星、満ちる

雪之都鳥

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第三章

第四話

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「ミチル、僕。本当は悪魔の猫なんだ」
「何それ、私信じない」
「本当なんだって」

 ミチルは知っていた。”悪魔の黒猫”という声はミチルの耳にも届いていた。ミチルはずいぶん前から気付いていた。アシュガもエニシダも苗字がない。自分にもトオルにも苗字はあるのにあの二人にはない。おかしいと感じていた。それであのおとぎ話のことで確信したのだ。

「アスターはとても良い子。だから悪魔なんて信じません」
「ミチル・・・・・・ありがとう」

 アスターは言った。

「でも、本当なんだ。僕ね、悪魔なんだ。悪魔だから火にくべられると浄化しちゃうんだ。でも闇になって消えるから痛くもかゆくもないんだよ」

 ミチルは黙ってアスターの顔を見た。

「可愛い悪魔ね」

 ミチルはアスターを抱きかかえた。

「信じてくれた? 」
「うん、信じる」

 アスターはホッとすると、ミチルのベッドに座りミチルを呼んだ。

「お話をしよう、ミチル」
「そうね、会ったばかりの話をしようよ」


 ミチルとアスターは街の郊外で出会った。ミチルは15歳、アスターはまだ子猫だった。アスターは段ボールで眠っていた。捨て猫だったのだ。アスターは真冬の最中、傷だらけでいた。ミチルはその体を抱えて走った。
 
 アシュガはまだ魔学に精を出す成人したばかりの青年で、医師としてもまだ未熟だった。アシュガはアスターを見てこう言った。

「無理だ、そいつは死ぬ」

 ミチルは怒った。

「嘘よ、ミチルがケガをした時は真っ青な顔で治してくれたもん」 
「いや、そいつは間違いなく死ぬ」

 アシュガは頑なに治療を行うのを拒んだ。ミチルは言った。

「アシュガなんか大っ嫌い、顔も見たくない」

 アシュガは文字通り顔を真っ青にした。

「ミチル、そんなことを言っちゃ」
「大っ嫌い、大嫌い」
「わかった・・・・・・治すから」

 アシュガはアスターを見て呪いにかかっていることを知ってはいたものの、長時間かけて治そうとした。アスターが元気に回復したのを見て、ミチルは両手を挙げて喜んだ。アスターはミチルの家で暮らすことになった。朝起きて、おはようを言うときも、夜、お休みを言うときもいつも一緒だった。

「あの時のアスターったら、小さくて可愛くて。赤ちゃんアスター、ミチルミチルって言って私から片時も離れないの」
「今はたくましくなったでしょ」
「ううん、ぜーんぜん」

 ちぇっと言ってアスターは拗ねたふりをした。そして真剣な顔になった。

「ミチル、僕はミチルを守るために生まれてきたんだ」 
「何それ、本当なの? 」
「本当だよ、ミチルと片時も離れなかったのはそのためなんだ」

 ミチルはアスターを頬に寄せた。

「ありがとう、アスター」
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