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万年夜森
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「こっちこっち!」
熊鬼の家と桜の家から真逆の方向に向かうと、深い森の入り口があった。
桜は当然、熊鬼と家の間の行き来以外での外出は両親とだったため、この時点ですでに不安感が押し寄せた。
森に意気揚々と入っていくほのかだが、桜は足がすくむ。
「ほのかちゃ…そっち、いったことないよ…なんだかこわいよ…」
「狩りで何度も来たことあるから大丈夫だよ!」
そう言われるが、怖い。
しかし、ズンズンと森の奥へ足を運ぶほのかになぜか対抗意識と、少し心配な気持ちを感じて追いかけてしまった。
「ほ…ほのかちゃん…ほんとにこっちなの?」
「うん! こっちだよ!」
足取り軽く奥へ進んでいく。
しばらく歩くと、ほのかの様子が変わった。
「…ほのかちゃん?」
目の前には分岐点があった。
「どっち…?」
「こっ…こっち!こっち!」
そう言うと、右に向かって行った。
奥に行くと道がどんどん狭くなり、ほのかの様子が一気に変わった。
「…こっちじゃ…なかった…も、もどろ!」
そう言われて戻ると、見たことのない分岐点が出て来た。
「ど…どっち…?」
ほのかの顔を除くと、目に涙を溜めて顔を真っ青にしている。
「………………わっ…わかんない…」
「えっ…?」
「桜ちゃんごめん! 迷子になっちゃった…」
さっきよりも顔が青くなり、桜の不安が一気に押し寄せた。
「そんな……」
2人とも気持ちが真っ暗になると、木々のざわめきや鳥の鳴き声がとても不気味でますます恐怖心を煽った。
「どっ、どうしよ…」
ほのかは恐怖で震え始めた。
「ほ、ほのかちゃん…」
「うわぁぁぁぁん! ごめんね、ごめん…! 行けると思ったのぉぉ!」
大泣きしてしまい、森にほのかの鳴き声が響いた。
「うわぁぁぁん! ぱぱぁぁぁぁ! ままぁぁぁぁ!」
つられて桜も泣き出した。
すると、奥から提灯がゆっくりと近づいて来た。
「ひっ?!」
ほのかは恐怖でもう声が出ず、ガタガタと体を震わせた。
ほのかの様子を見て、桜も奥を見る。
「…だれだぁ」
「「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!!」」
提灯の真逆に逃げるように走った。
とにかく走っていると、灯りがあった。
「灯りだ! だれかー! たすけてー!」
ほのかの叫びに灯りが振り向くと、さっきの提灯だった。
「んん? さっきの子狐と子狸か」
「「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁあ!」」
「うるさっ! 落ち着け、落ち着け」
提灯はほのかよりも大きく、目も口もある提灯の妖怪だった。
「お前らはなんでこんなところにいるんだ?」
「ぎゃぁぁぁ!!」
ほのかは1番怖がって泣き叫び、硬直してしまった。
桜はほのかを縦にして、恐る恐る提灯に話しかけた。
「ち…ちょーちんさん、ここはどこですか…」
「あ? ここは万年夜森だ、お前達、知らないってことは…」
「ま、まよっちゃったの…」
「迷った? 捨てられたんじゃないのか?」
「す…捨てられてない! ほのかが花畑行こうって言ったんだ…」
「そうかい? ていうか、花畑なんか万年夜森にはないぞ? 違うところだったんじゃねえのか?」
「…ど…どうしよ…」
「が……がえりだいよぉぉぉぉぉ!!!」
桜は大泣きし始めた。
提灯の捨てられた発言もあり、恐怖に追い打ちをかけてしまった。
