55 / 67
本編 第三部
ep.43 参戦
しおりを挟む
異形化奇病化したレラジェとヴァラクを、激戦の末に葬ったエルキュールとパーシアス。
街を見渡すと火の海となっていた。
エルキュール「なんだ…これは…⁉︎」
急いで領主邸に向かうとメロディアナが走って来た。
「パーシアス様!」
パーシアス「メロディアナ!無事でよかった…!
でも、これは一体…?」
メロディアナ「わかりません…兵士達が突然、街に火を放ったのです。
兵士に抗議した人達は殺されて…街の出入り口も封鎖されてしまいました。」
エルキュール「奴ら、一体どういうつもりだ…⁉︎」
エルキュールとパーシアスが街の出入り口に向かうと、メロディアナの言った通り、ムスペルヘイム兵によって封鎖されていた。
エルキュール「貴様ら、一体どういうつもりだ⁉︎」
ムスペルヘイム兵「…この街は、敵国の襲撃により滅び去った…という筋書きさ。」
パーシアス「…なるほど…そういう事か。
自分達だけではあの2人を手に負えず、かといってアースガルドへの侵攻を前に、大規模な増援も見込めない。
だから街ごと焼き払ってしまおうと…」
エルキュール「だが、あの2人なら俺達が葬ったぞ。」
ムスペルヘイム兵「何⁉︎あのバケモノを⁉︎」
パーシアス「…自分達の不始末に街の人々を巻き込む君達の心にこそ、バケモノが棲んでると思うけどね。」
ムスペルヘイム兵「不始末?何の事だ?
死にゆく者の言葉は届かんなぁ。」
エルキュール「クズどもが…そうはいくか!」
2人は人々の避難経路を開くべく、街の出入り口を封鎖しているムスペルヘイム兵達と対峙する。
…が、異形化奇病との激戦で疲弊している上に、多勢に無勢。
もはやこれまでか、と思われたその時…
「エルキュール様、パーシアス様‼︎」
そこに駆けつけたのは、エルキュール直属の兵士達だった。
ムスペルヘイム兵「きっ…貴様ら‼︎
軍の越境とは、宣戦布告に等しい行為だぞ‼︎」
パーシアス「フッ…
投降した者も…同盟国の貴族も…自国の民すらも殺そうとした君達が、今さらルールを語るのかい?」
援軍との挟撃によってムスペルヘイム兵は掃討された。
ヴァナヘイム兵「各員は避難民の救援にあたれ!
(エルキュール・パーシアスを見て)
遅くなりまして申し訳ありません!」
エルキュール「いや、よく来てくれた。
またお前達に命を救われたぞ。」
パーシアス「でも、いかに同盟国とはいえ、よく軍団規模で越境して来れたね。」
ヴァナヘイム兵「エルキュール様が、パーシアス様の御身が危ないかも知れないと仰っていたので、各自各々で越境したのち集結したのです。」
「そうだったのか…いや、ありがとう君達…!
エルキュール、お前もね。」
パーシアスの言葉にエルキュールは頭を掻く。
ヴァナヘイム兵「…ですが、我々の行動によりムスペルヘイムとの同盟関係は…」
エルキュール「そんなもの、こっちから願い下げだ!」
パーシアス「あぁ、エティオフの避難民達が今回の件について証言してくれれば、私達の行動の正当性は証明される。
…皮肉な事だけど、アースガルドにとっても、これが追い風になるかもしれないな…」
ヴァナヘイム議会…
「デウス卿、貴殿の御子息がやってくれましたなぁ。」
1人の貴族の言葉にデウスが返す。
「あぁ、私は息子達を誇りに思うよ。」
貴族「誇りですと…?ふざけなさるな。
隣国は、拉致された臣民を返還せよと要求してきているのですぞ!」
デウス「その隣国の臣民は、自国の街に火を放ち、それに抗議した者を殺したのは他ならぬムスペルヘイム兵だと、口を揃えて証言している。」
貴族「なんと⁉︎
しかし、何故そのような事を…?」
デウス「愚息達の話では、ムスペルヘイム軍は、武器を捨て投降した帝国兵に射掛けるという、士道に反した行いをしたと…
それが元で反撃に遭い、逆に手に負えなくなった故、街ごと焼き払わんとした。
一部始終を見た愚息達の口封じを兼ねてな。」
貴族達
「なんと…その話が本当なら…いや、他ならぬ隣国臣民が証言しているなら、御子息達の行動は人道支援として成立する。」
「それどころか、難民を救済する我が軍に対し、隣国が不当な攻撃を行ったと判断できるのでは?」
デウス「それについてだが…
知っての通り、現在ムスペルヘイムはヨトゥンヘイムと手を結び、アースガルドと交戦状態にある。
もし、かような国がアースガルドを制した場合、次の矛先が我が国に向かわないと言い切れるだろうか?」
貴族達
「確かに…それについては、ヨトゥンヘイムが参戦を表明した時点で、危惧するところではあった。」
「2対1で叩かれるよりは、2対2で…という事か。」
デウス「進んで戦火を交えたい訳ではないが、非難声明と停戦勧告を発した上で、応じぬ場合は参戦も辞さぬ姿勢を表明すべきと考える。」
貴族達
「デウス卿の意見に賛同する。
異議のある者は?」
「……
続く…
街を見渡すと火の海となっていた。
エルキュール「なんだ…これは…⁉︎」
急いで領主邸に向かうとメロディアナが走って来た。
「パーシアス様!」
パーシアス「メロディアナ!無事でよかった…!
でも、これは一体…?」
メロディアナ「わかりません…兵士達が突然、街に火を放ったのです。
兵士に抗議した人達は殺されて…街の出入り口も封鎖されてしまいました。」
エルキュール「奴ら、一体どういうつもりだ…⁉︎」
