魔導姫戦記

森乃守人

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外典 ドラゴンハンター 第四部

ep.19 掌の上

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地下建造物最深部…

ラマシュトゥ「失態ね、パズズ。」
パズズ「う…うるせぇ!」

アリハマ博士は、目の前にあるガラス管の中で眠る少女を見ながら言った。
「いずれは彼らにもお披露目するつもりだったけど、もう少し時間が欲しいなぁ…
…どれ、ラマシュトゥ君、各国軍部に匿名でここの情報をリークしたまえ。」
ラマシュトゥ「よろしいのですか?」
アリハマ「咬ませ犬に利用すれば、時間稼ぎにはなるだろう。
ここにはそう簡単に辿り着けない筈だが、シグルズ君だけは油断ならないからねぇ。」










地上…

帝国魔導師ウィザード達を元に造られた複製体ホムンクルスがゾンビと化し、砂礫の大地に開いた穴から続々と這い出す。
シグルズ・メリュジーヌ・シェイミーはベーオウルフ率いるドゥエルグヘイム軍と共にそれらを駆逐していた。
そこへ、獣面の巨鳥が飛来する。

マルガリータ「あれも異形化奇病メタモルフ…⁉︎」
メリュジーヌ「いや…我らの仲間じゃ。」

獣面鳥シームルグは、その背からラン・リン・シャールヴィを降ろすと
「主より命ぜられし役目は果たした。
我は主の元へと戻らん。」
そう言って北東の方角へと飛び去った。

シェイミー「ミシェルさんは?」
シャールヴィ「ラグ兄と一緒に帝国に向かったぜ。」
「なら、じきにアイツらもここに来るかもな。」
シグルズがそう言うと、シェイミーはバツが悪そうに沈黙する。
「……」
シグルズ「現実を知って受け止めるってのも、試練ってやつだと思うぜ?
(ベーオウルフを見て)
そういう訳だからよ、帝国の連中が来たら、出来れば揉めねぇでここを通してやってくれるか?」
ベーオウルフ「ふむ…向こうの出方次第だが…まぁ善処しよう。」
リン「それと、他の国の軍隊もこっちに向かって来てるってよ?」
マルガリータ「なんですって⁉︎」
ラン「そいつらの狙いもたぶんアリハマ博士の身柄…
アイツの知識と技術があれば、帝国や他の国を凌駕する力が手に入るらしいからね。」
ゲオルギウス「なるほど…
しかし、そのような目的ならば、派兵されて来るのは小規模な隠密部隊が関の山でしょう。
正規軍を表立って動かすには口実が必要ですが、狙いが同じ各国がそれを認めないでしょうから…裏ではお互い様とわかった上でね。」
ベーオウルフ「それに対し我々は、南方大陸での異形化奇病メタモルフ蔓延を阻止するという大義のもと、大規模な動員が可能。
ここを突破など、させはせん。」
シグルズ「あぁ、頼んだぜ。」



かくして地下建造物に潜入するウロボロス団。
まだ内部には異形化奇病メタモルフ彷徨うろついているものの、地上に這い出たゾンビはかなりの数を間引いたおかげで、最初にメリュジーヌとシェイミーが突入した時よりは探索を容易たらしめている…とはいえ、何しろ内部は広い。

ラン「二手にわかれた方が効率よさそうだね。」
メリュジーヌ「では我はラン・リンと共に行こう。」
シャールヴィ「じゃあオイラはシグルズ・シェミ姐と一緒か。」
シグルズ「戦力バランス的にも妥当なところだな。」



メリュジーヌと別れシャールヴィをメンバーに加えたシグルズ班は、徘徊する異形化奇病メタモルフの中にゼル複製体ベルゼブルを発見する。

シグルズ「コイツが異形化奇病メタモルフを発症したゼルの姿って訳か…面白ぇ…!」










再び地上…

北方諸国から派遣された国籍不明兵アサシン達が、南方大陸南部の砂漠地帯に到達する。
砂漠外縁の疎に残った茂みに隠れて望遠鏡を覗くと、ドゥエルグヘイム軍がキャンプを設営しているのが見えた。

「むぅ…あれを突破するには戦力差があり過ぎる。
本国に連絡して増援の要請を…」

その時、地響きと共に地表の砂がかき分けられ、地下へと通じる道が現れる。










ゼル複製体ベルゼブルを激闘の末に葬り去ったシグルズ達。
探索を進めていると国籍不明兵アサシンと遭遇した。

シャールヴィ「なんだよあのオッサン、偉そうに言って入り込まれちゃってんじゃん!」
シグルズ「いや…アイツがそう簡単に不覚を取るとは思えねぇ。
他の侵入ルートがあるのか?」

国籍不明兵アサシン達を討ち倒しながら更に探索を進めると、上り階段の先に光を見出す。
だが、その先が繋がっていたのは地上の砂漠地帯外縁だった。

シェイミー「やっぱり他の侵入ルートがあったのね。」

地下建造物内に引き返そうとした瞬間、開いていた筈の通路は閉ざされ、瞬く間に周囲の砂漠と同化し見分けがつかなくなった。

シグルズ「クソッ、やってくれるぜアリハマの野郎…!」



地上を歩いてドゥエルグヘイム軍のキャンプ地に戻ると、メリュジーヌ達も同様に戻って来ていた。

シグルズ「お前らもかい…!」
メリュジーヌ「まんまとやられた様じゃな。」
リン「でもでも、そんなタイミングよく締め出せるんなら、なんで他の国の兵士達を入らせたんだろ?」
ラン「…ウチらにぶつけて潰し合うのを狙ったのかもね。
だとすると各国軍部の派兵も、アリハマ博士が仕向けた事なのかも…」
シェイミー「……」



一行は再び二手に別れ探索を再開すると、今度は帝国魔導師ウィザード達に遭遇した。

リリィ「シェミ先生⁉︎
ウロボロス団と一緒だったんだ?」
シェイミー「えぇ…」
シグルズ「うまく入り込めたようだな。」
アイシス「…そうね…
のお膳立てでもあったのかしら…?」
シグルズ「ククク…さぁな。」
シェイミー「殿下は今どこに?」
ゼル「……」
アッシュ「奥に進んだらしいぜ。」
シャールヴィ「お前ら一緒じゃなくて大丈夫なのか?」
ペコル「兄様より強~い騎士様が一緒だから大丈夫なんだって。」
シャールヴィ「兄様って…ゼルより?
誰だそりゃ?」
シグルズ「まさか…ラグナの事か…⁉︎」
アッシュ「あぁ、ゼルを一騎討ちで倒したらしいぜ。」
ゼル「…私は倒された訳ではない…!」
リリィ「アンタは負けたんだよ。
潔く認めな。」
シグルズ「ククク…ついこないだまで坊ちゃん呼ばわりしてたのになぁ…まさかそれ程までになっちまったとは…面白すぎるぜ…!」





続く…
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