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外典 ドラゴンハンター
ep.3 不死身の騎士
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メリュジーヌ「…そうか、ではこちらは引き続き魔法石を探索する。
そちらの事は頼む。」
それは、伝話鳥を通じての、ランからの連絡だった。
シグルズ「ラグナは治ったのか?」
シェイミー「治ったって…どうやって?」
メリュジーヌ「うむ。
あちらは、アスクレピオンと同様の聖獣の力を得たようだ。」
シェイミー「聖獣って…グレゴリウス王家の?…まさか…」
シグルズ「どういう訳か帝国の姫とそっくりで、同じ能力まで持った嬢ちゃんがいてな。
自分でも、何でそうなのかわからんのだと。」
「…そう…」
シェイミーはそう言うとうつむき、目を伏せた。
メリュジーヌ「……
ランからの情報がもう一つ。
ヴァナヘイム国に、不死身の騎士なる者の噂があるらしいのだが…」
シグルズ「不死身だって?
俺様の専売特許を勝手に…」
シェイミー「それって単に強いという事なのかしら?
それとも、文字通り不死身なのだとしたら…」
メリュジーヌ「魔法の力が関係しておるかもしれぬ。」
シグルズ「誰が本当に不死身の二つ名に相応しいか、教えてやるぜ。」
翼竜に姿を変えたメリュジーヌの背に乗り、ヴァナヘイムを目指す。
夕闇が空を染める頃、地平線の彼方に星の様な無数の光が見えた。
魔法によって供給されている、ヴァナヘイムの街の灯りだ。
シェイミー「綺麗…
あの光が、魔導師達の未来を奪って出来てるなんて、皮肉なものね…」
辿り着いたヴァナヘイムの街で情報収集したところ、この街に魔法を供給する施設は2つ…ヘスペリデスとレルネーと呼ばれているという。
シグルズ「2棟か…面倒だな…」
メリュジーヌ「我が一方を襲撃し陽動しよう。」
シェイミー「私達はその隙にもう一方を探索する訳ね?」
シグルズ「よし、それで行こう。」
レルネーの塔…
翼竜に姿を変えたメリュジーヌが舞い降りる。
ヴァナヘイム兵
「あれは…異形化奇病か⁉︎」
「でかい…!」
「ひ…怯むな!かかれッ!」
一方、ヘスペリデスの塔ではシグルズとシェイミーが機を伺う。
ヴァナヘイム兵
「レルネーから応援要請だ。
かなり手強い異形化奇病が現れたらしいぞ。」
レルネーへの援軍に人員を割かれ、ヘスペリデスの警備は手薄になった。
シグルズとシェイミーは塔に忍び込み、魔法石を持ち出す事に成功する。
シグルズ「簡単過ぎてつまんねぇな。」
シェイミー「…不謹慎ねぇ…
でも急がないと、いずれ魔法石が盗まれた事に気付くわ。
そしたら、レルネーの警備が厳重になる。」
シグルズ「だな。
ひとまずメリュジーヌに連絡だ。」
その頃、ヴァナヘイム兵と交戦中のメリュジーヌだったが、敵は魔法でダメージを回復し、一向に倒れない。
(なるほど、治癒魔法か…やむを得ん。)
強烈なブレス攻撃で、複数のヴァナヘイム兵に致命傷を与えた…はずだったが、それでも尚、再び立ち上がっては挑んでくる。
(蘇生魔法?
それで不死身の騎士と言う訳か…)
そこへ、伝話鳥を通じてシグルズからの連絡が入る。
「こっちは完了だ。
合流ポイントに向かうぜ。」
それを聞くと、翼竜の姿をしたメリュジーヌは、レルネーの塔から飛び去った。
最前線で奮闘していた1人の騎士が、息を切らしながら言う。
「…あれは一体…?