「ばばぁぁぁぁ、ま゛ま゛ぁぁぁぁ!!!」
「わかった!わかった!悪かったよ!泣くな煩い」
すごく迷惑そうな顔をして、めんどくさそうになだめた。
「ほれ、ついて来い」
「どっ、どこに連れてくんだ!」
「お前らの足でここまでくるって言うなら、1番近くの村の門だと思ってるんだよ! さっさとついて来いクソガキ!」
提灯の苛立ちを感じ、怖いけど黙らなければならないと口をギュッと瞑った。
提灯はどんどん先に進み、見失わないように、そして、絶対に離れないように抱きつきながらついて行った。
無言のまま歩いていくと、遠くから叫び声が聞こえた。
「桜ー!」
「ほのかー!」
「おい!ここにガキが2匹いるぞ!早く来い!」
提灯が叫ぶと、ゾロゾロと人が集まって来た。
「桜!」
「ほのか!」
「うぁぁぁぁぁん!!ばばぁぁぁぁ!」
「とーちゃんんんん!!!」
「チッ…捨てたんじゃねぇのか…もう2度と来んなよ!」
提灯は言い捨てるとすぐに消えてしまった。
「あれは……万年夜森の番人提灯か…?なんであの森に入ったんだ!!」
松が鬼の形相で桜の方を掴み怒鳴ってしまった。
「うっうぇぇぇぇぇ!!」
「松、気持ちはわかるわ、わかるけど落ち着いて」
牡丹も聞きつけ出て来たのだ。
「ほのか! おめぇ、ぜってぇ入るなって何べんも言ったじゃろ!」
「おめがさくらちゃんばそそのかしたんだべ!」
「ゔぇぇぇぇぇ!!」
ほのかも責められて大泣きしてしまう。
「稲荷さん、オアゲさん、落ち着いてください、気持ちはわかりますから! おあげさん、ほのかちゃん抱きしめてあげてください!」
オアゲはハッとして、ほのかを抱きしめた。
「ほのか、怒鳴ってごめんね…」
「桜、びっくりしたね、でもいなくなってママもパパもびっくりしたんだよ」
抱きしめるとそう囁いた。
「「ごべんなざいいいいい!!!」」
母親にしがみつき、泣き喚いた。
熊鬼の家と桜の家から真逆の方向に向かうと、深い森の入り口があった。
桜は当然、熊鬼と家の間の行き来以外での外出は両親とだったため、この時点ですでに不安感が押し寄せた。
森に意気揚々と入っていくほのかだが、桜は足がすくむ。
「ほのかちゃ…そっち、いったことないよ…なんだかこわいよ…」
「狩りで何度も来たことあるから大丈夫だよ!」
そう言われるが、怖い。
しかし、ズンズンと森の奥へ足を運ぶほのかになぜか対抗意識と、少し心配な気持ちを感じて追いかけてしまった。
「ほ…ほのかちゃん…ほんとにこっちなの?」
「うん! こっちだよ!」
足取り軽く奥へ進んでいく。
しばらく歩くと、ほのかの様子が変わった。
「…ほのかちゃん?」
目の前には分岐点があった。
「どっち…?」
「こっ…こっち!こっち!」
そう言うと、右に向かって行った。
奥に行くと道がどんどん狭くなり、ほのかの様子が一気に変わった。
「…こっちじゃ…なかった…も、もどろ!」
そう言われて戻ると、見たことのない分岐点が出て来た。
「ど…どっち…?」
ほのかの顔を除くと、目に涙を溜めて顔を真っ青にしている。
「………………わっ…わかんない…」
「えっ…?」
「桜ちゃんごめん! 迷子になっちゃった…」
さっきよりも顔が青くなり、桜の不安が一気に押し寄せた。
「そんな……」
2人とも気持ちが真っ暗になると、木々のざわめきや鳥の鳴き声がとても不気味でますます恐怖心を煽った。
「どっ、どうしよ…」
ほのかは恐怖で震え始めた。
「ほ、ほのかちゃん…」
「うわぁぁぁぁん! ごめんね、ごめん…! 行けると思ったのぉぉ!」
大泣きしてしまい、森にほのかの鳴き声が響いた。
「うわぁぁぁん! ぱぱぁぁぁぁ! ままぁぁぁぁ!」
