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放課後のオレ
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放課後。
ホームルームが終わった。担任は何も言わなかったけど、職員室に行かなければならないのだろう。周りは、部活に行く人達などで騒がしい。
面倒くさいなあ、と思わず溜息がもれた。
「あれ、どうしたの、大和。ためいきついて」
思わず、バッと顔を上げてしまった。そこにいたのは、
「つかさ。お前、助っ人は?」
違うクラスの、司だった。ちゃんと鞄を持っている事から、一緒に帰ろうと来てくれたのかもしれない。周りが騒がしくて、来た事に気づかなかった。危ない。
咄嗟に出たオレの言葉に、司は眉を下げた。
「それがさー、男バスが、インハイ近いからまた今日も練習試合出てくれってしつこくてさー。そしたら、サッカー部がこっちは人手足りてないとか言いだして。足りないなら足りないでなんとかしろって、女テニが間に入ってさらにややこしくなって、大変だったんだよ~」
「そ、そうか、大変だったな」
住む世界が違い過ぎる。
どこに、全く種別が違うスポーツに、助っ人とはいえ頻繁に手伝いに来てくれって言われる男子高生がいるというのか。ここにいた。
まあ、男子諸君の幾らかは、司を見にきた女子に良いとこ見せてあわよくば、っていう層がいないでもないらしい。この学校の男子メンタルが強いぞ。
「そ~なんだよ~。だから今日は、どこにも行かないって言って逃げてきた。一緒に帰ろうぜ、大和」
へへっと笑ってオレを覗き込む司を、思わず凝視してしまった。あの愛想と人付き合いの良い司が断るなんて。クラスメイト達もそうだったんだろう。
急に胸が重くなる。
「ごめんな、司」
思わず、絞り出すような声がでてしまった。オレのそんな声に、驚いたような心配そうな司。
「なに、どうしたの?具合悪い?」
「いや……。放課後、先生の手伝い頼まれてさ。帰宅部だから断れなくて」
思ったより深刻そうな声で言ってしまったのだろう。司は、明らかにホッとした顔をした。
「なんだ、そんな事か。オレも手伝うよ」
ホッとした後、安心したように笑う司。うう、お前本当に良い奴だな。良い奴すぎて、申し訳なくなる。
「書類運ぶだけらしいから、大丈夫。お前他のクラスだろ、悪いよ。せっかく久しぶりに人に囲まれずにゆっくりできるんだ。さっさと帰っておばさん孝行でもしたら」
苦笑しながらそう言うと、司の目がまた暗くなる。なんで、だろう。光の加減かな。
「やまと」
「大丈夫、きっとすぐ終わるよ。それに、明日は映画行くんだろ。オレ、楽しみにしてるんだぜ」
なだめるようにそう言うと、司は困ったレトリーバーの顔になった。ちょっと唇を尖らせる。なんだ、そんなに先生の手伝いしたいのか? 先生たちの好感度ならもう充分良い筈だけど。
「ほら、早く帰らないと、また女子につかまるぞ」
動こうとしない司を、冗談めかしながらもせっつくと、ようやく帰る気になったようだ。
「本当にひとりで大丈夫? なんかあったら、遠慮なく呼んでな」
「大丈夫だよ、大げさだな。じゃ、そろそろ行かないと怒られそうだから、オレ行ってくるよ」
「ああ。気を付けて。ほんと、呼べよ」
司もしかして、オレが小さいから力が無いって心配してるのでは。それはそれでプライドに関わるな。
大丈夫だってもう一回言って、司の背中をパンっと叩いてオレは教室を出た。
あいつ、自分がでかくなった頃からオレを心配しすぎじゃないか。小学校低学年ぐらいまでは、オレが泣き虫つっくんを守ってやってたものだが。あいつも大きくなったものだ。あれ? もしかしたらオレが小さい頃女の子と間違われそうなぐらいの司を、ちょっと過保護に守りすぎたから、今その恩を感じてるとか? ありそう。いいのに。
そんな事を思いながら職員室に行くと、ジャージに着替えた担任が書類を机の上に準備していた。一抱え程の書類の束。もっと多いのだと思っていたから、拍子抜けしてしまった。
「じゃあ、これ頼むな。生徒会室、わかるか?」
「はい」
「良かった。じゃ、オレは部活に行くから。会長とかに何か聞かれたら、委員長帰って来てから聞いてくれって言っといて」
「はい」
担任はそう言うと、さっさと出て行ってしまった。