普通の異形化奇病じゃなかった…
(兵士達を見て)
また、お前達の魔法に助けられたな。
感謝する。」
兵士達
「エルキュール様…滅相もありません。」
「お役に立てて光栄であります。」
エルキュール「これからもアテにしてるぞ、お前達。」
兵士達「はっ!」
シグルズ・シェイミーはメリュジーヌと合流した。
シグルズ「ほらよ。」
メリュジーヌ「うむ。
すぐ解放したい所だが、我らの策に気付かれぬ内に次へ行かねばな。」
翼竜に姿を変えたメリュジーヌ、今度はヘスペリデスの塔に舞い降りる。
ヴァナヘイム兵
「…異形化奇病⁉︎」
「今度はこっちか!」
「あれが…レルネーを襲った奴か⁉︎」
一方、レルネーにて、再び機を伺うシグルズとシェイミー。
エルキュール「今度はヘスペリデスだと⁉︎
おのれ…次こそ仕留めてやる。
行くぞ、お前達!」
兵士達「はっ!」
ヘスペリデスからの応援要請を受け、今度はレルネーの警備が手薄になった。
シグルズとシェイミーはレルネーに忍び込む。
その頃、ヘスペリデスに向かっていたエルキュールに、伝話鳥を通じて伝令が入る。
「エルキュール様、大変です!
ヘスペリデスの魔法石が無くなっています!」
エルキュール「何だと⁉︎
……
…まさか⁉︎
おい、今すぐレルネーに引き返すぞ!」
ヴァナヘイム兵「⁉︎
しかし、ヘスペリデスの異形化奇病は⁉︎」
エルキュール「これは陽動だ!
本命はレルネーの魔法石だ!」
ヴァナヘイム兵達は急いでレルネーに引き返す。
ヘスペリデスの塔にて、雑兵達をあしらうメリュジーヌだったが…
(…増援が来ぬ…勘付かれたか?
ならば我もレルネーに向かうか…)
レルネー塔内…
シェイミー「…おかしいわ。
さっきより明らかに警備が厳重になった…」
シグルズ「勘付かれたか?
…しょーがねぇ…コソコソすんのはやめて、正々堂々行こうじゃないの。」
シェイミー「…なんで楽しそうなの?」
兵士達
「‼︎
やはり侵入者が⁉︎」
「同じ手を二度も食うと思うなよ。」
「ヘスペリデスの魔法石を返してもらおう。」
シグルズ「出来るもんなら奪い返してみな。」
ヴァナヘイム兵「たった2人でいい度胸だ。」
だが、兵士達が束になっても、シグルズには敵わなかった。
「つ…強い…!」
そこへ、エルキュールが現れる。
「多勢に無勢ながら大した奮闘ぶり…賊にしておくには惜しい男よ。」
シグルズ「そりゃどーも。」
エルキュール「だが、それもここまでだ。
このエルキュール=オルファスが相手になろう。
(兵士達に向かって)
お前達、手を出すなよ。」
シグルズ「タイマンか、良い心がけだ。
俺様はシグルズ=ヴォルスング。
かかって来な。」
エルキュール「‼︎
噂に名高い革命戦の英雄だと⁉︎
いや…コソ泥紛いが…そんなはずはない。
化けの皮を剥いでやる!」
エルキュールの武器はシグルズ同様、身の丈程もある大剣・マルミアドワーズ。
扱うには相当な腕力を要する。
シグルズ「大したパワーだな。
けどよ…!」
大振りの一撃は外すと隙が大きい。
シグルズはすかさず刃圏の内側に飛び込み、速さと重さを兼ね備えた連撃を浴びせる。
「くっ…強い!
本物のシグルズだとでも…⁉︎」
防戦一方となったエルキュールは徐々に体力が削られていく。
それに伴って動きも鈍り、シグルズの剣を受けきれなくなっていった。
勝負あったかに思われたが、次の瞬間…
「エルキュール様‼︎」
後衛で見守る兵士の1人が手をかざすと、光が放たれ、それを浴びたエルキュールの傷と疲労は瞬く間に回復した。
シグルズ「それで不死身の騎士って訳か…
タイマンが聞いて呆れるぜ。
ま、俺様には丁度いいハンデだけどな。」
エルキュール「余計な真似を…」
ヴァナヘイム兵「申し訳ありません!
しかし、我々の任務は塔の警備と魔法石の奪還であります!」
エルキュール「…そうだったな。
(シグルズを見て)
勝負は俺の負けだ。
…が、ここからは任務を全うさせてもらおう。」
シグルズ「都合のいいこった。」
その時、ヴァナヘイム兵達の背後から暴風が吹き荒れ、兵達を弾き飛ばす。
それはメリュジーヌの魔法だった。
エルキュール「さっきの異形化奇病?
