クズは聖女に用などない!

***あかしえ

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第二部

36.ひとまずの終局

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 ジャン様とリシュタンジェル公が屋敷へ戻られたのは、夕刻のことでした。

 精霊たちが騒ぐので、ジャン様が帰宅されるとすぐに分かります。
 一時期はとても静かだった精霊たちですが……最近また、騒がしくなってきました。なぜでしょう……??


 車寄せまでジャン様を迎えに行ってしまい、周囲の皆様に少々揶揄われてしまいました。普通は迎えに出たりはしないものなのでしょうか?
 メルセンス邸の時はいつも迎えに出ていたのですが……使用人の数が違うからなのでしょうか?

 ……結構好きなんですよね。
 彼が馬車から降りてくる最中に「ただいま戻りました」と、笑ってくれるのが。




 ――閑話休題。

 議会は、一時、かなり紛糾したものとなったそうです。
 聖女様に逃げられた上に、過去の聖女様の骸を利用した呪具『諱箱』の件もあり、王家に対する不満は爆発寸前だったのでしょう。

 この時を機に、政の主導権を握ろうと目論む貴族もいたようです。
 ですが、彼らが謀略を巡らせる前に――リシュタンジェル公は宰相に任命されました。

 前・宰相は御子息が起こした騒動の責を問われ罷免されていました。
 それから今まで、宰相不在で政務を行っていたようですが……一年も経たない間だったため、何とかなっていたのでしょうか?

 施設長の処遇についてですが、元・司教ということもあり教会が彼の身柄を引き受けることで決着となりました。
 彼は穢れに浸食されて自己を失ったわけではないので、教会主導の奉仕活動を二年間行うという懲役を科されることになりました。




 これで、ひとまずの決着がつくこととなりました。
 アンデル殿下がもうしばらく国内に滞在するようですが、今回の問題の詳細を自国へ持ち帰らせないための交渉が、密かに行われているようです。
 その交渉材料として私が用いられているらしいのですが……精霊たちやリシュタンジェル公、そしてジャン様がが善処してくれているようなので、ノータッチで行く予定です。


 今朝、学園へ行く道すがら広葉樹が黄色くなっているのに気付きました。
 最近肌寒くなってきましたからね。社交シーズンに合わせて王都へやってきた皆様が、領地へ帰る時期がやって来ました。
 リシュタンジェル公は来週には領地へ帰るそうです。私はそのタイミングでメルセンス邸へ帰ることになっています。

「モニカさん、ジャン様がいらっしゃいましたよ」
 サンルームでベートラ様とティータイムを過ごしていた私の元へジャン様の訪れを教えて下さったのは、リシュタンジェル公夫人……つまり、私の義母です。

「はい、すぐに参ります!」
 ジャン様の到着を聞けば心が浮ついてしまうのは、もう仕方のないこと。それを周囲に知られてしまうのは、なんとなく恥ずかしいので気付かれないようにしているつもりなのですが……気付かれているようです。

 からかいとも違う、どこか生暖かい視線を感じながら、エントランスにいるジャン様の下へと、私は向かいました――――。








                              第二部・了





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