳ねた。
「ひ……っあっ……やっ……っ」
「おや、ここ、こんなに感じるんですか?」
ちがうちがう、と頭を振るルシェールだったが、快楽を感じているのは、明らかだった。
「ここか悦いんでしょう……? 千切られそうに締め付けてくる」
「っ……っぅっ………ゃっ……っ、も……た……っ……っ」
切れ切れに、助けて、許してと懇願する姿には哀れさを感じたが、それよりももっと、残酷な気分だった。
このまま、何も考えられないくらい―――廃人になるまで、抱き潰してやりたいという、酷い欲望だ。
慈しみ愛するのとは、全くかけ離れた、感情だった。
「……あなたは、俺に堕ちれば良いんですよ、ルシェール」
甘く、甘く、甘く囁かれて、ルシェールは、その言葉に反応も出来なかった。
一度引き抜かれたと思ったら、最奥まで一気に貫かれた。
「っ―――――っ!!!」
目の前が、白く明滅しているのを感じながら、ルシェールは、今度こそ、意識を手放した。
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