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第四章:恋人義姉と大切な夜を過ごす
ある日の義姉の過ごし方 その②
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その日の夕刻、伊瀬の実家にて。
「悪いわね、百花ちゃん。今日お仕事だったのに、こっちのことまで手伝わせちゃって」
「構いませんよ、お義母さま……三回忌は、私にとっても大切なことですから」
向かい合って作業する義母に百花は穏やかに返事した。義母もふっと頬を緩めてくれる。
「そう……でも、ありがとう。百花ちゃんがいてくれると助かるのは、本当だからね」
義母の瞳は潤み、目尻にはシワが浮かんでいた。かれこれ十年近い付き合いだが、ここまで疲れた表情は滅多に見たことがない。それこそ和樹が亡くなった直後ぐらいだろうか。
もっともその頃、百花はさらに酷い状態だったので、人を気遣う余裕はなかったのだが。
「……不思議ですよね、もう二年も経っているなんて。全然実感が湧きません」
「そうね。私だって、まだちょっと信じられないわ。でも、そういう私たちのために、三回忌ってあるんじゃないかしら」
義母の言葉に、百花は僅かに首を傾げる。
「時間の流れの感じ方って、その時々で違うじゃない?遅い時も早い時もある。でも、流れる時間の速度はずっと変わらないのよ……そして、それはきっと凄く大切なことなの」
そう言ったあと「浸ってるのかしら、私」と自嘲した義母は、まだ少し元気がない。
曖昧な言葉だと思った。
ふわふわ、ぽわぽわしていて。
決してお腹を満たせない砂糖菓子みたいだ。
でも、だから、わかるのかもしれない。
大切なのはきっと、時間の流れを実感できるほど長く長く生き続けることなのだろう。
「お義父さまもお義母さまも、私も……そして博嗣くんも、頑張っていると思います。ちゃんと、今を、頑張っています」
甘くない時間を過ごしたから、やり過ごせたから、今は言える言葉を見つけられた。
「博嗣……うん、そうよね。あの子も、頑張ってる。本当に一生懸命、偉いくらいに」
息子を想った母は今度こそ確かな笑顔を見せてくれる。それが嬉しくて、誇らしい。
「……ところで博嗣のことだけど。迷惑かけてない?ちゃんと家事とか手伝ってる?百花ちゃんに甘えてばかりじゃない?大丈夫?」
母の顔を取り戻した義母がいつもの調子で話を進めてきた。これくらい朗らかな方が、百花としても落ち着いて話ができる。
「はい。大丈夫ですよ。ご飯を美味しいって言って食べてくれるの、凄く嬉しいです」
(それに、どちらかと言うと、最近は私の方が甘えてしまっていますし……)
特に夜の営みでは、未亡人はすっかり淫らな調教をおねだりする牝犬と化していた。被虐願望を打ち明け、受け入れてもらって以来、マゾヒズムに一層の磨きがかかった気がする。
「それなら別にいいけど……たとえあの子との同棲をやめても、私たちは百花ちゃんの味方だし、家族よ。何があっても助けるわ」
義母の優しい言葉が身体に沁みる。
「私にとっても、お義母さまはずっとお義母さまです。大好きで、大切な、もう一人の母親です。それはずっと変わりません」
じわり、じんわりと、熱が広がっていく。
胸に眠っていた秘密が膨らんで、弾けた。
「……だからこそ、私からもお義母さまにお話ししなければならないことがあります。聞いて……いただけますか?」
背筋を伸ばし、居住まいを正し、
確かな意思を感じさせる瞳と声で、百花は義母へ告げるのだった。
「悪いわね、百花ちゃん。今日お仕事だったのに、こっちのことまで手伝わせちゃって」
「構いませんよ、お義母さま……三回忌は、私にとっても大切なことですから」
向かい合って作業する義母に百花は穏やかに返事した。義母もふっと頬を緩めてくれる。
「そう……でも、ありがとう。百花ちゃんがいてくれると助かるのは、本当だからね」
義母の瞳は潤み、目尻にはシワが浮かんでいた。かれこれ十年近い付き合いだが、ここまで疲れた表情は滅多に見たことがない。それこそ和樹が亡くなった直後ぐらいだろうか。
もっともその頃、百花はさらに酷い状態だったので、人を気遣う余裕はなかったのだが。
「……不思議ですよね、もう二年も経っているなんて。全然実感が湧きません」
「そうね。私だって、まだちょっと信じられないわ。でも、そういう私たちのために、三回忌ってあるんじゃないかしら」
義母の言葉に、百花は僅かに首を傾げる。
「時間の流れの感じ方って、その時々で違うじゃない?遅い時も早い時もある。でも、流れる時間の速度はずっと変わらないのよ……そして、それはきっと凄く大切なことなの」
そう言ったあと「浸ってるのかしら、私」と自嘲した義母は、まだ少し元気がない。
曖昧な言葉だと思った。
ふわふわ、ぽわぽわしていて。
決してお腹を満たせない砂糖菓子みたいだ。
でも、だから、わかるのかもしれない。
大切なのはきっと、時間の流れを実感できるほど長く長く生き続けることなのだろう。
「お義父さまもお義母さまも、私も……そして博嗣くんも、頑張っていると思います。ちゃんと、今を、頑張っています」
甘くない時間を過ごしたから、やり過ごせたから、今は言える言葉を見つけられた。
「博嗣……うん、そうよね。あの子も、頑張ってる。本当に一生懸命、偉いくらいに」
息子を想った母は今度こそ確かな笑顔を見せてくれる。それが嬉しくて、誇らしい。
「……ところで博嗣のことだけど。迷惑かけてない?ちゃんと家事とか手伝ってる?百花ちゃんに甘えてばかりじゃない?大丈夫?」
母の顔を取り戻した義母がいつもの調子で話を進めてきた。これくらい朗らかな方が、百花としても落ち着いて話ができる。
「はい。大丈夫ですよ。ご飯を美味しいって言って食べてくれるの、凄く嬉しいです」
(それに、どちらかと言うと、最近は私の方が甘えてしまっていますし……)
特に夜の営みでは、未亡人はすっかり淫らな調教をおねだりする牝犬と化していた。被虐願望を打ち明け、受け入れてもらって以来、マゾヒズムに一層の磨きがかかった気がする。
「それなら別にいいけど……たとえあの子との同棲をやめても、私たちは百花ちゃんの味方だし、家族よ。何があっても助けるわ」
義母の優しい言葉が身体に沁みる。
「私にとっても、お義母さまはずっとお義母さまです。大好きで、大切な、もう一人の母親です。それはずっと変わりません」
じわり、じんわりと、熱が広がっていく。
胸に眠っていた秘密が膨らんで、弾けた。
「……だからこそ、私からもお義母さまにお話ししなければならないことがあります。聞いて……いただけますか?」
背筋を伸ばし、居住まいを正し、
確かな意思を感じさせる瞳と声で、百花は義母へ告げるのだった。
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