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理性と感情
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ああ!
そうだよ、馬鹿かオレ! 抑制剤もお守りも、鞄の中に入ってるんだった!
「なに?」
気怠そうな声をあげる司を、ヨイショと自分の上から引きはがし、上体を起こす。そのはずみで、いまだナカにいたモノが抜けた。股間がヌルヌルしすぎてヤバい。
「あれ?」
立ち上がって鞄を取ろうと思ったのに、がくんと、膝が地面についた。
「え、なんで」
はじめての感覚に、理解が追いつかない。
「あれ、大和腰抜けたの? そんなに良かった?」
肘をついて、エロい顔で笑う幼馴染の太ももを軽く叩(はた)く。
「いたっ。そんな恨めしそうな顔しないでよ~。何、鞄取りたいの?」
オレの視線に気づいたのか、司が苦笑して、立ち上がらないまでも四つん這いになって、のしっとわざわざオレを押しつぶしながら鞄をとる。
「つーかーさー」
「はい、どうぞ」
オレの怒った声はスルーして、司は取ってくれた鞄をオレに寄越した。
はあ、と一つ溜息を吐いて、鞄の中身をあさる。
司はその様子を、あぐらをかいて興味深そうに見ていた。おい、その股間のマグナムしまえ。
「何してるの?」
「抑制剤とあふ……お守り」
司の不思議そうな声に簡素に答えながら、何とかあの錠剤たちを見つける事ができた。良かった、鞄の中に入れておいて……もっと早く気づけばさらに良かったんだけど。
そう心の中だけで感謝して、鞄に入っていたペットボトルの蓋を取る。
「オレがいるのに、抑制剤要るの?」
きょとんと聞いてくる司を無視して、まず、新しくもらった抑制剤をお茶で流し込み、ついで、ちょっとためらった後、どぎつい赤い錠剤を口に含んだ。オメガの妊娠率は決して高い方じゃないらしいけど、飲んだ方が確実だし。
「新作ゲーム二本分かぁ」
思い切って、お茶で一気に飲み込む。
こいつに言っても仕方ないんだけど、つい、心の声が漏れた。
「ねえねえ、何の話? オレにも教えてよ~」
司が、あぐらをかいて座っているオレの胴に、腕をまわしてくる。
「お前、ナカに出しただろ。オレ発情期なんだぞ。にっ、妊娠したら、どうすんだよ」
身体を摺り寄せてくる司に、わざと拗ねたように言う。と、司はさらにオレの背中にすり寄り、腕と身体を密着させてきた。タコみたい。
「あっ、そうか。そっか……オレたちの、赤ちゃん」
一瞬、落ち着いたと思っていた鼓動が、また早くなりそうだった。のを、頑張って抑える。背中の温もりが更に熱くなった気がした。
「ばーか。早すぎるわばーか。オレ、やりたい事あるの知ってるよな」
身体に絡みつく腕を引きはがそうとするが、凄い馬鹿力なのか、全然びくともしない。
「知ってる。もちろん知ってるけどさぁ……いや、今なんか想像したら、涙出そうなくらい嬉しかったから」
胸がキューンってした。キューンって。
はぁ、もう、薬効くまで大人しく黙っててほしい。
「ばーか。それは大人になって、結婚してからの話だろ。あっ、まさかお前、オレとは結婚しないつもりじゃ……」
「はあ?! そんなの結婚するに決まってんじゃん! 馬鹿じゃないの」
オレの言葉にすかさず反論してくる司。馬鹿はどっちだ。
でも、そうか。結婚か。そうか、アルファとオメガだもんな。出来る、もんな。
「どしたの大和。急にニヤニヤして」
とか言いながら、オレの頬にちゅっちゅと唇を触れさせてくるお前は何なんだ。
「ニヤニヤしてない。とりあえず、今日は帰るぞ。もう遅いし……色々、考えたい」
一旦ぎゅーっと抱きしめられたが、腕は素直にオレから離れていった。
「うん。色々考えて、大和。そして、オレを選んでね」
司を見ると、教室の中は薄暗くてもう細かい表情はわからなかったけど、微笑んでいる事だけはわかった。儚い、なんて司に思った事なかったけど、今は、なんだかそう感じてしまう。
「当たり前だばーか。お前こそ、やっぱり女の子が良い、なんて言いだすなよ」
照れ隠しに、ちょっと口調が強くなってしまた気がする。けど、司が笑った気配がした。
「勃たないのに?」
その言葉に思わず吹き出して、笑ってしまった。
何だか笑ったら、落ち着いてきた。
鞄からハンカチとティッシュを取り出し、司にティッシュを渡した。さんきゅーと言って受け取る司。
「童貞卒業できた気分は、どうよ」
オレは、自分が出したモノや股の間のものをなるべくそのハンカチで拭っていく。服は最初に脱ぎ捨てたから無事だけど、司の上着、大丈夫かこれ。
「もう、さいっこーの気分」
ティッシュで自身をぬぐいながら言う司に、もう一回バーカと言って、制服の袖に腕を通す。うう、下半身がちょっと気持ち悪いけど、仕方ない。
「はっ、そうだ。大和は、処女卒業おめでとう」
その言葉には、明確な意思を持って、拳で返した。
そうだよ、馬鹿かオレ! 抑制剤もお守りも、鞄の中に入ってるんだった!
