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11 求婚宣言?! ~お前もか!~

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「貴様を婚約者にしてやる!」

 悪性の何かが、とうとう脳にまで到達したか……。いつものように先触れも無しに、突然妹に会いに来た王太子殿下がそう宣いました。

 ……なぜか、私相手に。

 使用人が王太子殿下を門前払いにすることなどできるはずもなく、応接間で変態の相手をせざるを得ない状況となってしまったのですが……。

「そのお話ですが、両陛下より妹の所業について――」
「誰がジェニファーの話をしていると言った」
「は?」
「俺はおま――」

 殿下が、いきなり人のパーソナルスペースに無断侵入して来ようとしたので、を準備していたのですが――――あら? 目の前からいきなりいなくなって、入れ替わるようにフィリップが現れたわ!

「こんにちわ、マリスカル嬢。おや、いらしたのですか? 殿下」
「何をする貴様っ!」

 遠くから殿下の声が聞こえるわ。正確には、フィリップの背後から……。あのねフィリップ、貴方がそこに立っていると一体何が起こっているのか全然分からないのだけれど?

 いきなり応接室に現れたフィリップが、変態分子を取り除いたのだろうけど……何事? 殿下は今、どういう状況にあるのかしら? 酷く面倒な予感がするから、できることならば知りたくはない――から、まあいいわね、うん。

「殿下は妹君にお話があるご様子ですので、お邪魔をしては悪いでしょう」
「え? でも――」
「これはもう二人一緒に国外追放処置とした方が早い案件では?」
「うーん……」
 それは結構いろいろな方面から言われているのよ、お爺様マリスカル伯からも。
 ……って、フィリップ、妹はアンタと結婚したいと宣言しているのだけれど?


「何の話をしているのだ貴様等!」
「お姉様! 王子様が来てるって本と――――まあ、フィリップ様まで! 会いに来てくれたのね!」

 阿呆が二人揃ってサラウンドで喚き始めたものだから、とても五月蠅い。なので、別々に縛り上げて納屋に転がしておくことにしよう。妹はいつもの事だし、変態の方は睡眠薬で寝ている間に王宮へ送り返そうと思っていたのに、使者の到着が遅れたせいなのだから、もう知らない! 変態の管理不行き届きよ! 王家相手だろうと、我慢には限度というものがあるのよ!



 大荷物の片付けを然るべき人々にお願いし、やっと落ち着いた頃、フィリップに誘われて中庭に新設した花壇の案内をすることになったのだけれど――。

「珍しい花ですね? これはどこから仕入れたのですか?」
 新しく外国から仕入れたばかりの花を的確に指摘してきた。フィリップも草木にそれなりの造詣があったとは、意外だわ。私も庭師に教えられるまで、これがこの国の花でないことなど知らなかったというのに。

「隣国からです」
「どなたが手配を? ご家族は花には興味がありませんでしたよね?」
 確かに父も母も妹も、花より貴金属ですからね。妹には可哀想な寓話を読み聞かせたこともありましたが、効果はなかったし……。
「これを手配したのは――」
 殿下なのですが、なんとなくそれは言わない方がいいような……気が……。

「どなたが?」
 フィリップが――――引きません。というか、いい加減に手を離して頂きたいのですが。離そうとすると、逆に強く手を引かれる。犯罪者の気分だわ。
「……で、殿下……ですが……」
「――へえ? 随分と仲が宜しくなられたようでよかったですね?」
「………………」

 なぜ、浮気を責められているきみのような気分になっているのかしら、私?

「別に仲良くはないわよ?」
「変に言い繕うなんて貴女らしくないのではありませんか?」
「そういう貴方こそ、妹におかしな事を言っているのではありませんか?」
「はい?」
「妹は貴方と結婚できると思い込んでいるようですが?」
「……ん?」
 フィリップが心の底から不思議そうな顔をしています。

「適当なことを言って話をごまかそうとしていませんか?」
 私が言おうとしていることを先に言われた! ――遺憾の意を表します!

「いえ、あの誓って何を言っているのか意味が分かりません。本当に妹君がそんなことを?」
「ええ……」

 フィリップが何やら本気で考え込み始めたわ。
 こうなると……妹の将来が心配になってくる。これ以上どうしろと?! ただでさえトラブルメーカーで、もらい手がないというのに!






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