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第二章
第十話
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ハーレクインではエニシダとボラゴが研究所で暇をつぶしていた。
「アシュガ様ったら、顔真っ赤にしてミチルなんか追いかけて」
エニシダはハイヒールの音をかつかつと鳴らして足を組んで座った。ボラゴはまた始まったとばかりに尻尾を揺らして、前足を舐めた。
「そんなにぶつぶつ文句言ってんなら、追いかけていきいなさんな。そんなこともせずに暇を持て余して。ああ、もう愛しのアスター。今頃クリセンマムで何してるのでしょう」
エニシダは重いため息をついて、窓の外の人だかり眺めた。古くも美しい背の高い家々が居並ぶ街頭。装飾されたドレスを身に着けて歩いていく女達。
「嫌よ、ミチルなんかに精一杯尽くすあの人を見るのは」
「だから、ぶつくさ追いかけていきなさい。それが嫌なら新しい男でも探すんだね」
「嫌っそんなの」
立ち上がって出ていくエニシダを見ながら、悪魔というものはとその後姿を見た。人間界の人達を見下ろし大して変わらないもんだと嘆息する。
______どこもかしこもいなくなったアシュガ先生を賞金付きで探している。
「無駄無駄、クリセンマム」
そんな猫の声も聞こえないほど人は騒いでいる。
「アスター、世界一間抜けで優しいアスター」
そんなアスターの危機をボラゴは肌身で感じ取っていた。
「アスターは世界一優しい悪魔の猫」
人だかりは一層ざわめきを帯びている。
「ミチル、アスターのためにも元気になって」
一滴、涙が垂れた。その涙は花に落ち土の肥やしになる。
「早く戻ってきてアスター」
「アシュガ様ったら、顔真っ赤にしてミチルなんか追いかけて」
エニシダはハイヒールの音をかつかつと鳴らして足を組んで座った。ボラゴはまた始まったとばかりに尻尾を揺らして、前足を舐めた。
「そんなにぶつぶつ文句言ってんなら、追いかけていきいなさんな。そんなこともせずに暇を持て余して。ああ、もう愛しのアスター。今頃クリセンマムで何してるのでしょう」
エニシダは重いため息をついて、窓の外の人だかり眺めた。古くも美しい背の高い家々が居並ぶ街頭。装飾されたドレスを身に着けて歩いていく女達。
「嫌よ、ミチルなんかに精一杯尽くすあの人を見るのは」
「だから、ぶつくさ追いかけていきなさい。それが嫌なら新しい男でも探すんだね」
「嫌っそんなの」
立ち上がって出ていくエニシダを見ながら、悪魔というものはとその後姿を見た。人間界の人達を見下ろし大して変わらないもんだと嘆息する。
______どこもかしこもいなくなったアシュガ先生を賞金付きで探している。
「無駄無駄、クリセンマム」
そんな猫の声も聞こえないほど人は騒いでいる。
「アスター、世界一間抜けで優しいアスター」
そんなアスターの危機をボラゴは肌身で感じ取っていた。
「アスターは世界一優しい悪魔の猫」
人だかりは一層ざわめきを帯びている。
「ミチル、アスターのためにも元気になって」
一滴、涙が垂れた。その涙は花に落ち土の肥やしになる。
「早く戻ってきてアスター」
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