11 / 34
謎の石 1
しおりを挟む横になってから真面目に考えた。
今日の昼間は何も拾っていないし、こんなにきれいなに石を手に入れたら忘れたりはしない。
ちゃんといわなければと結論が出た頃には眠ってしまっていた。
「どう考えてもこれは夢の中で貰った物なんだ!」
目が覚めるなり飛び起きて叫んでいた。
「まだ言うか?」
先に起きて出発の準備をしていたハスラムは、適当に流した。
「早く準備しろ。カーリーと途中まで一緒に行きたいんだろう」
のんびりしていたら置いて行かれる。
「でもね。でもね、そうなんだよ。絶対に」
それでもオリビエは食らいつく。
いつもなら適当にあしらうと拗ねてしまい黙り込むのだが、今は、らしからぬ行動だった。
「分かった。どんな夢だったんだ」
よほどのことなのか? ハスラムは心配になりベッドに座った。
それに嬉しそうに隣に座りオリビエは話し始めた。やっと信じてもらえたと。
「その男が願いを叶えてくれと言ってこれを渡されってことか。綺麗な石だけど、これが願いに関わっているのか謝礼のどっちになるのか?」
ハスラムはじっとオリビエの手の平にある石を見る。
「あれ?」
何かが見えた。
「この石、精霊が宿っている。珍しというか貴重なものだぞ」
ハスラムは、手に取って凝視した。
「精霊? どれ?」
二人共精霊を見る力がある。
「ほら」
興味津々の瞳を向けてくるオリビエの目の前に石を持っていき、これだと指で示す。
「あ、点々が動いてる」
「どうしてこんな貴重な物を……」
言葉が続かない。
精霊が宿る石は、精霊が自ら住み着いているか魔術で封じられているかのどちらかで、今では手に入れることが皆無に近いものだった。
それを預けた、それも夢の中で。
信じられない。こうとしかハスラムは考え付かない。
「知っているよな、この石は中にいる精霊の種類の術を呪文がなくても使えるって物で、他の石と組み合わせれば、護符になる。それも強烈な力を持つ」
色んな考えがハスラムの頭の中を駆け巡る。
「そうだ」
あることに辿り着く。
「あの短剣を出せるか?」
できればそうでないようにという思いがあるが、試してみたかった。
「あれね」
出した瞬間、二人は目を疑った。
「え!」
オリビエは、半泣きになってしまう。
「おいおい!」
思考が止まるハスラムだった。
現れたとたんに石が短剣に飛んでいった。
何個かある柄のくりぬかれた穴に音もなくはまった。
二人は無言で顔を見合わせる。
「どうしよう?」
「オレが訊きたい」
しばらく二人は短剣を凝視していた。
「これオーリーが拾った時、父さんが石が何個か足らないとかいってたよな」
これにオリビエは無言で頷く。
一つ集めたということになる。
「よかったな」
はっきりいって事態はややこしくなっただけ。
ハスラムからは、なげやりな言葉しか出ない。
「そ、そんなー! おじさんは、二人でどうにかしなさいっていってた」
見捨てられる。
逃がしてはなるかと隣に座るハスラムの腕にしがみついた。
「分かっているから」
安心しろと身体を離し、短剣を見る。
「だけど、これどうなるんだ?」
短剣に石が一つ入った。
状態が変化したことになる。もしかすれば触れるのではとハスラムは手を出すが、指が短剣を通り抜けオリビエの手首に当たるだけだった。
そんな時、扉を叩く音がして開いた。
「あらら、取り込み中? ごめんなさい」
カーリーだった。
扉を急いで閉めようとするのをオリビエが止めた。
「違うんだ!」
扉まで走って行き、入ってと腕を掴み部屋へ入れた。
あの体勢、抱き合っていると思われたのでその誤解を解きたいという思いからの短慮に後悔する。
この短剣のことは極秘なのだ。
「あー、ええっと!」
「うん、おもしろい物持ってるね」
短剣を目にしたカーリーは驚いていた。
「見せてね」
ひょいと指で摘まみ、複雑な表情で見ていた。
「持てるんだ」
ハスラムは目を見開く。
自分がどんなにがんばっても触ることができなかった。魔力では絶対に勝てない父でさえも。
「これって何なの?」
持てることも不思議だが、何だ? ということが子供の頃からの疑問だったのでオリビエが先に訊いた。
「小型の短剣でしょう」
そのままの返事だった。
「どうして触れるんだ?」
ハスラムは違う方向で訊く。
「どうしてって、触れたから」
答えながらオリビエに返す。
「オレ、触る事さえもできないんだ」
ハスラムは、詰問するような口調になっていた。
「精霊石が入っているからじゃあない。精霊石って、気に入ったものにしか触らせないでしょう」
魔法の常識だった。
「その青い石は掴めたんだが……」
「うーん、他の石に気に入られなかったんじゃあないの」
「え、他の石? オレにはその石しか見えない」
他のといわれ、ハスラムはまじまじと短剣を見つめた。
オリビエも不思議となる。
「うん。石が付いていた場所みたいなのは分かるけど」
窪んでいる箇所を何個かなぞりながらハスラムを見て、二人して頷いた。
自分たちは正しいと。
手に入れてからどうするか相談をするたび飽きるほど見ていた。
「ハスラムほどの力があっても分からないんだ。相当気難しい精霊たちね」
「どこに他に石があるの?」
信じられないとオリビエはまた短剣を指でなぞり出す。
だが、指にはそれらしき物は当たらない。
「持ち主がまだ大切にする気がないからよ。まず友達になる気でオリビエは付き合いなさい」
「嫌だ」と唸るオリビエの様子に笑いながら扉の前へ動く。
「そろそろ出ないとね」
「待ってくれ、カーリーはこれが何か知っているんだろう」
うやむやにされそうだったのでハスラムは思い切って訊いた。
「確信でないから、今は分からない」
「何それ? かもしれないでもいいからおしえて!」
当てはあるがそうだといい切れないからだろう。間違っていてもいい、知りたい。
「ハスラムだって思い当たることがあるけど、確信に辿り着いてないのでしょう。だから私も分からない」
強引な結論で終わらせ、外へと出て行った。
「下で待っているから」こういい残し。
「あれ絶対に知っているな」
どう考えてもそうなる。
「けど、ハスラムも何となく分かっているのか?」
あの会話の流れではそうなる。
「いや、オレはまだ調べている途中だから。二、三そうかもと思う物があるんだけど、どれもややこしいから確信できるまではなんとも」
こちらも誤魔化しに入っていた。
「呪い付きの何かとか?」
自分を気づかってなら、あまりいい物ではないはず。一番嫌な正解をオリビエは想像した。
「魔法のかかった短剣。今はそれでいいだろう」
はっきりとすれば、おしえてやるという態度だった。
こうなるとしつこくすると反対に怒られる。
「うん」
頷きはしたものの不満一杯だった。
可能性があるだけでもいいからおしえて欲しい。
だがハスラムは絶対に嘘はつかない。どんなに不利な時でも。
ただ信じて待つしかないのだろうと諦めた。
「でもさ、オレこいつと友達になれっていわれても得体が分からない過ぎて無理だ」
オリビエは、短剣の一部になった石をじっと見る。
「友達になりたかったら、少しはオマエのことおしえてよ。そっちはオレたちのことよく知ってるだろう」
オリビエは、人にお願いをするように頼んだ。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~
桂
ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。
そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。
そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。
ダンシング・オン・ブラッディ
鍵谷 雷
ファンタジー
セレスタ・ラウは帝国魔術学院で魔術を学び、優秀な成績で卒業した。帝国魔術師団への入団も間違いなしと言われていたが、帝国から遠く離れた村の教会に配属を希望する。
ある夜、リュシールという女吸血鬼と出会う。彼女はセレスタを気に入ったと告げ、とある計画への協力を求める。
"光"の魔術師と"闇の住人"である吸血鬼、二人の冒険と戦いと日常を書いたファンタジー。