…いや、こ…子供?」
シグルズ「遅ぇーよ。」
メリュジーヌ「なに、『たいまん』とやらに水を差しては悪いと思ってな。
だが、それももはや反故であろう?」
シグルズ「みてーだな。」
そこへ伝令が入る。
ヴァナヘイム兵「エルキュール様、塔の内部に大量の異形化奇病が…!」
エルキュール「何だと⁉︎
貴様ら…一体どこからどうやって…?」
シグルズ「そりゃ俺らの仕業じゃねぇよ。」
シェイミー「きっと、中の魔導師が異形化奇病化したんだわ!」
エルキュール「何を言っている?
魔導師が異形化奇病化だと⁉︎」
メリュジーヌ「異形化奇病とは、魔法を使い過ぎた魔導師の成れの果てなのじゃ。」
エルキュール「…そんな…馬鹿な…!」
シェイミー「ここは一旦休戦しましょう⁉︎」
シグルズ「だな。
続きがやりてぇなら、異形化奇病を片付けた後で受けて立つからよ。」
エルキュール「くっ…
…ならばお前達には、逃げぬよう俺と同行してもらう。
(兵達に向かって)
塔内の魔導師達を避難させつつ、異形化奇病を駆逐するぞ!」
兵士達「はっ!」
かくして一行は、ヴァナヘイム兵達と共闘する事となる。
異形化奇病との戦闘において、メリュジーヌの力を目の当たりにしたエルキュールは、大いに驚き、言った。
「お…おい、あの子供、今、異形化奇病に…⁉︎」
メリュジーヌ「異形化奇病ではない。
我は竜…森羅万象の理を司る、古の種族の末裔じゃ。
そして魔法石とは、アグエル文明によって封印されし、我が眷属の魂が宿りし骸…
我らはそれを解き放ち、その力を受け継ぐべく旅をしておる。」
シェイミー「つまり、本来この子が持って然るべき物なのよ、魔法石って。」
エルキュール「…信じられん…いや、信じんぞ、俺は…!」
シグルズ「じゃあ、その目で見てみるか?
なぁ、メリュジーヌ。」
「よかろう。」
メリュジーヌはそう言うと、先程ヘスペリデスで手に入れた魔法石を取り出し、唱えた。
「忌まわしきアグエル文明により封印されし我が眷族よ…
その戒めを今、解き放たん。」
すると魔法石は砕け散って光の粒子となり、黄金の多頭竜の姿を象った。
「我はラドン。
我が戒めを解き放てし眷族よ…
汝が力を我に示せば、盟約に従い我が力を授けん。」
エルキュール「…こ、これが…竜…⁉︎」
シグルズ「迂闊に近づくと殺されるぜ。
ビビったんなら、指を咥えて観てな。」
エルキュール「ばッ…馬鹿を言うな!」
ラドンの複数の首が襲い来る。
それらは、いくら攻撃しても力尽きる気配がなかった。
エルキュール「どういう事だ⁉︎一向に倒れん!」
シェイミー「…ねぇ、あれ…」
シェイミーの視線の先には、1つだけ攻撃して来ない、一際大きな竜の頭があった。
シグルズ「アイツが本体か⁉︎」
メリュジーヌ「…その様じゃな。
前衛はそのまま攻撃を引きつけよ。
我の魔法とシェイミーの弓で本体を叩く。
…盟約に従い受け継ぎし火竜の力と、其を振るうに相応しき姿を解き放たん…」
シグルズとエルキュールが襲い来る首を引きつけ、メリュジーヌとシェイミーが本体を攻撃し続けると、やがて本体は力尽き、それに伴い襲い来る首も沈黙する。
「見事なり…盟約に従い我が力を汝に授けん。」
ラドンはそう言うと、砕け散って無数の光の粒子となり、メリュジーヌに吸収された。
かくしてメリュジーヌは回復魔法の力を得るが、この戦いでエルキュールが負傷していた。
そこへヴァナヘイム兵が駆け寄る。
「ご無事ですか、エルキュール様⁉︎
お待ち下さい、今…」
エルキュール「いや…魔法は使うな。」
兵士「⁉︎
このような者達の言葉を信じるのですか⁉︎」
エルキュール「…信じたくはないが…
お前達に与えられた力を、なぜ俺が持つ事は許されなかったのか…?
俺が言うのも何だが、貴族どもの考えそうな事だ。」
兵士「…では、我々は…」
エルキュール「案ずるな。
全てが証明された訳ではない。
だが、証明されるまで、念のため控えろというだけの話だ。」
兵士「…承知しました。」
続く…
そちらの事は頼む。」
それは、伝話鳥を通じての、ランからの連絡だった。
シグルズ「ラグナは治ったのか?」
シェイミー「治ったって…どうやって?」
メリュジーヌ「うむ。
あちらは、アスクレピオンと同様の聖獣の力を得たようだ。」
シェイミー「聖獣って…グレゴリウス王家の?…まさか…」
シグルズ「どういう訳か帝国の姫とそっくりで、同じ能力まで持った嬢ちゃんがいてな。
自分でも、何でそうなのかわからんのだと。」
「…そう…」
シェイミーはそう言うとうつむき、目を伏せた。
メリュジーヌ「……
ランからの情報がもう一つ。
ヴァナヘイム国に、不死身の騎士なる者の噂があるらしいのだが…」
シグルズ「不死身だって?
俺様の専売特許を勝手に…」
シェイミー「それって単に強いという事なのかしら?
それとも、文字通り不死身なのだとしたら…」
メリュジーヌ「魔法の力が関係しておるかもしれぬ。」
シグルズ「誰が本当に不死身の二つ名に相応しいか、教えてやるぜ。」
翼竜に姿を変えたメリュジーヌの背に乗り、ヴァナヘイムを目指す。
夕闇が空を染める頃、地平線の彼方に星の様な無数の光が見えた。
魔法によって供給されている、ヴァナヘイムの街の灯りだ。
シェイミー「綺麗…
あの光が、魔導師達の未来を奪って出来てるなんて、皮肉なものね…」
辿り着いたヴァナヘイムの街で情報収集したところ、この街に魔法を供給する施設は2つ…ヘスペリデスとレルネーと呼ばれているという。
シグルズ「2棟か…面倒だな…」
メリュジーヌ「我が一方を襲撃し陽動しよう。」
シェイミー「私達はその隙にもう一方を探索する訳ね?」
シグルズ「よし、それで行こう。」
レルネーの塔…
翼竜に姿を変えたメリュジーヌが舞い降りる。
ヴァナヘイム兵
「あれは…異形化奇病か⁉︎」
「でかい…!」
「ひ…怯むな!かかれッ!」
一方、ヘスペリデスの塔ではシグルズとシェイミーが機を伺う。
ヴァナヘイム兵
「レルネーから応援要請だ。
かなり手強い異形化奇病が現れたらしいぞ。」
レルネーへの援軍に人員を割かれ、ヘスペリデスの警備は手薄になった。
シグルズとシェイミーは塔に忍び込み、魔法石を持ち出す事に成功する。
シグルズ「簡単過ぎてつまんねぇな。」
シェイミー「…不謹慎ねぇ…
でも急がないと、いずれ魔法石が盗まれた事に気付くわ。
そしたら、レルネーの警備が厳重になる。」
シグルズ「だな。
ひとまずメリュジーヌに連絡だ。」
その頃、ヴァナヘイム兵と交戦中のメリュジーヌだったが、敵は魔法でダメージを回復し、一向に倒れない。
(なるほど、治癒魔法か…やむを得ん。)
強烈なブレス攻撃で、複数のヴァナヘイム兵に致命傷を与えた…はずだったが、それでも尚、再び立ち上がっては挑んでくる。
(蘇生魔法?
それで不死身の騎士と言う訳か…)
そこへ、伝話鳥を通じてシグルズからの連絡が入る。
「こっちは完了だ。
合流ポイントに向かうぜ。」
それを聞くと、翼竜の姿をしたメリュジーヌは、レルネーの塔から飛び去った。
最前線で奮闘していた1人の騎士が、息を切らしながら言う。
「…あれは一体…?