「なに?」
気怠そうな声をあげる司を、ヨイショと自分の上から引きはがし、上体を起こす。そのはずみで、いまだナカにいたモノが抜けた。股間がヌルヌルしすぎてヤバい。
「あれ?」
立ち上がって鞄を取ろうと思ったのに、がくんと、膝が地面についた。
「え、なんで」
はじめての感覚に、理解が追いつかない。
「あれ、大和腰抜けたの? そんなに良かった?」
肘をついて、エロい顔で笑う幼馴染の太ももを軽く叩(はた)く。
「いたっ。そんな恨めしそうな顔しないでよ~。何、鞄取りたいの?」
オレの視線に気づいたのか、司が苦笑して、立ち上がらないまでも四つん這いになって、のしっとわざわざオレを押しつぶしながら鞄をとる。
「つーかーさー」
「はい、どうぞ」
オレの怒った声はスルーして、司は取ってくれた鞄をオレに寄越した。
はあ、と一つ溜息を吐いて、鞄の中身をあさる。
司はその様子を、あぐらをかいて興味深そうに見ていた。おい、その股間のマグナムしまえ。
「何してるの?」
「抑制剤とあふ……お守り」
司の不思議そうな声に簡素に答えながら、何とかあの錠剤たちを見つける事ができた。良かった、鞄の中に入れておいて……もっと早く気づけばさらに良かったんだけど。
そう心の中だけで感謝して、鞄に入っていたペットボトルの蓋を取る。
「オレがいるのに、抑制剤要るの?」
きょとんと聞いてくる司を無視して、まず、新しくもらった抑制剤をお茶で流し込み、ついで、ちょっとためらった後、どぎつい赤い錠剤を口に含んだ。オメガの妊娠率は決して高い方じゃないらしいけど、飲んだ方が確実だし。
「新作ゲーム二本分かぁ」
思い切って、お茶で一気に飲み込む。
こいつに言っても仕方ないんだけど、つい、心の声が漏れた。
「ねえねえ、何の話? オレにも教えてよ~」
司が、あぐらをかいて座っているオレの胴に、腕をまわしてくる。
「お前、ナカに出しただろ。オレ発情期なんだぞ。にっ、妊娠したら、どうすんだよ」
身体を摺り寄せてくる司に、わざと拗ねたように言う。と、司はさらにオレの背中にすり寄り、腕と身体を密着させてきた。タコみたい。
「あっ、そうか。そっか……オレたちの、赤ちゃん」
一瞬、落ち着いたと思っていた鼓動が、また早くなりそうだった。のを、頑張って抑える。背中の温もりが更に熱くなった気がした。
「ばーか。早すぎるわばーか。オレ、やりたい事あるの知ってるよな」
身体に絡みつく腕を引きはがそうとするが、凄い馬鹿力なのか、全然びくともしない。
「知ってる。もちろん知ってるけどさぁ……いや、今なんか想像したら、涙出そうなくらい嬉しかったから」
胸がキューンってした。キューンって。
はぁ、もう、薬効くまで大人しく黙っててほしい。
「ばーか。それは大人になって、結婚してからの話だろ。あっ、まさかお前、オレとは結婚しないつもりじゃ……」
「はあ?! そんなの結婚するに決まってんじゃん! 馬鹿じゃないの」
オレの言葉にすかさず反論してくる司。馬鹿はどっちだ。
でも、そうか。結婚か。そうか、アルファとオメガだもんな。出来る、もんな。
「どしたの大和。急にニヤニヤして」
とか言いながら、オレの頬にちゅっちゅと唇を触れさせてくるお前は何なんだ。
「ニヤニヤしてない。とりあえず、今日は帰るぞ。もう遅いし……色々、考えたい」
一旦ぎゅーっと抱きしめられたが、腕は素直にオレから離れていった。
「うん。色々考えて、大和。そして、オレを選んでね」
司を見ると、教室の中は薄暗くてもう細かい表情はわからなかったけど、微笑んでいる事だけはわかった。儚い、なんて司に思った事なかったけど、今は、なんだかそう感じてしまう。
「当たり前だばーか。お前こそ、やっぱり女の子が良い、なんて言いだすなよ」
照れ隠しに、ちょっと口調が強くなってしまた気がする。けど、司が笑った気配がした。
「勃たないのに?」
その言葉に思わず吹き出して、笑ってしまった。
何だか笑ったら、落ち着いてきた。
鞄からハンカチとティッシュを取り出し、司にティッシュを渡した。さんきゅーと言って受け取る司。
「童貞卒業できた気分は、どうよ」
オレは、自分が出したモノや股の間のものをなるべくそのハンカチで拭っていく。服は最初に脱ぎ捨てたから無事だけど、司の上着、大丈夫かこれ。
「もう、さいっこーの気分」
ティッシュで自身をぬぐいながら言う司に、もう一回バーカと言って、制服の袖に腕を通す。うう、下半身がちょっと気持ち悪いけど、仕方ない。
「はっ、そうだ。大和は、処女卒業おめでとう」
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