とある元令嬢の選択
こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。


愛人をつくればと夫に言われたので。
まめまめ
恋愛
"氷の宝石”と呼ばれる美しい侯爵家嫡男シルヴェスターに嫁いだメルヴィーナは3年間夫と寝室が別なことに悩んでいる。
初夜で彼女の背中の傷跡に触れた夫は、それ以降別室で寝ているのだ。
仮面夫婦として過ごす中、ついには夫の愛人が選んだ宝石を誕生日プレゼントに渡される始末。
傷つきながらも何とか気丈に振る舞う彼女に、シルヴェスターはとどめの一言を突き刺す。
「君も愛人をつくればいい。」
…ええ!もう分かりました!私だって愛人の一人や二人!
あなたのことなんてちっとも愛しておりません!
横暴で冷たい夫と結婚して以降散々な目に遭うメルヴィーナは素敵な愛人をゲットできるのか!?それとも…?なすれ違い恋愛小説です。
※感想欄では読者様がせっかく気を遣ってネタバレ抑えてくれているのに、作者がネタバレ返信しているので閲覧注意でお願いします…

女官になるはずだった妃
夜空 筒
恋愛
女官になる。
そう聞いていたはずなのに。
あれよあれよという間に、着飾られた私は自国の皇帝の妃の一人になっていた。
しかし、皇帝のお迎えもなく
「忙しいから、もう後宮に入っていいよ」
そんなノリの言葉を彼の側近から賜って後宮入りした私。
秘書省監のならびに本の虫である父を持つ、そんな私も無類の読書好き。
朝議が始まる早朝に、私は父が働く文徳楼に通っている。
そこで好きな著者の本を借りては、殿舎に籠る毎日。
皇帝のお渡りもないし、既に皇后に一番近い妃もいる。
縁付くには程遠い私が、ある日を境に平穏だった日常を壊される羽目になる。
誰とも褥を共にしない皇帝と、女官になるつもりで入ってきた本の虫妃の話。
更新はまばらですが、完結させたいとは思っています。
多分…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる