没データまで攻略して真コンプリート【アナザー・ダイヴ・リワールド】~おっさんゲーマーやり込み過去プレイデータでリメイクVRMMOを征す~

カズサノスケ

文字の大きさ
上 下
4 / 5
第1章 ファイナル・サーガⅦ遺跡

第3話 セカンドヒロインと供に

しおりを挟む
 ファイナル・サーガはファミコン時代に発売されたレトロゲームである。

 販売元の『エリプス社』はそれまでに何本ものゲームが大コケして多額の負債を抱えていた。これが最後の賭け、そのつもりで制作したファイナル・サーガは記録的なヒット作となり2作目、3作目とシリーズ化された。

 そもそも土壇場の挑戦から始まっている為か、シリーズを重ねる度毎に革新的な試みがなされた。ただ、その様な行いには多くの失敗が伴いそれらは大量の没データと化した。

 古代遺跡群《アナザー・ダイヴ・リワールド》にシリーズ1作目のワールドがオープンし、2作目、3作目と続いた頃。このシリーズは妙に掘り甲斐があると感じ始めた発掘プレイヤーたちによって、掘り出した没データに異名が付けられる様になった。『エリプス文明の黒歴史』と。


「さて、どこから手をつけようか。こいつは結構な埋没量になるぞ」

 俺が古代遺跡群《アナザー・ダイヴ・リワールド》へ入った時に受付係のフェアリーシステムから教えられたコンプリート率は88%だった。モンスターやらアイテムなんかの回収率を示す図鑑はオリジナル版の時からあって100%になっていたはず。それがそこまで落ちた。

「まあ、基本は没モンスターと没アイテムからになるだろうな」

 どんなゲームにも共通する事だが没モンスターと没アイテムは結構多く埋もれていて、トータルではそれなりの割合を占める。シナリオとかシステムを変えるのは作品の根幹に関わる大仕事だが、そっちは枝葉の様なもので変更しやすいからだろう。

 没モンスターが没アイテムをドロップする場合は一石二鳥。で、意外と見落としがちなのは正規採用モンスターのドロップアイテムが没になっていた場合だ。オリジナル版では何回狩っても何も落とさなかった、それが古代遺跡群《アナザー・ダイヴ・リワールド》でやってみたら没アイテムを落としたなんてのは発掘プレイあるある。

 そんなわけで初回プレイと同じ順にフィールドをめぐりモンスターをしばきまくる、町やらダンジョンやらへも立ち寄る事にしよう。没クエストなんかが湧き出していたらついでに回収の方針。結局、発掘のテンプレでしかないのだが。

 ほんと、この地道感あふれる作業ってハケで土を丁寧に掃く様な本物の遺跡発掘とそっくりだ。


 道すがら遭遇するモンスターとの戦闘は実に楽。パーティメンバー6人ともLv70カンスト、面倒クエ突破で入手の専用装備も全員が揃っているのだから。

 当時のバトルシステムのままに4人までしか参加出来ないバトルでは2人が待機となる。このパーティにおける補欠の人選は簡単だ。モンスターを瞬殺するので回復の必要なし、1人はヒーラーの爺さん。もう1人は、動くのが面倒だからという理由で俺が直接操る主人公《オクラ》。以上が安定の補欠ポジションだ。

 バトルに出す4人は適当に指示しておけば勝手に戦ってくれる。オリジナルの頃はいちいちコマンド入力だったが、そこはAI活用で便利に仕様変更。ファミコン時代からAIによるオートバトルというものはあったがポンコツなだけ。ほんと、時代の進化を実感出来るほど優秀になった。

 この自分で何もしなくても誰かがやってくれる感じって最高だわ。朝起きれば朝飯が出て来て、昼も夜も自動的に。冷蔵庫の中も勝手に補充されてるしな。俺が謳歌している至福の実家暮らしとよく似ている。

 そう言えば、6人中の4人しかバトルに入れないってリアルで考えれば実におかしな話だ。何かしら全員で連携していないのは不自然、仲間が必死に戦っている最中に何をしている?という話にもなる。