普通の異形化奇病じゃなかった…
(兵士達を見て)
また、お前達の魔法に助けられたな。
感謝する。」
兵士達
「エルキュール様…滅相もありません。」
「お役に立てて光栄であります。」
エルキュール「これからもアテにしてるぞ、お前達。」
兵士達「はっ!」
シグルズ・シェイミーはメリュジーヌと合流した。
シグルズ「ほらよ。」
メリュジーヌ「うむ。
すぐ解放したい所だが、我らの策に気付かれぬ内に次へ行かねばな。」
翼竜に姿を変えたメリュジーヌ、今度はヘスペリデスの塔に舞い降りる。
ヴァナヘイム兵
「…異形化奇病⁉︎」
「今度はこっちか!」
「あれが…レルネーを襲った奴か⁉︎」
一方、レルネーにて、再び機を伺うシグルズとシェイミー。
エルキュール「今度はヘスペリデスだと⁉︎
おのれ…次こそ仕留めてやる。
行くぞ、お前達!」
兵士達「はっ!」
ヘスペリデスからの応援要請を受け、今度はレルネーの警備が手薄になった。
シグルズとシェイミーはレルネーに忍び込む。
その頃、ヘスペリデスに向かっていたエルキュールに、伝話鳥を通じて伝令が入る。
「エルキュール様、大変です!
ヘスペリデスの魔法石が無くなっています!」
エルキュール「何だと⁉︎
……
…まさか⁉︎
おい、今すぐレルネーに引き返すぞ!」
ヴァナヘイム兵「⁉︎
しかし、ヘスペリデスの異形化奇病は⁉︎」
エルキュール「これは陽動だ!
本命はレルネーの魔法石だ!」
ヴァナヘイム兵達は急いでレルネーに引き返す。
ヘスペリデスの塔にて、雑兵達をあしらうメリュジーヌだったが…
(…増援が来ぬ…勘付かれたか?
ならば我もレルネーに向かうか…)
レルネー塔内…
シェイミー「…おかしいわ。
さっきより明らかに警備が厳重になった…」
シグルズ「勘付かれたか?
…しょーがねぇ…コソコソすんのはやめて、正々堂々行こうじゃないの。」
シェイミー「…なんで楽しそうなの?」
兵士達
「‼︎
やはり侵入者が⁉︎」
「同じ手を二度も食うと思うなよ。」
「ヘスペリデスの魔法石を返してもらおう。」
シグルズ「出来るもんなら奪い返してみな。」
ヴァナヘイム兵「たった2人でいい度胸だ。」
だが、兵士達が束になっても、シグルズには敵わなかった。
「つ…強い…!」
そこへ、エルキュールが現れる。
「多勢に無勢ながら大した奮闘ぶり…賊にしておくには惜しい男よ。」
シグルズ「そりゃどーも。」
エルキュール「だが、それもここまでだ。
このエルキュール=オルファスが相手になろう。
(兵士達に向かって)
お前達、手を出すなよ。」
シグルズ「タイマンか、良い心がけだ。
俺様はシグルズ=ヴォルスング。
かかって来な。」
エルキュール「‼︎
噂に名高い革命戦の英雄だと⁉︎
いや…コソ泥紛いが…そんなはずはない。
化けの皮を剥いでやる!」
エルキュールの武器はシグルズ同様、身の丈程もある大剣・マルミアドワーズ。
扱うには相当な腕力を要する。
シグルズ「大したパワーだな。
けどよ…!」
大振りの一撃は外すと隙が大きい。
シグルズはすかさず刃圏の内側に飛び込み、速さと重さを兼ね備えた連撃を浴びせる。
「くっ…強い!
本物のシグルズだとでも…⁉︎」
防戦一方となったエルキュールは徐々に体力が削られていく。
それに伴って動きも鈍り、シグルズの剣を受けきれなくなっていった。
勝負あったかに思われたが、次の瞬間…
「エルキュール様‼︎」
後衛で見守る兵士の1人が手をかざすと、光が放たれ、それを浴びたエルキュールの傷と疲労は瞬く間に回復した。
シグルズ「それで不死身の騎士って訳か…
タイマンが聞いて呆れるぜ。
ま、俺様には丁度いいハンデだけどな。」
エルキュール「余計な真似を…」
ヴァナヘイム兵「申し訳ありません!
しかし、我々の任務は塔の警備と魔法石の奪還であります!」
エルキュール「…そうだったな。
(シグルズを見て)
勝負は俺の負けだ。
…が、ここからは任務を全うさせてもらおう。」
シグルズ「都合のいいこった。」
その時、ヴァナヘイム兵達の背後から暴風が吹き荒れ、兵達を弾き飛ばす。
それはメリュジーヌの魔法だった。
エルキュール「さっきの異形化奇病?
…いや、こ…子供?」
シグルズ「遅ぇーよ。」
メリュジーヌ「なに、『たいまん』とやらに水を差しては悪いと思ってな。
だが、それももはや反故であろう?」
シグルズ「みてーだな。」
そこへ伝令が入る。
ヴァナヘイム兵「エルキュール様、塔の内部に大量の異形化奇病が…!」
エルキュール「何だと⁉︎
貴様ら…一体どこからどうやって…?」
シグルズ「そりゃ俺らの仕業じゃねぇよ。」
シェイミー「きっと、中の魔導師が異形化奇病化したんだわ!」
エルキュール「何を言っている?
魔導師が異形化奇病化だと⁉︎」
メリュジーヌ「異形化奇病とは、魔法を使い過ぎた魔導師の成れの果てなのじゃ。」
エルキュール「…そんな…馬鹿な…!」
シェイミー「ここは一旦休戦しましょう⁉︎」
シグルズ「だな。
続きがやりてぇなら、異形化奇病を片付けた後で受けて立つからよ。」
エルキュール「くっ…
…ならばお前達には、逃げぬよう俺と同行してもらう。
(兵達に向かって)
塔内の魔導師達を避難させつつ、異形化奇病を駆逐するぞ!」
兵士達「はっ!」
かくして一行は、ヴァナヘイム兵達と共闘する事となる。
異形化奇病との戦闘において、メリュジーヌの力を目の当たりにしたエルキュールは、大いに驚き、言った。
「お…おい、あの子供、今、異形化奇病に…⁉︎」
メリュジーヌ「異形化奇病ではない。
我は竜…森羅万象の理を司る、古の種族の末裔じゃ。
そして魔法石とは、アグエル文明によって封印されし、我が眷属の魂が宿りし骸…
我らはそれを解き放ち、その力を受け継ぐべく旅をしておる。」
シェイミー「つまり、本来この子が持って然るべき物なのよ、魔法石って。」
エルキュール「…信じられん…いや、信じんぞ、俺は…!」
シグルズ「じゃあ、その目で見てみるか?
なぁ、メリュジーヌ。」
「よかろう。」
メリュジーヌはそう言うと、先程ヘスペリデスで手に入れた魔法石を取り出し、唱えた。
「忌まわしきアグエル文明により封印されし我が眷族よ…
その戒めを今、解き放たん。」
すると魔法石は砕け散って光の粒子となり、黄金の多頭竜の姿を象った。
「我はラドン。
我が戒めを解き放てし眷族よ…
汝が力を我に示せば、盟約に従い我が力を授けん。」
エルキュール「…こ、これが…竜…⁉︎」
シグルズ「迂闊に近づくと殺されるぜ。
ビビったんなら、指を咥えて観てな。」
エルキュール「ばッ…馬鹿を言うな!」
ラドンの複数の首が襲い来る。
それらは、いくら攻撃しても力尽きる気配がなかった。
エルキュール「どういう事だ⁉︎一向に倒れん!」
シェイミー「…ねぇ、あれ…」
シェイミーの視線の先には、1つだけ攻撃して来ない、一際大きな竜の頭があった。
シグルズ「アイツが本体か⁉︎」
メリュジーヌ「…その様じゃな。
前衛はそのまま攻撃を引きつけよ。
我の魔法とシェイミーの弓で本体を叩く。
…盟約に従い受け継ぎし火竜の力と、其を振るうに相応しき姿を解き放たん…」
シグルズとエルキュールが襲い来る首を引きつけ、メリュジーヌとシェイミーが本体を攻撃し続けると、やがて本体は力尽き、それに伴い襲い来る首も沈黙する。
「見事なり…盟約に従い我が力を汝に授けん。」
ラドンはそう言うと、砕け散って無数の光の粒子となり、メリュジーヌに吸収された。
かくしてメリュジーヌは回復魔法の力を得るが、この戦いでエルキュールが負傷していた。
そこへヴァナヘイム兵が駆け寄る。
「ご無事ですか、エルキュール様⁉︎
お待ち下さい、今…」
エルキュール「いや…魔法は使うな。」
兵士「⁉︎
このような者達の言葉を信じるのですか⁉︎」
エルキュール「…信じたくはないが…
お前達に与えられた力を、なぜ俺が持つ事は許されなかったのか…?
俺が言うのも何だが、貴族どもの考えそうな事だ。」
兵士「…では、我々は…」
エルキュール「案ずるな。
全てが証明された訳ではない。
だが、証明されるまで、念のため控えろというだけの話だ。」
兵士「…承知しました。」
続く…
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誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
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