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第二部
2.迷惑な賓客
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「面白そうな連中を連れてるじゃねーか。それ、俺様に寄越せ」
これは少々予想外の出来事です。王族にとって、精霊というものは私が思っていたよりも、遥かに近しい存在なのでしょうか? というかそれ以前に……言われた本人に殺されそうになっていますけど、大丈夫ですか?
◇◆◇ ◇◆◇
隣国ソデイルからの留学生は、アンデル・コルデ・ヴィッソ・ディッチ王太子殿下と仰るようです。
私にとって王族というものは、厄介者の代名詞のようになってしまいました。
畏敬の念は遠い彼方へ去ってしまい、戻ってきません。帰りを待つ気はありません。
彼は目鼻立ちが大層整っているらしく、たちまち皆が虜になったそうです。最近増えてきた友人たちが、熱に浮かされたようにそう語っていました。
ミントの前情報がなければ、私も少しは好意的に噂話に乗ることができたでしょうか。同じ価値観を共有できず、少々寂しいです。
大変迷惑なことに、私が彼に絡まれたのは、食堂の三階にあるティールームでジャン様を待っていた時のことでした。
確かに、私も迂闊と言えば迂闊なことをしてしまいました。防音効果のある壁に囲まれたボックス席に座っていたため、油断してしまったのです。
ミントに紅茶とお菓子を出してもらい、それを嗜んでいたところを襲撃されました。
「おいお前! それ『いにしえの精霊』だろう! ……お前が『真のせ――」
俺様野郎がトップ・シークレットを大声で叫ぶ前に、ミントと共に姿が消えました。……あの世に連れて行ったりしていないでしょうね? 外交問題はさすがに面倒なので控えて下さいね?
確かに、彼は素晴らしい面立ちをされているようでした。私の趣味ではありませんが。印象的なのは、燃えるような赤い髪と瞳です。制服の上からでも、鍛え上げられた肉体であることが把握できてしまうのはさすがですね。
「あら? こちらにアンデル殿下がいらっしゃるとお伺いしたのですが――」
そう言ってボックスに顔を出したのは、ジャン様ではなくベアトリス・アンディオン侯爵令嬢でした。残念な婚約者をお持ちの残念な侯爵家のお嬢様です。
……そう言えば、元気にされていたのでしょうか?
「あのお方にご用でも?」
……ハイエナのような眼差しで件の王太子殿下をお探しのベアトリス様に嫌な予感しかしません。
彼女に対する私の印象は……『面倒事を起こす人』です。
彼女にとっては正統な主張だったのかもしれませんが、アントワーヌ嬢と元・聖女様との仁義なき戦いに身を投じていたことに、変わりはありませんから。
……嫌な予感がひしひしとしてきます…………。
これは少々予想外の出来事です。王族にとって、精霊というものは私が思っていたよりも、遥かに近しい存在なのでしょうか? というかそれ以前に……言われた本人に殺されそうになっていますけど、大丈夫ですか?
◇◆◇ ◇◆◇
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私にとって王族というものは、厄介者の代名詞のようになってしまいました。
畏敬の念は遠い彼方へ去ってしまい、戻ってきません。帰りを待つ気はありません。
彼は目鼻立ちが大層整っているらしく、たちまち皆が虜になったそうです。最近増えてきた友人たちが、熱に浮かされたようにそう語っていました。
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ミントに紅茶とお菓子を出してもらい、それを嗜んでいたところを襲撃されました。
「おいお前! それ『いにしえの精霊』だろう! ……お前が『真のせ――」
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「あら? こちらにアンデル殿下がいらっしゃるとお伺いしたのですが――」
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……ハイエナのような眼差しで件の王太子殿下をお探しのベアトリス様に嫌な予感しかしません。
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