 その不自然を自然なものにする為に自動生成AIが出した答えは…、荷物の守衛係の様だ。バトルに入ると、山積みの所持アイテムの前で2人が強制的に仁王立ちさせられる。

 で、メンバーチェンジの際は手と手でタッチというプロレス方式を採用…。なんか、古代遺跡群《アナザー・ダイヴ・リワールド》で使っているAIは妙な学習癖がついている様な気も…。


 そんな観戦を繰り返し。いくつかの没モンスターを狩り、いくつかの没アイテムを手に入れた。

「ヘイケノカブトにヘイケノコテ? きっと一式揃う平家シリーズ装備って事だろうな」

 妙に防御性能が高い。主人公《オクラ》が装備出来るようなのでそうしてみた。残念ながら、きっとあるはずの鎧は未入手だが。

「なんか、観光地で見かける浮かれた外国人観光客状態だな…」

 スクショして確認してみた感想…。その浮かれた外国人観光客でモンスター戦を繰り返してみた。

「なるほど、盛者必衰の理だったか……」

 使ってみてわかった、平家物語そのものだった。最初は隆盛を誇っているが次第に落ちて行く、それを表わすかの様に戦闘を経験する度に防御力が落ちていき最終的には1になる。このゲームの冒頭で装備している村人の服と同程度だ。

 防御力が落ちる度に少々ビジュアルが変化するのはフルダイブ化の影響だろうな。組紐がほつれ、鉄板が剥がれ落ち、気が付けば矢が刺さっていて。

「徐々に落ち武者感が増しているじゃないか」

 まあ、あってもいいが別になくてもいいネタ装備のようなもの。容量の関係で没にされたかな?

「南無三……」

 落ち武者っぽい恰好になっているせいもあってか没アイテムに向かって手を合わせてしまった。はっきり言って使えないが性能なんてどうでもいい、没データを掘った事実のみが重要なのだから

「じょうしゃひっすい? おちむしゃ? なむさん? ねぇ、主人公《オクラ》。さっきから何を言っているの?」

「あぁ、マリカ、ごめん。何でもないから気にしないでくれ」

 戦闘を終えたところで俺の右隣からそう声をかけてきたのは仲間、星に選ばれし者の1人、マリカだった。彼女は戦闘要員としては攻撃魔法のエキスパートにあたる。

 俺の言葉に彼女が首を傾げたのも仕方ない。ゲーム世界に直接関係ない様な言葉は理解出来ない様に制限がかかっているらしい。

 何でも、他のとあるゲームのワールドでプレイヤーによる女性キャラへのセクハラ事件が起きたとか。フルダイヴ型のゲームがぶち当たるべくして当たった壁だが未だこれといった対策はない様だ。現状プレイヤーのモラルに一存らしい

 まあ、色々と課題は残るがレトロゲームがフルダイブ型で甦った事で、苦楽を共にした昔の仲間と初めて会話が出来る様になったのは嬉しい進化だ。

「行こうか、マリカ」

「そうだね。私達には目指すところがある」

 特にセカンドヒロインとも呼ばれるマリカとは。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

我ら新興文明保護艦隊

ビーデシオン
SF
もしも道行く野良猫が、百戦錬磨の獣戦士だったら? もしも冴えないサラリーマンが、戦争上がりのアンドロイドだったら? これは、実際にそんな空想めいた素性をもって、陰ながら地球を守っているエージェントたちのお話。 ※表紙絵はひのたけきょー(@HinotakeDaYo)様より頂きました!

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

日本VS異世界国家! ー政府が、自衛隊が、奮闘する。

スライム小説家
SF
令和5年3月6日、日本国は唐突に異世界へ転移してしまった。 地球の常識がなにもかも通用しない魔法と戦争だらけの異世界で日本国は生き延びていけるのか!? 異世界国家サバイバル、ここに爆誕!

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

処理中です...