エルキュールとパーシアスが街の出入り口に向かうと、メロディアナの言った通り、ムスペルヘイム兵によって封鎖されていた。
エルキュール「貴様ら、一体どういうつもりだ⁉︎」
ムスペルヘイム兵「…この街は、敵国の襲撃により滅び去った…という筋書きさ。」
パーシアス「…なるほど…そういう事か。
自分達だけではあの2人を手に負えず、かといってアースガルドへの侵攻を前に、大規模な増援も見込めない。
だから街ごと焼き払ってしまおうと…」
エルキュール「だが、あの2人なら俺達が葬ったぞ。」
ムスペルヘイム兵「何⁉︎あのバケモノを⁉︎」
パーシアス「…自分達の不始末に街の人々を巻き込む君達の心にこそ、バケモノが棲んでると思うけどね。」
ムスペルヘイム兵「不始末?何の事だ?
死にゆく者の言葉は届かんなぁ。」
エルキュール「クズどもが…そうはいくか!」
2人は人々の避難経路を開くべく、街の出入り口を封鎖しているムスペルヘイム兵達と対峙する。
…が、異形化奇病との激戦で疲弊している上に、多勢に無勢。
もはやこれまでか、と思われたその時…
「エルキュール様、パーシアス様‼︎」
そこに駆けつけたのは、エルキュール直属の兵士達だった。
ムスペルヘイム兵「きっ…貴様ら‼︎
軍の越境とは、宣戦布告に等しい行為だぞ‼︎」
パーシアス「フッ…
投降した者も…同盟国の貴族も…自国の民すらも殺そうとした君達が、今さらルールを語るのかい?」
援軍との挟撃によってムスペルヘイム兵は掃討された。
ヴァナヘイム兵「各員は避難民の救援にあたれ!
(エルキュール・パーシアスを見て)
遅くなりまして申し訳ありません!」
エルキュール「いや、よく来てくれた。
またお前達に命を救われたぞ。」
パーシアス「でも、いかに同盟国とはいえ、よく軍団規模で越境して来れたね。」
ヴァナヘイム兵「エルキュール様が、パーシアス様の御身が危ないかも知れないと仰っていたので、各自各々で越境したのち集結したのです。」
「そうだったのか…いや、ありがとう君達…!
エルキュール、お前もね。」
パーシアスの言葉にエルキュールは頭を掻く。
ヴァナヘイム兵「…ですが、我々の行動によりムスペルヘイムとの同盟関係は…」
エルキュール「そんなもの、こっちから願い下げだ!」
パーシアス「あぁ、エティオフの避難民達が今回の件について証言してくれれば、私達の行動の正当性は証明される。
…皮肉な事だけど、アースガルドにとっても、これが追い風になるかもしれないな…」
ヴァナヘイム議会…
「デウス卿、貴殿の御子息がやってくれましたなぁ。」
1人の貴族の言葉にデウスが返す。
「あぁ、私は息子達を誇りに思うよ。」
貴族「誇りですと…?ふざけなさるな。
隣国は、拉致された臣民を返還せよと要求してきているのですぞ!」
デウス「その隣国の臣民は、自国の街に火を放ち、それに抗議した者を殺したのは他ならぬムスペルヘイム兵だと、口を揃えて証言している。」
貴族「なんと⁉︎
しかし、何故そのような事を…?」
デウス「愚息達の話では、ムスペルヘイム軍は、武器を捨て投降した帝国兵に射掛けるという、士道に反した行いをしたと…
それが元で反撃に遭い、逆に手に負えなくなった故、街ごと焼き払わんとした。
一部始終を見た愚息達の口封じを兼ねてな。」
貴族達
「なんと…その話が本当なら…いや、他ならぬ隣国臣民が証言しているなら、御子息達の行動は人道支援として成立する。」
「それどころか、難民を救済する我が軍に対し、隣国が不当な攻撃を行ったと判断できるのでは?」
デウス「それについてだが…
知っての通り、現在ムスペルヘイムはヨトゥンヘイムと手を結び、アースガルドと交戦状態にある。
もし、かような国がアースガルドを制した場合、次の矛先が我が国に向かわないと言い切れるだろうか?」
貴族達
「確かに…それについては、ヨトゥンヘイムが参戦を表明した時点で、危惧するところではあった。」
「2対1で叩かれるよりは、2対2で…という事か。」
デウス「進んで戦火を交えたい訳ではないが、非難声明と停戦勧告を発した上で、応じぬ場合は参戦も辞さぬ姿勢を表明すべきと考える。」
貴族達
「デウス卿の意見に賛同する。
異議のある者は?」
「……
続く…
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説

セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。


明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

地獄の業火に焚べるのは……
緑谷めい
恋愛
伯爵家令嬢アネットは、17歳の時に2つ年上のボルテール侯爵家の長男ジェルマンに嫁いだ。親の決めた政略結婚ではあったが、小さい頃から婚約者だった二人は仲の良い幼馴染だった。表面上は何の問題もなく穏やかな結婚生活が始まる――けれど、ジェルマンには秘密の愛人がいた。学生時代からの平民の恋人サラとの関係が続いていたのである。
やがてアネットは男女の双子を出産した。「ディオン」と名付けられた男児はジェルマンそっくりで、「マドレーヌ」と名付けられた女児はアネットによく似ていた。
※ 全5話完結予定
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる