クズは聖女に用などない!

***あかしえ

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第二部

11.視察3

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 ジャン様へ、ウェルスに相談されてみることを提案したのですが、あまり気乗りされないようです。精霊に関する事象を、教会、王家、ウェルス様に相談することを躊躇っているように思えます。

 私の記憶がない間にあった一悶着が、尾を引いているようです。



 ◇◆◇ ◇◆◇



 翌日、私も視察へ同行させてもらえることになりました!

 マクマが馬車を引きたがったのですが、彼にやらせると馬車が空を飛ぶ事態になりかねないので却下です。
 それに、昨日ミントが言っていた『小精霊』という存在も気になります。その内、中精霊なども現れそうですね。分類方法が人間とは違うのでしょうか?

 朝食から一時間ほど後に、屋敷を出て視察へ向かうことになりました。
 領内の様子を馬車の窓から一通り見ましたが、全体的に治安があまりよろしくないようです。
 一般市民が平穏無事に過ごすことができないようでは、経済が行き詰まってしまうでしょう。ジャン様も昨日は、夜遅くまで現統治者である後見人に、警備について討論をしている様子でした。

 ・
 ・
 ・

 昨日の騒ぎの後だからか、訪れた先でジャン様は熱烈な歓迎を受けていました。
 それは、隣にいる私に対しても同じではあるのですが。女性ということで、民衆から隠しきれない期待のような……ものを感じました。

 民衆がこちらを好意的に受け入れてくれるのは、確かに助かる状況ではあります。これからは、この地に住む人々と手を取り合って生きていくことになるのですから。
 ただ……今までの生活が生活だったせいでしょうか。
 このまま素直に、この期待を受け入れても大丈夫なのか、と考えてしまうのです。

 ジャン様は精霊たちの力を頼る気はないようですが、肝心の私は……どうなのでしょう……。

 精霊たちを……手元に、置いておきたいと思っているのか、それとも――――。


「疲れましたか? 大丈夫ですか、モニカ嬢?」

 隣に座るジャン様に心配をかけてしまいました。
 今は、あらかたの視察を終え、最終地点であるとある農場へと向かっています。
 舗装された道ではないのですが、なだらかに整えられているため馬車内は快適です。適度な揺れと柔らかなそよ風が、とても心地よいのです。

「いえ、大丈夫です。すみません考え事をしていたので」
「何か心配事ですか?」
「……ええ……その、精霊をこのままにしていて大丈夫かな、と。今なら『どこへでも行ってしまえ!』と言えば従いそうではあるのですが……」
 ちょっと愛着が湧いているのもあるのです。
 それに、野に放つ場合は元の姿に戻してあげてからでないと、周囲に悪影響をもたらしそうです。――いえ、元々結構好き勝手な性格をしていましたね。
 ……うーん……。
「モニカ嬢の満足するようにすればよいと思いますが……モニカ嬢は、彼らのことが嫌いなのですか?」
「そのようなことはありませんが……」
「なら、無理に悩むことはないと思いますよ?」

 ジャン様はいつも、私の欲しい言葉を下さいます。
 私も、彼が望む言葉を返すことができるようになりたいのですが……心理学を学べばよいでしょうか?


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