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15.魔王城RTA
しおりを挟む新パーティを結成し、オレ達は勇者の後を追って、最終ダンジョンへと出発した。
勇者の後を追うという性質上、その痕跡を辿っていけば良いのだが……まさに、血の道だった。
この辺りに出てくる魔物というは、一体一体が大きく、小さなダンジョンなら主でもおかしくないレベルの魔物がうようよいる場所だ。だから、元の行程なら、戦うよりなるべく戦闘を避けて、消耗を最小限にして魔王城ダンジョンにたどり着こう、と計画していた。
だけどアレスは、出てくる魔物を一撃必殺で倒して行ったらしい。しかも、普段なら資金源として魔物の素材を持ち帰ったりするが、そういう事もなく、さらに、魔物が死んだ後その死体を食べにくる魔物すら恐れて近づかないくらいの力の差を見せつけてしまったらしく、惨状そのままで放置されていた。
アレスが進んだ後に、道が、出来ていた。魔物の、血の道が。……正直、引いた。他の三人も、ドン引きしていた。
「なんだ、これ」
「うっ……いくら魔物とはいえ、これは、酷いですわ」
心優しいエレフィーナが、惨状を見て口に手を当てていた。
「これ、全部、違う魔法だ……」
アンリも、信じられないという顔で、足元を見ていた。
「私達も、急ごう。今は警戒して出てきていないが、いつ新しい魔物が襲ってくるかわからない」
皆が呆然としている中でいち早く立ち直ったのは、やはりミーナだった。血が乾ききっていないので、おそらく大丈夫だろうと判断し、ミーナを先頭にオレ達は惨状の道を小走りで駆けて行った。
日のある内は駆けて、何とか魔物に遭遇する事なく、夜になった。
思っていた行程より早く移動できていた。それもこれも、アレスが先に行き道を(無自覚ながら)作っていたおかげだった。
念のためエレフィーナが張ってくれた結界の中で野営したが、特に襲われる事もなく、無事に朝を迎える事ができた。
そんな事を三回繰り返すが、一向にアレスに追いつけなかった。途中で、一回魔物に襲われたせいかもしれない。何とか三人(とオレ)で、撃退する事ができたが、それでまた離されてしまったようだ。
そんなこんなで、頑張って追いかけていると、ついに。
「あれが……魔王城」
禍々しくそびえる、黒い尖塔が立ち並ぶ異様な雰囲気の城。
間違えようがない。あれが、最終ダンジョン、魔王城。
三人とも、オレよりさらに異様さや強さを感じているようで、身震いしていた。
「なんと禍々しい建物ですの……」
「なんなの、あの異様な魔力の量は」
「君の悪い雰囲気ね。でも、もう、勇者は入ってしまったみたい」
ミーナの言葉に上だけを見ていたが、視線を落とし入り口の方を見る。
確かに、仰々しく飾られ固く封印されていたであろう大きな扉が、バラバラに爆発四散していた。文字通り。
今では、ぽっかりと口を開けている。
オレ達は、城の異様さにおされてしまったものの、顔を見合わせ、中におそるおそる足を踏み入れていった。
中は、最難関ダンジョンらしく、部屋の至る所に罠がしかけられていたようだったが、目につくものは、ほとんど解除されたか発動した後のようだった。
「うっわ。えぐいわね、これ、前に死にかけた罠じゃない。勇者、これを壊していくって、頭おかしいわ」
アンリが、周りの仕掛けなんかを調べながら、ぶつぶつ呟く。
一応、回復できるエレフィーナを最後尾に、解除されている罠の確認の為に、アンリが先頭で進む事になった。オレも何か役に立ちたかったが、みんなから、その剣を渡す役目をしてくれるだけでお釣りがくる、と必死に止められてしまったので、仕方ない。
「こっちの、魔物を呼び出す罠も、倒して行ってしまったらしいな。切り口がズタズタだから、やはり剣を持っていないようだ」
ミーナは、部屋に転がる魔物の死骸を検分しながら、つぶやく。みな心に想う事は一つだったが、それでも何も言わず、ひたすら前に上に進んでいった。
……アレス、人間を超えてる。
誰も言わなかったが、このダンジョンの攻略スピードを見た者は、全員そう思う事だろう。
そして、ついに。
オレたちはおそらく最上階に通じる階段にたどり着いた。ここまで、一回も戦闘せず来る事ができたのは僥倖だが、三人の顔色がどんどん悪く血の気が引いていたので、本当に強い人の方が、アレスの強さがわかって怖かったようだ。ちなみに、オレは凄いなあと思うぐらいで、実感はわかなかった。
血塗られたようなカーペットが敷かれている、幅広い階段を昇り、廊下に出る。
廊下の正面には、これまた爆発四散した扉の残骸が広がっているので、アレスはあの中に居るのだと知れた。
しかし、明らかに部屋の雰囲気がおかしいし、アンリも魔があり得ない程強い者がいると言うので、オレ達は物陰に隠れるようにして、その部屋に近づいた。
今まで、派手な物音はしなかった。城の中はシーンとしている。
そんな中、目指す部屋の中から、話し声が聞こえてきた。
「オレはお前を父親だなんて認めない!」
一つはアレス。
もう一つは、聞いた事の無い。異様に低い男性の声だった。
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