つられて桜も泣き出した。
すると、奥から提灯がゆっくりと近づいて来た。
「ひっ?!」
ほのかは恐怖でもう声が出ず、ガタガタと体を震わせた。
ほのかの様子を見て、桜も奥を見る。
「…だれだぁ」
「「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!!」」
提灯の真逆に逃げるように走った。
とにかく走っていると、灯りがあった。
「灯りだ! だれかー! たすけてー!」
ほのかの叫びに灯りが振り向くと、さっきの提灯だった。
「んん? さっきの子狐と子狸か」
「「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁあ!」」
「うるさっ! 落ち着け、落ち着け」
提灯はほのかよりも大きく、目も口もある提灯の妖怪だった。
「お前らはなんでこんなところにいるんだ?」
「ぎゃぁぁぁ!!」
ほのかは1番怖がって泣き叫び、硬直してしまった。
桜はほのかを縦にして、恐る恐る提灯に話しかけた。
「ち…ちょーちんさん、ここはどこですか…」
「あ? ここは万年夜森だ、お前達、知らないってことは…」
「ま、まよっちゃったの…」
「迷った? 捨てられたんじゃないのか?」
「す…捨てられてない! ほのかが花畑行こうって言ったんだ…」
「そうかい? ていうか、花畑なんか万年夜森にはないぞ? 違うところだったんじゃねえのか?」
「…ど…どうしよ…」
「が……がえりだいよぉぉぉぉぉ!!!」
桜は大泣きし始めた。
提灯の捨てられた発言もあり、恐怖に追い打ちをかけてしまった。
「ばばぁぁぁぁ、ま゛ま゛ぁぁぁぁ!!!」
「わかった!わかった!悪かったよ!泣くな煩い」
すごく迷惑そうな顔をして、めんどくさそうになだめた。
「ほれ、ついて来い」
「どっ、どこに連れてくんだ!」
「お前らの足でここまでくるって言うなら、1番近くの村の門だと思ってるんだよ! さっさとついて来いクソガキ!」
提灯の苛立ちを感じ、怖いけど黙らなければならないと口をギュッと瞑った。
提灯はどんどん先に進み、見失わないように、そして、絶対に離れないように抱きつきながらついて行った。
無言のまま歩いていくと、遠くから叫び声が聞こえた。
「桜ー!」
「ほのかー!」
「おい!ここにガキが2匹いるぞ!早く来い!」
提灯が叫ぶと、ゾロゾロと人が集まって来た。
「桜!」
「ほのか!」
「うぁぁぁぁぁん!!ばばぁぁぁぁ!」
「とーちゃんんんん!!!」
「チッ…捨てたんじゃねぇのか…もう2度と来んなよ!」
提灯は言い捨てるとすぐに消えてしまった。
「あれは……万年夜森の番人提灯か…?なんであの森に入ったんだ!!」
松が鬼の形相で桜の方を掴み怒鳴ってしまった。
「うっうぇぇぇぇぇ!!」
「松、気持ちはわかるわ、わかるけど落ち着いて」
牡丹も聞きつけ出て来たのだ。
「ほのか! おめぇ、ぜってぇ入るなって何べんも言ったじゃろ!」
「おめがさくらちゃんばそそのかしたんだべ!」
「ゔぇぇぇぇぇ!!」
ほのかも責められて大泣きしてしまう。
「稲荷さん、オアゲさん、落ち着いてください、気持ちはわかりますから! おあげさん、ほのかちゃん抱きしめてあげてください!」
オアゲはハッとして、ほのかを抱きしめた。
「ほのか、怒鳴ってごめんね…」
「桜、びっくりしたね、でもいなくなってママもパパもびっくりしたんだよ」
抱きしめるとそう囁いた。
「「ごべんなざいいいいい!!!」」
母親にしがみつき、泣き喚いた。
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