星、満ちる

雪之都鳥

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第二章

第十三話

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  クリセンマムの東には古くから続く伝統の遺跡がある。遺跡には昔から受け継がれた、民謡の歌詞を綴った石板やおとぎ話の壁画がある。だがそればかりで遺跡の発掘に駆り出された多くの若者はそ意義を見いだせなかった。
 それでもトモル様の仰せだ、長老様が仰ぐご意見だと信じて遺跡を掘った。
  トモルは遺跡から宝石や小金が発掘されると民に振舞った。民はそれを喜んで売って街は潤いを見せた。トモルはその中で青い宝石を見つけると職人に磨かせた。職人は言った。
 
 「その石はあれに似ていますね」
 
  トモルは整った眉を挙げてその話を聞いた。職人は続ける。
 
 「その石、あの伝説のおとぎ話に出てくる少女の首飾りにそっくりですな」
 「あの、伝説の少女?」
 
  まさか、とトモルは脳裏にアシュガの言葉をよぎらせた。職人はまだ話を続けようとする。
 
 「もういい、わかった。ありがとう。これはミチルに送るよ」
 
  ミチルの名前を聞いて大喜びをする宝石職人に多額な金の鉱石を渡して店を出た。トモルは思う、どうすればいいのだろうかと。そしてそれが運命ならばととうとう追い詰められてしまった。
 
 ★
 
  トモルは机に向かっているミチルの姿を見て声を上げそうになったが古き記憶がよみがえり声を伏せた。ミチル、と声をかける。ビクリ、とミチルの肩がはねた。トモルはミチルの肩に手を置いて子供をなだめるように言った。
 
 「小説はうまく進んでる? 」
 
  ミチルは驚いた顔をしたがやがて穏やかに
 
 「うん、久しぶりに書いたけど順調よ。早く書き上げたい。生きているうちに書いた中で一番と思える作品を」
 
  
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