残されたオレは、よいしょっと残さないように書類を抱え、職員室を出た。
ホームルームが終わった。担任は何も言わなかったけど、職員室に行かなければならないのだろう。周りは、部活に行く人達などで騒がしい。
面倒くさいなあ、と思わず溜息がもれた。
「あれ、どうしたの、大和。ためいきついて」
思わず、バッと顔を上げてしまった。そこにいたのは、
「つかさ。お前、助っ人は?」
違うクラスの、司だった。ちゃんと鞄を持っている事から、一緒に帰ろうと来てくれたのかもしれない。周りが騒がしくて、来た事に気づかなかった。危ない。
咄嗟に出たオレの言葉に、司は眉を下げた。
「それがさー、男バスが、インハイ近いからまた今日も練習試合出てくれってしつこくてさー。そしたら、サッカー部がこっちは人手足りてないとか言いだして。足りないなら足りないでなんとかしろって、女テニが間に入ってさらにややこしくなって、大変だったんだよ~」
「そ、そうか、大変だったな」
住む世界が違い過ぎる。
どこに、全く種別が違うスポーツに、助っ人とはいえ頻繁に手伝いに来てくれって言われる男子高生がいるというのか。ここにいた。
まあ、男子諸君の幾らかは、司を見にきた女子に良いとこ見せてあわよくば、っていう層がいないでもないらしい。この学校の男子メンタルが強いぞ。
「そ~なんだよ~。だから今日は、どこにも行かないって言って逃げてきた。一緒に帰ろうぜ、大和」
へへっと笑ってオレを覗き込む司を、思わず凝視してしまった。あの愛想と人付き合いの良い司が断るなんて。クラスメイト達もそうだったんだろう。
急に胸が重くなる。
「ごめんな、司」
思わず、絞り出すような声がでてしまった。オレのそんな声に、驚いたような心配そうな司。
「なに、どうしたの?具合悪い?」
「いや……。放課後、先生の手伝い頼まれてさ。帰宅部だから断れなくて」
思ったより深刻そうな声で言ってしまったのだろう。司は、明らかにホッとした顔をした。
「なんだ、そんな事か。オレも手伝うよ」
ホッとした後、安心したように笑う司。うう、お前本当に良い奴だな。良い奴すぎて、申し訳なくなる。
「書類運ぶだけらしいから、大丈夫。お前他のクラスだろ、悪いよ。せっかく久しぶりに人に囲まれずにゆっくりできるんだ。さっさと帰っておばさん孝行でもしたら」
苦笑しながらそう言うと、司の目がまた暗くなる。なんで、だろう。光の加減かな。
「やまと」
「大丈夫、きっとすぐ終わるよ。それに、明日は映画行くんだろ。オレ、楽しみにしてるんだぜ」
なだめるようにそう言うと、司は困ったレトリーバーの顔になった。ちょっと唇を尖らせる。なんだ、そんなに先生の手伝いしたいのか? 先生たちの好感度ならもう充分良い筈だけど。
「ほら、早く帰らないと、また女子につかまるぞ」
動こうとしない司を、冗談めかしながらもせっつくと、ようやく帰る気になったようだ。
「本当にひとりで大丈夫? なんかあったら、遠慮なく呼んでな」
「大丈夫だよ、大げさだな。じゃ、そろそろ行かないと怒られそうだから、オレ行ってくるよ」
「ああ。気を付けて。ほんと、呼べよ」
司もしかして、オレが小さいから力が無いって心配してるのでは。それはそれでプライドに関わるな。
大丈夫だってもう一回言って、司の背中をパンっと叩いてオレは教室を出た。
あいつ、自分がでかくなった頃からオレを心配しすぎじゃないか。小学校低学年ぐらいまでは、オレが泣き虫つっくんを守ってやってたものだが。あいつも大きくなったものだ。あれ? もしかしたらオレが小さい頃女の子と間違われそうなぐらいの司を、ちょっと過保護に守りすぎたから、今その恩を感じてるとか? ありそう。いいのに。
そんな事を思いながら職員室に行くと、ジャージに着替えた担任が書類を机の上に準備していた。一抱え程の書類の束。もっと多いのだと思っていたから、拍子抜けしてしまった。
「じゃあ、これ頼むな。生徒会室、わかるか?」
「はい」
「良かった。じゃ、オレは部活に行くから。会長とかに何か聞かれたら、委員長帰って来てから聞いてくれって言っといて」
「はい」
担任はそう言うと、さっさと出て行ってしまった。
残されたオレは、よいしょっと残さないように書類を抱え、職員室を出た。
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